もっと川越を人にも生きものにも住み良い街に〜第16回かわごえ環境フォーラム〜

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取材・記事 白井紀行

 

川越市の望ましい環境像の実現を目標に2000年に設立された「かわごえ環境ネット」

市民・事業者・民間団体・市の4社が協働して環境に関する様々な取組を実施。

その活動の内容を発表する場が「かわごえ環境フォーラム」。

2003年に始まり今回で16回目。今年は、2月25日にウェスタ川越で開催されました。

開会式

かわごえ環境ネットの理事・菊地三生氏が、午前の部の司会進行を務めます。

 

かわごえ環境ネット代表理事の小瀬博之氏が登壇し、本日のプログラムと協賛会社を紹介。

手にしているのは一年間の活動の集大成「かわごえ環境活動報告集」。

表紙に並ぶ写真は、真ん中が時の鐘。周りを環境活動をする人々を配置。

人の活動が環境に関わり、環境が人の活動に影響することを表しています。

 

かわごえ環境フォーラムは午前と午後の2部制。

  • 午前は、市民・事業者・民間団体・行政による環境活動報告会。
  • 午後は、樹木医・森林インストラクターの岩谷美苗氏による基調講演。

「意外と知らない樹の生活~知ると緑が楽しくなる~」

その後、語らいの場として2年ぶりにワールドカフェが行われました。

テーマは「みんなではぐくむ水と緑と歴史のまち・川越」です。

 

協賛企業のパネル展示

会場の壁際には協賛企業のパネル展示が行われていました。

武州ガス:自社での太陽光発電や武州入間川プロジェクト、防災、地域活動など。

 

パイオニア川越工場:リサイクル、近隣校との交流、オオムラサキ育成、環境観察会など

 

ここからは、各団体の発表の様子をダイジェストでお伝えします。

 

2017年ふくはら子どもエコクラブ 活動報告書

ふくはら子どもエコクラブの活動拠点は、福原の雑木林。

ここで、生き物調査、収穫体験、落ち葉掃き、林の中のキャンプを体験しています。

26人の子どもたちが一年間の活動で学んだことを4人で順番に発表しました。

 

大雨の中のキャンプを体験したり、虫の調査では200種類の昆虫を発見。

福原の畑での収穫体験と調理、ソーセージ作り、うどん作り、循環型農業の応援。

緑カーテン、太陽のエコクッキング、森林再生、湧き出る水、貯水場の見学など。

詳しくはこちら → http://www.j-ecoclub.jp/ecoreport/profile.php?id=504

 

高階北こどもエコクラブ活動報告書 2017年

自分たちが住んでいる街がどんなところかを歩いた調べた高階北こどもエコクラブ。

塀を花壇に利用、住宅地の中の樹木公園、空き地が住宅に変わったなどの気づき。

 

水のない不老川を歩いたり、蝉のぬけがら探し、蝶や昆虫の調査。

トウモロコシの収穫、染色体験、落ち葉掃き体験など。

会場は子どもたちが一生懸命、発表する姿に和やかな雰囲気に包まれました。

 

モニタリングから見える川越のチョウ:過昌司氏

6〜8人の市民とともに川越に60〜70種類が生息する蝶を7年間調査した報告。

蝶を選んだのは、親しみ易く、食草が限られ見つけ易いので環境指標に最適なため。

雑木林、住宅、畑、草地、水辺など、市内14箇所での定点観測の結果を発表。

 

安比奈親水公園での現地調査の様子(年2回行なっているそうです)。

 

その結果がこちら、2010、11年は外来種を中心にしたため結果が異なります。

よく見かけるアゲハチョウとシロチョウ。ほとんどの種類が生息しています。

 

小型で種類の多いシジミチョウ、茶色ぽくって目立ちにくいセセリチョウ。

川越では一番の種類の多いのがセセリチョウ。23種類いるそうです。

南の蝶が温暖化で北上、林の減少で見られなくなったりと環境の影響も見られます。

 

我々ができる『温暖化対策』:宮﨑誠氏

全窓を断熱サッシ、ヒートポンプ型エアコン、電灯のLED化など。

2010年から自宅で行なっている省エネ活動についての発表です。

 

太陽光発電と節電で、2009年と比較して93%削減するまで達成しているそう。

 

畑で作物を生産しながら太陽で発電するソーラシェアリング。

一反(約330坪)に44KWの太陽光パネルを設置した場合、設置費用は1,000万以下。

現在、買取が100万なので8年で回収できる計算。

川越でもソーラシェアリングの普及で電力の自給率の向上を目指すことを提案。

秩父市ではゴミ処理、太陽光、水力で電力の地産地消をする仕組みが始まっています。

日本にある休耕田・耕作放棄地が145万haで太陽光発電を行えば7億KW。

これは、日本の年間の消費電力(2KW)の3倍以上の発電量なのだそうです。

 

市民の森ときのこ(冬虫夏草編):大久保彦氏

大久保氏は昆虫などからキノコが発生する「冬虫夏草」を紹介。

昆虫やキノコ、高等植物の果実を宿主にキノコを発生させるものの総称です。

注)漢方薬の「冬虫夏草」の定義とは異なります。

 

様々な昆虫に寄生した「冬虫夏草」を写真で紹介。

 

よく探すと割と見つかるそうで、その不思議な生態は興味深いものでした。

 

大久保氏が写真提供や解説に関わった「川越の自然を訪ねて(きのこ編)」

書店やネットでは買えませんので、入手はかわごえ環境ネットにお問い合わせを。

http://kawagoekankyo.net/news/003071.html

 

