鶴川座の意志を引き継ぎ新たなコミュニティと賑わいの創出の場が誕生〜旅籠小江戸や〜

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取材・記事 白井紀行

 

川越市連雀町にある蓮馨寺は、室町時代に創建され歴史ある浄土宗のお寺。

呑龍上人の像が安置されており地元では「子育て呑龍さま」と呼ばれ親しまれています。

※戦国時代から江戸時代の僧で子どもを手厚く保護したことから「子育て呑龍」の異名を持つ

 

蓮馨寺の山門から東にまっすぐ伸びる参道「立門前通り」。

江戸時代から栄え、昭和30〜40年代には市内で最も賑やかな通りだったそうです。

 

その通りにはかつて「旧鶴川座」という明治時代の芝居小屋がありました。

関東圏では唯一残る貴重な木造建築の芝居小屋なため、その保存・活用方法を長らく議論。

しかし、2019年に惜しまれつつ解体が決定しました。

 

そして、1年後。2020年7月にオープンしたのが「旅籠小江戸や」

4F建てで1Fがフードホール、2〜4Fがホテルエリアとなっています。

 

入り口にある旧鶴川座のことを説明した案内板。

その面影を頭の隅に入れてから館内を巡ってみましょう。

 

1Fはフードホール(縁結び横丁)

1Fは「縁結び横丁」と名付けられたフードホール

 

フードコート形式の広々としたホール。

美味しいランチを食べたり、コーヒー片手におしゃべり、昼飲みを楽しむ。

いろんな交流が生まれることが期待できるスペースです。

 

フードホールを通り抜けたホテルの裏手。

天気のいい日には心地よい風に吹かれながらくつろぎの時間が過ごせます。

 

その先は、開運・縁結びのご利益がある「熊野神社」

境内には、川越銭洗弁戝天(宝池)、運試し輪投げ、足踏み健康ロードなど。

参拝で運気が上がること間違いなし!

 

2F〜3Fはドミトリーを中心とした宿泊エリア

「旅籠小江戸や」のもう一つの顔がホテル。

1Fフードホールの一角にはフロントがありお客様を出迎えます。

 

宿泊者専用のエレベータで上がったところが宿泊スペース。

2Fと3Fで合計108名が泊まることができます。

 

こちらは最大10人が泊まれるドミトリー形式の部屋。

 

バンクベッド(2段ベット)には自社開発の体圧分散マットレスが使われています。

記者の年代だと寝台列車を思い起こさせてワクワクしてしまいました。

 

部屋から熊野神社の境内を眺められます。

 

こちらは8人が泊まれる女性専用のドミトリー。

 

女子旅応援として駄菓子や追加のアメニティを用意したプランです。

※女子旅応援プランの期間や詳細は、ホテルにお問い合わせください

 

ドミトリーだけでなく1〜2名向けのセミダブル、キングダブルも部屋もあり。

みんなでワイワイ、小さなおこさま連れ、ビジネスと用途に合わせた利用ができますね。

 

白が基調の広々とした空間の女性向けパウダールーム。

椅子に座ってゆっくりとお化粧。2wayのヘアーアイロンも用意してあります。

 

こちらはシャワールーム。シャンプー・コンディショナー・ボディソープなどを設置

お手洗い、パウダールームとともに共有空間となっています。

 

4Fは宿泊者が集うコミュニティエリア

4Fは宿泊者向けのラウンジで、キッチン、ランドリー、自販機コーナーを設置。

 

宿泊者同士がおしゃべりして仲良くなる。新たな出会いが生まれる場です。

 

キッチンルームが併設されていて、IHコンロ、電子レンジ、冷蔵庫を完備。

食器やコップ、お鍋、箸などもあるので食材を買い込んで調理もできます。

 

イベントの多い川越ですから準備のための打ち合わせやキッチンを利用して前夜祭。

大きなモニターに写真や動画を投影しての打ち上げも盛り上がりそう。

 

ラウンジからテラスに出ることもできます。

なかなかこの高さから街を見られませんので宿泊者ならでは特典です。

旅籠小江戸やのFacebookからお借りしました

 

木所社長インタビュー

旅籠小江戸やはTKM株式会社が管理運営しています。

代表取締役の木所裕幸様に、当法人の代表理事 寺崎がインタビューしました。

 

寺崎 旅籠小江戸やの管理・運営に関わるきっかけは?

