川越一番街商店街シリーズ~富岡 勇樹さん〜「観光人力車 いつき屋」代表~

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「断られるのなんて日常茶飯事ですよ!それでもめげないのは、なによりこの仕事が好きだし、どんな人に会えるのか楽しみだから、ですね。」

 

そう語るのは俥夫(しゃふ)の富岡 勇樹さん。凍てつく冬の日や灼熱の夏の日も、通りを歩く観光客にご案内の声をかけ、断られてもさわやかな笑顔は崩しません。

街の人にはトミーと呼ばれています。

川越に2つある観光人力車屋さんのうちのひとつ「いつき屋」の代表です。

 

一番街蔵の街をはじめ、神社仏閣や歴史を感じさせるスポットをめぐるレトロなたたずまいの人力車は、着物で歩く人たちと同様、華になる被写体です。

 

一体どんなきっかけで、人力車を引くことになったのでしょうか?

 

人力車をひく、きっかけ

富岡さんは京都生まれ。地元の学校を卒業後、家業を手伝いゆくゆくはそこを継ごうと考えていました。しかし、リーマンショック後の不況の折、このままではいけないと外に出で働く決断をします。

 

「何の仕事しようか?と思ったとき、目の前に『人力車』があったという感じでした。まえに浅草で人力車に乗ったことがあるんです。それまでたいして興味はなかったのですが、結構おもろいやんと。

その時のことが頭の片隅に残っていたのかもしれないですね。京都に住んでいて人力車も身近で、それに友達の知り合いが人力車をやっていて、結構おもしろいと聞いたのもあって、まぁ、ノリで決めたようなもんです(笑)」

いつも9時にはこの場所に立つ。

 

全国展開もしている京都の大きな人力車屋さんの求人募集をみて、ここなら色々な場所に行けるかもしれないという思いも後押ししました。

赴任先は、古い街並みが残りアートの街としても人気の大分県の温泉地「湯布院(由布院)」でした。

赴任先ではまず、人力車を引く俥夫になるための研修を受けます。これには、だいたい一か月ほどかかります。車を安定して引く技術を身に着け、通りを安全に走るトレーニングを積み、地元の観光情報を覚え、接客を学び、トーク技術を磨きます。

研修では特に苦労をすることがなかったそうですが、いざ仕事となるとやはり現実は厳しく、自ら声をかけてお客様にのっていただくのは並大抵の苦労ではなかったようです。同じ時期に入社した人はどんどん辞めていく中、とにかく嫌だ、辞めたいという気持ちが大きくなっていったと言います。

地元のカメラマンの良い被写体になる。撮影:原 弘さん

 

やめたい、だが・・

「でも、続けてこられたのは、一緒にやろうぜ!という上司の支えがあったからです。やたら熱く語る人で、うっとおしいなぁと頭にきてよくぶつかりました。(笑)その上司によく言われたのが『人力車にのってくれたお客さんに愛を感じるやろ?だから一生懸命になるんだ』ということでした。

観光地に来て人力車って別に乗らなくてもいいじゃないですか? なのに、乗ってくださった、これってとってもありがたいことなんですよ」

 

そんな上司の下で働くうちに、徐々に俥夫としてのプロ意識が研ぎ澄まされていったと言います。

人力車というとタクシーのようにただ乗っているだけと思う方も多いそう。

しかし、実際はお客様からやりたいこと、行きたいところを聞き出して、オーダーメイドでルートを決めます。ガイドするのはもちろん、オススメの場所をご案内したりと、降りた後も旅を楽しんでいただけるようにフォローするまでが仕事なのだと言います。

 

そして、川越へ・・

大自然に囲まれてのんびりとした雰囲気の湯布院で人力車を引くこと約3年間、一区切りつけたいということで会社を退社。

その当時同じ仕事をしていた友人に誘われて川越に遊びにきたのが、今から6年前。川越のことを全く知らなかったそうですが、面白そうな街だと感じ一番街蔵の街で人力車を引くことになったのは約2年前から。

 

いつき屋さんの拠点はここ、埼玉りそな銀行の前

 

先ほどの上司から教えてもらったことがもうひとつあります。

それは地域社会に貢献すること。

 

「人がいる街があってこそ、人力車屋は車をひかせてもらうことができます。川越でも、街おこしや街づくりをしている人たちの話や教えは積極的に聞いて、貢献していきたいんです」

通りを掃除するのはもちろん、地元の集まりがあれば積極的に参加、地域の防犯パトロール隊としても活躍しています。

また、歴史ある川越まつりにも参加することができてとても幸運なことだといいます。

にこやかに、丁寧にご案内中♪

 

そんな富岡さんの姿勢を見てか、街の人から声をかけてもらったり、仕事のご縁を結んでくれることもあるそうです。

 

車夫の仕事ぶり

ところで、ご存知のとおり川越の一番街は数年前から観光客が急増しています。人力車は軽車両なので、車道を走るわけなのですが、そもそも車やバスの通行量も多い通りです。歩道にあふれんばかりの人と、車の間を走る人力車には苦労があるのではないでしょうか?

 

「どこでもですが、人力車は通行の優先順位が一番最後です。歩行者、自転車に行ってもらって、車に行ってもらって、僕たちは最後に行くんです。もちろんその時の状況によりけりですが、お客様の安全を一番に考えて走っています」

街のご案内にいざ出発!