ドキュメンタリー映画「武蔵野~江戸の循環農業が息づく」を完成して:原村政樹氏

10代の頃から「(仮称)川越市森林公園」計画地の近くに40年以上住む原村監督。

農業に関するドキュメンタリー映画をライフワークとしています。

映画「無音の叫び声」で主人公が発したメッセージ「ヤマがあるから人は生きていける」。

NHK「新日本風土記」で川越の番組を制作したときに知った「落ち葉堆肥農法」。

「ヤマ」を守りながら320年以上続いて来た農法を記録する。

それが、映画「武蔵野」の制作のきっかけで、昨年10月末に完成しました。

 

カメラを持って撮影するまでは、四季折々の美しさに気がつかなかった。

森にはこんなに多くの生き物がいることを知って感動したそうです。

 

会場では映画「武蔵野」の予告編が上映されました。

 

これから3年かけて上映活動を行うそうです。

直近では、3月17日に撮影地の三芳町の「コピスみよし」で午前・午後・夜の3回上映。

4月1日、2日に高崎映画祭。4月14〜27日は、川越スカラ座での上映が決まってます。

 

市民活動からの提言-クリーン活動のPDCA-:武田侃蔵氏

中心街で率先してクリーン活動を行うなど、住みやすい街川越を作る。

ゴミ拾いの市民活動のリーダーとしてグループを引っ張る武田氏の発表です。

行政はP(PLAN)、D(Do)は行うが、C(Check)とA(Action)に至らない。

条例を作ってポスターを貼っておしまい。そんなことから話は始まります。

 

市の広報や自治会でもゴミ出しルール徹底を呼びかけるも効果なし。

実態を調べれば、10年前と今と比較してもタバコの吸い殻は減っていない。

 

武田さんの持論は「ゴミはゴミを呼ぶ」だから「ゴミを隠してしまおう」。

それが、シールを貼ったり注意書きをするより効果があると訴えます。

 

ゴミ問題の解決には市民がチェックし、議員を通して行政に働きかけること。

武田さんのグループを応援し、一緒に汗をかいてくれる人を募集してますと締めました。

 

人がつながり生きもの育む里山・街づくり~田んぼからつながる・拡がる地域の輪~:NPO法人かわごえ里山イニシアチブ

記者も年間を通じて、その活動を追っているかわごえ里山イニシアチブの発表です。

 

かわごえ里山イニシアチブは、ラムサール・ネットワーク日本が提唱する「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」の行動計画をベースに、無農薬・無化学肥料の有機稲作農法を実践する「生きもの育む田んぼプロジェクト」というテーマで活動を行っています。

 

農法は民間稲作研究所の稲作技術に基づいていますが、その農法の鍵は水管理。

田植え後、一定期間、一定水位を保つことで雑草の発生を抑えることができます。

しかし、入間川から取水していたため毎年、渇水に悩まされてきました。

 

昨年、クラウドファンディングで資金を調達し、ようやく悲願の井戸掘りが実現。

上総掘りという昔ながらの井戸掘りの様子が動画で会場に流されました。

井戸掘りプロジェクトについては、こちらでも紹介しています。

最後に平成30年度の目標として、「初雁の里『蔵工房』(仮称)」の構想が発表されました。

農家、消費者、NPO・市民団体、企業、行政から構成される里山・街づくり。

農業、カフェを中心とする交流の場、体験工房、エコツアーの活動拠点を目指します。

 

社会環境部会を中心とした活動:板野徹氏(かわごえ環境ネット)

ここからは、かわごえ環境ネットの部会の活動の紹介です。

 

同部会の学習活動で訪れた環境共存型工場「サンデンフォレスト」。

 

群馬県赤城山の南麓にあるサンデングループの自動販売機の組み立て工場。

60ha以上の敷地の半分が森と緑地に覆われており多くの動物が行き交う。

せせらぎでは蛍も飛び交い、工場建設当時よりも動物相が豊かになっているそうです。

そのほか、環境講演会では講演と映画の鑑賞会を行った様子。

北公民館での緑のカーテンやつばさ館まつりの展示など一年の活動が紹介されました。

 

 

自然環境部会を中心とした活動:賀登環氏(かわごえ環境ネット)

同部会では「水と緑と土」をメインテーマとし「生物多様性の保全」に取り組みます。

 

多岐に渡る活動内容について発表が行われました。

1.川越市の市民生き物調査の協力や県民参加モニタリング調査協力。

2.雑木林などの調査、チョウやトンボの調査、甲虫調査。

 

3.雑木林の在来希少種の保全、池辺公園の絶滅危惧種の保護

 

4.(仮称)川越市森林公園での雑木林の自然、キノコ、虫の観察会

5.田んぼの生き物調査や那須平成の森自然保護ツアーなどのイベント

 

6.学校教育支援、7.キノコの冊子刊行

以上、午前の部をダイジェストでお届けしました。

 

所感

今年の発表はいずれも身近で取っ付き易いテーマを取り上げていたように感じました。

中でも、冬虫夏草というキノコの紹介はとても興味深いものでした。

少し目を向ければ、環境を学んだり、参加したりする機会は幾らでもあります。

面白そうと思ったところを入り口に環境に取り組むにきっかけになれば幸いです。

 


INFORMATION

かわごえ環境フォラーム(午前の部)

【開催】平成30年2月25日 9:30〜12:00(午前の部)/13:00〜16:30(午後の部)

【場所】ウェスタ川越(活動室1/2)

【主催】 かわごえ環境ネット

【HP】http://kawagoekankyo.net/

【FB】https://www.facebook.com/kawagoekankyonet/ (当日の様子を動画でも紹介)

【TW】https://twitter.com/kawagoekankyo