木所 この場所は蓮馨寺が所有していて「鶴川座」という芝居小屋がありました。私は 「川越湯遊ランド」を運営する三光物産の代表でもありますので、なんとか再生できないかと住職から相談を受けて検討会に入りました。

 

寺崎 蔵の会が利活用を模索していて、私たちも蔵の会から掃除するから手伝って欲しいと言われて、ゴミを片付けたり屋根に登ったりしましたね。

木所 私たち見識者の中で鶴川座を何とかしようと検討を重ねましたが、いちばんの問題は建物の老朽化。もう入れませんよという危険な状態。地域の皆様に愛されてきた建物なので芝居小屋として何とか残したかったのですが、採算性など諸々の面からも難しいという結論になりました。そこで、姿が変わったとしても引き続き地域に愛され商店街の活性化につながる建物にしようということでスタートしました。

 

寺崎 フードホールとホテルという形式にたどり着いたのは?

木所 川越への観光客は700万人と年々増加傾向にはありますが、日帰り客がほとんどで滞在時間も短いので消費額はあまり伸びない。当時はインバウンドの方も増えていて、さらに、オリンピックも控えていた。川越では外国人観光客向けの宿泊施設は少なかったので1Fはフードホール、2〜4Fをホテルにすることになりました。

 

寺崎 ここ最近、川越でもゲストハウスが増えてきて、そこのオーナーと話があうとかいつも笑顔で迎えてくれるとか、新たなコミュニティが形成されてきました。でも、ドミトリー形式で一人当たりにすれば2〜3000円で泊まれるというコンセプトをもった宿泊施設は川越にはなかったですね。

例えば川越でイベントをするにしても必ずしも皆んなが川越在住というわけでもない。家まで2時間だとそれなりに交通費も掛かってしまうので、その金額で川越に泊まってもらって生活を楽しんでもらう。皆んなでお酒を飲みながら話し合ってコミュニケーションを深める。そんな使い方も考えられますね。

 

木所 もともと川越は観光の街っていうわけではなくて色々な経緯があって気がついたら観光地になっていた。そこで、ブラッシュアップして観光でやっていくという路線になりました。だけど、あまりにも有名になりすぎて一極集中(オーバーツーリズム)も課題となっています。

一方で、生活の商店街というのは人が減って景気が悪くなかで過渡期でもある。すぐ近くでも「川越昭和の街」を立ち上げたりと地域の方々がいろんな模索をされている。

「旅籠小江戸や」もいろんな使い方ができることをまだ知られていませんし、発信していかないとと考えています。川越の観光のメニューを増やすとともに、昔のような賑わいのある立門前商店街を取り戻せるよう商店街の皆さんとも協力していければと思いますので、ぜひ、よろしくお願いします。

 

編集後記

古くから川越にいる人からはかつて立門前通りが賑やかだった時代の話をよく聞かされます。

また、旧織物市場は若手アーテイストやクリエイターが入居する施設として整備が進んでいます。

飲食を楽しめるフードホール、手頃な金額で泊まることができるドミトリー形式のホテル。

その日出会った宿泊者が言葉を交わしたり、ワークショップや体験教室にも使えるラウンジ。

商店街に出かけて商店主と会話をして食材を買い、キッチンで調理をしてみんなで食卓を囲む。

ホテル内を案内してもらいながら木所社長の話しを聞いているとそんな光景が浮かんで来ました。

旧鶴川座の意志を汲む「旅籠小江戸や」。

立門前商店街の賑わいを創出する新たな顔としてこれから街を牽引していくことでしょう。

 


Information

旅籠小江戸や

【住所】川越市連雀町8-1

【電話】049-277-4901

【HP】https://hatago-coedoya.com/

【FB】https://www.facebook.com/Hatago-Coedoya

【TW】https://twitter.com/HatagoCoedoya

【IG】https://www.instagram.com/hatago_coedoya/

 

川越立門前商栄会

【HP】https://www.tatsumonzen.com/