 

人力車は軽車両。車道をさっそうと走る。

実は、今も技術向上のために時折研修を受けているとのこと。特に人力車に座っているときのわずかな揺れも足腰の悪いお客様の身体の負担にならないように、と細かな気遣いも磨き続けています。

そんな気配りは他にもあります。

特に観光で来た方には美味しいお店、おすすめのお店を聞かれることも多いようですが、お客さんが好きなもの、食べたいものを聞き出しつつ、色んなジャンルのお店をなるべくまんべんなくお伝えするようにしているそうです。

 

「せっかくいらしていただいたので、街のいろんなお店を知ってほしいですからね」

 

今までたくさんのお客さんを乗せてきましたが、それぞれに思い出深く、顔も大体覚えていると富岡さん。

リピーターで何度も乗ってくださるお客様、家族で乗ってくださるお客様、自分の誕生日に乗ってくださるお客様、彼氏、彼女の誕生日のプレゼントとして乗ってくださるお客様、出張に来たついでに乗ってくださるお客様。

ここ最近、観光で街をおとずれる人たちに変化を感じており、川越にとても良い印象を持ってその後何度か訪れてくれる方も多くなってきたと言います。

 

川越ならでは・・?

富岡さんは、湯布院をはじめ、時々手伝いとして京都や浅草といった観光地でも人力車をひいてきたそうですが、川越ではとても特徴的なことがあるようで・・・

 

「川越は、観光の方はもちろんなのですが、実は地元の人にもたくさん乗ってもらっています。七五三や、お祝い事にもご利用いただいてます。川越駅の方に住んでいる方でも、意外と一番街の方に来ることがないとおっしゃっていて『おすすめのところ回って』と言われて、ご案内したこともありました」

地元の方をのせて・・撮影:原 弘さん

提携している浅草の人力車屋さんからも時折手伝いの人が来ていますが、地元の方が応援してくれたり、なにかと気にかけてくれて「引くのが楽しい街」と感じているそうです。

 

しかしながら、人力車というとどこの観光地でも半ばキャッチ営業のように見られてしまうといいます。声をかけてもほとんど断られてしまうのも事実です。

 

「ほんとうに、めっちゃ断られます(笑)。それは仕方ないんです。でも、気持ちよく笑顔で『ご縁がありましたらどうぞ乗ってください』と言ってます。今はいろんなところで人力車が走っています。どこでもいいので、もしよかったら乗ってくださいと伝えています。人力車って個人プレーのように思われるかもしれませんが、実はこういったチームプレーが大事なんです。川越だけじゃなくて、全国の人力車に乗ってくださる人やリピーターを増やしたいんです」

 

断られたけれどめげない、それはその先のご縁を信じて、またその先の仲間を信じているから、そして大きな目標があるからなのです。

絵になる一枚。Part1 撮影:原 弘さん

 

絵になる一枚。Part2 撮影:原 弘さん

 

そして、これから・・・

さらに富岡さんは「人力車屋は世界で一番かっこいい仕事」と言い切ります。
プロ意識をもち自分の決めた仕事に迷いがなくまっすぐ突き進む―上司であった人のそんな姿を見てきたからこその言葉です。その人がいてこそ、今の自分があるのだと語ってくれました。

今後は川越で人力車を引く仲間をもっと増やしていきたいと意欲を燃やしています。

次は富岡さんが、人力車の魅力を熱く語り、へこたれそうになる仲間を支える“上司”になる番なのですね。

 

さばさばとそして時には京都弁も交えながら、話してくれた富岡さん。
今年の夏はいつにもまして暑いです!熱中症にだけは気を付けてくださいね。
ありがとうございました。

 

 

☆おしらせ☆

8/1(水)~9/2(日)開催 西武鉄道の「本川越から始まる恋さがし」では本川越PePe内や川越のお店で使えるお得なクーポンや嬉しい特典があります。

いつき屋さんでは「1時間以上ご利用で10%オフ」になります。(駅窓口などで配布してるパンフレット持参の方 7/27 9:40追記))

▼こちらをご参考に

https://www.seiburailway.jp/railways/enmusubi/

https://www.seiburailway.jp/railways/enmusubi/pdf/pamphlet.pdf(チラシ画像)

 

川越氷川神社では縁結び風鈴が飾り付けられています。そして8/1からは「恋あかり」特別良縁祈願祭もとりおこなわれます。是非カップルでお友達同士で、人力車をご利用してみてはいかがでしょうか?

もちろんお一人でも楽しめちゃいます。

夜の川越は、しっとり落ち着いた雰囲気が最近じわじわと人気になってきています。

富岡さん曰く、19時以降でも乗車できる日があるそうですので、ぜひお問い合わせを。

 


Information

観光人力車 いつき屋

【住所】 川越市元町2-1-6(もち亀屋裏)

【電話】 090-7341-0088

【営業】10:00~18:00

【定休】 不定休

“営業時間外でもお受けいたします。どうぞお気軽にご連絡くださいませ。”

※埼玉りそな銀行の前のスペースがいつき屋さんの人力車の待機・出発場所です。

http://www.zenkin.jp/list/埼玉りそな銀行川越支店(旧第八十五銀行本店本

◆乗車料金の例(寺社の拝観料は別)

[一区間] (約1km 12分ほど) お一人様:2,000円 お二人様:3,000円

[30分] お一人様:5,000円 お二人様:8,000円

[45分] お一人様:7,500円 お二人様:12,000円

[1時間] お一人様:9,000円 お二人様:15,000円

2時間以上のコースもあります。

 

【HP】https://www.jinrikisha-itsukiya.com/
*2019/4/18新サイトオープンしました♪

【FB】https://www.facebook.com/川越人力車-いつき屋

【Instagram】https://www.instagram.com/itsukiya.kawagoe/

 

ちょこたび埼玉公式チャンネルにも登場しています。