雑木林に囲まれた自然豊かな公園に新河岸舟運の面影を訪ねて〜仙波河岸史跡公園〜

取材・記事 白井紀行

 

川越市東口から徒歩約15分。国道16号線の下をくぐり抜けたところ。

左手は仙波氷川神社

 

新河岸舟運の起点だった仙波河岸の面影を残す「仙波河岸史跡公園」があります。

 

昭和6(1931)年に新河岸舟運が終焉を迎えた後、雑木林の湿地のまま残されていました。

それが、平成16(2004)年に「仙波河岸史跡公園」として開園。

園内には、河岸場跡、仙波の滝、自然観察湿性地や愛宕神社への散策路があります。

仙波の滝へ

入り口傍の管理事務所前に掲示板に公園の説明や当時のチラシが貼られていました。

 

また、仙波河岸についてまとめた小冊子がぶら下げられていました。

では、小冊子の情報も参考にして園内を巡ってみましょう。

 

園内は雑木林が広がり散策路が整備されています。

仙波の滝

仙波河岸の始まりは弘化3(1846)年。

仙波東照宮と城内の三芳野天神修理の御用材を運搬するために開設されました。

愛宕神社下からの湧き水でできた仙波の滝。これが新河岸川の源流でした。

仙波河岸舟運が許可されたのは明治10(1877)年で、最後にできた河岸場です。

 

案内板で、明治34年頃の様子を写した写真を見ることができます。

龍神の碑と水神宮

仙波の滝の後ろに祀られた竜神の碑、不動明王の化身「倶利加羅竜王」が刻まれています。

黒龍が剣に巻きつき剣の先端を飲み込む姿から竜神様。

昔、農家の人達が滝の水を掛けて雨乞いをしたことから水神様とも呼ばれます。

建立年月は不明ですが、仙波河岸開設以前からあったと言われてます。

その横は水神宮で富士御水講の関係者が文教10(1827)年に建立したと考えられています。

愛宕神社へ

「仙波の滝」と「龍神の碑」の間を散策路は、愛宕神社へと続きます。

 

武蔵野台地の東南端にあたるので、かなりの高低差があります。

 

階段を登り切ったところで立て札。右は「延命地蔵尊」、左は「愛宕神社」。

 

まずは、延命地蔵尊の方へ行ってみましょう。

延命地蔵尊

今から約280年前の元文元(1736)年に祀られ、延命と利生を請願する地蔵菩薩。

新しく生まれた子を護り、短命、夭逝の難を免れるとされています。

 

足をもう一方の足の腿(もも)の上に組んで座る半跏像となっています。

 

その横にも石像があるのですが、特に説明書きがありませんでした。

 

今度は、先ほどの分岐点を左へ。

 

愛宕神社の鳥居が見えてきました。

 

愛宕神社は愛宕古墳の上に建立されています。

6世紀中葉期のものと思われ、その大きさは高さ6m、東西30m、南北53m

基壇のある二段築成の円墳で父塚とも言われ、川越市の指定文化財になっています。

幅約6メートルの周溝が東南の斜面を除いて巡っています。

神社までは急な階段を登り、6mとはいっても高く感じます。

 

愛宕神社

祭神は火産霊命。文禄2(1593)年に京都の愛宕山に鎮座する分霊を奉祭したもの。

古来より火伏せの神、麻疹の神として信仰されてきました。

毎年7月24日に祭礼が行われます

 

拝殿の後ろに鎮座する本殿。

石に「大正12(1923)年に関東大震災で倒壊。10月に再建し13年7月落成」と刻まれてました。

 

こちらは駐車場から撮ったもの。見上げるような高さです。

 

愛宕神社の前は国道16号線。車の往来は途切れることがありません。

さっきまで静寂の中にいたので、そのギャップに驚かされます。

 

古墳の麓には松尾芭蕉の句碑が2基。

「名月に麓の霧や田の雲」と「蓬莱に聞かばや伊勢の初便り」が刻まれていました。

仙波河岸跡

愛宕神社から公園の入り口近くに戻ってきました。

 

仙波河岸跡からウッドデッキ歩道に向かい新河岸川まで出てみましょう。

 

休憩デッキから河岸場跡を望む。

この小さな池からは、かつて、大きな船が停泊した頃を想像するのは難しい。

 

公園の奥に進んで観察橋へ。

 

左手は先ほどまでいた休憩デッキが見える。

 

右手は新河岸川へと向かうことになる。

 

河岸場跡に沿って進む道はないので散策路へ。

この先でウッドデッキの歩道へとつながる

 

丁字路となったウッドデッキを左折。

 

ウッドデッキ歩道をテクテクとしばらく歩く。

 

水門らしき設備が右手に見えてきました。

 

この付近までが河岸場跡となります。

 

こちらが新河岸川側の入り口。

 

道路を隔って新河岸川。

 

小冊子の挿絵と見比べるとなんとなく面影が残っている気がします。

 

川の両端は堤防が築かれており、仙波河岸史跡公園とは繋がっていません。

かつてのように船を出入りすることはできないのです。

 

この川を船で下っていけば、浅草へとたどり着く。

いつかここから船を浮かべて実現したいものです。


INFORMATION

仙波河岸史跡公園

【住所】川越市仙波町4-21-1

【電話】049-224-5965(川越市公園整備課)

【HP】http://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/sports_koen/koen/senbagashishiseki.html

川越市仙波町4-21-1