ビールを“学ぶ”「コエドビール学校」へ入学してみた
取材・記事 みつきゆきこ
ビール好きなら一度は行きたい「ビール工場見学」。コエドビールでは見学に加えて、ビールを学ぶ「学校」を2017年冬から開いています。発表後すぐに定員が埋まってしまう人気の魅力を確かめに、2月1日(土)に醸造所へ行ってきました。
東武東上線の東松山駅からコミュニティバスで20分。コエドビールの看板が見えてきます。レトロなレンガ造りの建物が、COEDOクラフトビール醸造所です。
ホテルや合宿所を思わせるエントランス。ここからスリッパに履き替え、教室へ向かいます。
今日教えてくれるのは、教頭先生の松永さん(校長は社長の朝霧さんです)。松永さんは、元はブルワー(醸造士)で現在営業職をされているベテランスタッフ。社内で二人しかいない「ビール伝道士」の一人です。
本日の体験で学んだことを、時間割風にご紹介していきます。
第1限目:昭和の建築を活かした「リノベーション」
三芳工場から移転先としてサステナブルな醸造所の候補地を探していたときに緑豊かな環境と建物に出会い、2016年(平成28年)に醸造所を移転しました。
その建物は昭和50年代に建築されたリコー東松山研修センター。宿泊施設もあり、大浴場やテレビも完備されています。100年持つといわれる堅牢なつくりのレンガ造りの建物はまるで雑木林のなかのお城のようです。
リノベーションの課題①大きい醸造設備
「建物を残したいという思いがあり、リノベーションすることを選択しました。耐震性を損なわない範囲で、慎重に崩して大きなタンクを搬入するのは、熟練された技術者の助けを借りながらすすめました。」
リノベーションの課題②学校のような小さな部屋
「黒板があって机があってという教室はスケルトンにしています。また、壁があることを逆手にとって、衛生基準ごとに部屋を分けて使用する工夫をしています。」
先々には、ビールの飲める理想的なブルワリーホテルも期待できそうです。
第2限目:ビールと「農業」
コエドビールは、2006年に協同商事という有機野菜を扱う会社から生まれました。川越地域の農業といえば、「川越いも」を思い浮かべる人も多いのでは。
「形の悪いさつまいもは、40%が捨てられていたんです。何か良い方法はないかと考えていた時、さつまいもの連作障害を防ぐために、土を豊かにする大麦などを肥料として植えていたことに気づいたんです。これをあわせてビールが造れないかというのがはじまりでした。」
大麦の使用は実現しませんでしたが、コエドビールのはじまりにつながる「紅赤(べにあか)」。モンドセレクション受賞など品質も評価されている看板商品です。
第3限目:ビールができるまでの「技術」
①麦芽粉砕室
カナダ産やドイツ産のモルトなど数十種類のモルトをブレンドしています。粉砕方法はストーン製から溝のあるステンレス製のローラーに変更したことで、よりクリーンな味わいが実現されました。
仕込み水は、醸造用水を地下からくみ上げて使用しています。
②仕込み室(釜・ろ過槽)仕込み室(ワールプール)
ドイツ製6000リットルの釜へ麦芽と水を温度を変えながら分けて仕込み、糖化された「麦汁」ができます。最後に風味や泡だちに必要なホップを追加し、上澄みを濾過して発酵室へ。
③発酵熟成タンク室
完成したビールは、天井に走るこの管で次の場所へ移動します。
④瓶詰・樽詰・缶詰
缶ビールは完全に光を遮断することができます。ただし、缶詰する巻締機は大変高価だそうです。樽のビールは、納品先の店舗の注ぎ手によって味わいが変わります。
第4限目:ビールの「歴史」
一口にビールといっても、歴史の中で何度かルネサンス期が起こっています。最近耳にする「クラフトビール」というのも、エジプト時代から続くビールの歴史のなかでの大きな変化のひとつ。
ワインと比較して没個性だったビールは、醸造家(ブルワー)による無限のレシピで個性を表現できる時代へ移行しているとのこと。複雑なチーズとペアリングできるほどに、ビールの味のバリエーションは豊富になっています。
給食の時間:お待ちかねのビールの時間です!
まずは、麦芽を水で煮込んだ「麦汁」を試飲。部屋の中には甘い香りでいっぱいになります。
コエドビールのラインアップがずらり並びます。こんなにカラフルで味わいも違うんです。
ビールにあわせるおつまみは、麦芽かすを飼料として育った牛のビーフジャーキーなど。
水は、コエドビールのもとになる醸造用水。
「幸せ」ってこういうことでしょうか。生徒の皆さん笑顔にあふれています。
参加された生徒さんへお話を伺いました。
「先生の松永さんの説明にビールへの熱い思いを感じます」
「3回目の参加でお友達も連れてきました。毎回ちょっとずつ、新しいお話が聞けるのが楽しみです」
「広島から参加しました。ビールにたくさんの種類があることを知りました。苦いのが好きではないのですが、飲みやすい種類もあると知りました」
最後、ビールテストは満点でした! バッチをいただいてほろ酔いのなか下校です。
特別動画「朝霧校長先生のお話」
もっと詳しく知りたい方は『朝霧校長先生のお話』(コエドブルワリー社長)のインタビューもご覧くださいね。
1)クラフトビールとは
2)ビールのルネサンスとは(1:38)
3)日本のビールとグローカル(4:36)
4)ビール学校をはじめた理由(6:22)
5)リノベーションについて(8:22)
6)川越の地域でやりたいこと(11:50)
たぬきもひょっこり顔(お尻しか取れませんでした)を出すような自然豊かな癒される醸造所。人気の見学ツアーは、月に2回の土曜日に開催されています。HPでチェックしてくださいね。
Information
「コエドビール学校」~ビールの科学と文化を学ぶ、COEDOクラフトビール醸造所見学ツアー
【住所】埼玉県東松山市大谷1352
【HP】https://www.coedobrewery.com/jp/
【FB】https://www.facebook.com/coedobrewery
【TW】https://twitter.com/COEDOBREWERY
【予約】https://coedobrewery.peatix.com/