誰気兼ねなく映画を見れる懐かしく新しい非日常体験〜ドライブインシアター〜

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取材・記事 白井紀行

 

ドライブインシアタの魅力を多くの人に味わってほしい。

その思いから「ドライブインシアターを作る会」を立ち上げた柿沼節也さん。

2019年10月26日に第1回を中老袋にある川越オフロードビレッジで開催。

12月13〜15日に第2回の開催を同じく場所で開催しました。

 

今回の記事は二部構成。

第一部では、開催前のインタビュー、第二部では15日の上映の様子をお届けします。

 

昭和世代には懐かしい響きのドライブインシアター

駐車場に巨大なスクリーンを張って車から映画を鑑賞する「ドライブインシアター」。

アメリカが発祥でピークの1950〜60(昭和25〜35)年頃には4,000箇所以上で営業。

日本では1962(昭和32)年に東京都砂川町に国内初のドライブインシアターが開業。

1990(平成2)年にピークとなり、2010(平成22)年に国内の営業は終了しました。

あえて、元号を入れたように、昭和世代には実に懐かしい響きがあります。

 

➖ 柿沼さんは「ドライブインシアター」を知らない世代ですが、何がきっかけで?

ドライブインシアターは映画や本でしか知らなくて、2018年の春に友達とレンタカーでアメリカ横断旅行をした時に初めて見ました。アメリカでは映画館がない街もあって、映画を見る場所としてドライブインシアターが現役なんです。

今、3D、IMAX、4Dといった仕掛けのある映画が主流ですが、広大な土地にそびえ立つ平面なスクリーンに色鮮やかに浮かび上がる映画。まさに「映」し出される「画(え)」でした。車の中でポップコーンを食べ、コーラを飲み、友達と喋りながら映画を見る。映画の内容は覚えていなくて(笑)、ドライブインシアターの体験そのものが面白かった。

車の中なら誰気兼ねすることなく思い思いに映画を楽しめる。その魅力に取り憑かれてしまって、サンフランシスコとニューヨークの間を何度も往復して営業しているところを探し回りました。

ドライブインシアターを日本でもやって見たい、地域に根付かせていきたいと2019年に「ドライブインシアターを作る会」を立ち上げました。本当は常設にしたいのですが、まだ、右も左も分かりません。そこで、どれ位集まるのかを試そうとイベントでやってみたのが10月26日の第1回になります。

 

➖ 1回目は川越のオフロードビレッジで開催されましたがどのような縁で?

首都圏でやりたかったので、スクリーンを立てて車を止められる場所といえば河川敷かなと思って荒川沿いなんかを探していて見つけて、オフロードビレッジのオーナーさんに快諾いただきました。

「川越」にこだわるつもりはありませんが、オーナーさんも協力的で、2回目もこちらで開催させていただくので今後も度々開催させていただければと思います。

 

➖ 第1回はロシア映画の「戦艦ポチョムキン」と「エルミタージュ幻想」を上映しましたが、この作品を選んだのは?

学生時代は名画座をふらっと回るのが好きだったんです。有名な監督特集とかやっていて、全く知らない映画だったけど良い映画で勉強にもなりました。今だと、映画を見るといってもアニメや漫画が原作になっているものが多い。ドライブインシアターでは、誰もが楽しめるものというところもあるのですが、豊かな感性を育てたいなと思って選びました。

 

➖ 二本立てにするのにも柿沼さんのこだわりだとか?

集中力が持たないと友達にも長いと言われるので悩んでいるところもあります。だけど、車の中なら周りに気兼ねする必要はありません。映画を見ながらご飯を食べる、喋る、寝る、帰りたくなったら帰っても良い。自分たちでいくらでもやりようがあります。車に乗って映画を「見る」のでなく「遊ぶ」を体験して欲しいので2時間で無く4時間なんです。

自分が知っている映画をスクリーンがポツンと立っている非日常的な空間で見る、あるいは、初めて見る映画に出会えたという体験がドライブインシアターで生まれてくれれば良いなと考えています。

 

➖ドライブインシアターをする上での苦労があれば聞かせてください。

どんな作品を上映するかを決めたり、場所を確保するのは一人でできるのですが、イベントでは人手が必要になります。今は、学生時代の友達に頼んでいますが、平日となると休みを取ってもらうことになるので、手伝ってくれる人がもう少し欲しいですね。

 

それと、お客さん集め。第2回を上映するにあたり名画座を中心に20軒くらい回りました。SNSでも告知をしているんですが、客層と微妙にずれているらしくなかなか被らない。ピンポイントで告知できる方法を探しています。

 

― 最後に、これから、こうしていきたいという夢を教えてください。

ドライブインシアターをきっかけに、映画に触れる頻度を増やして映画を好きになってくれる人が増えてくると嬉しいですね。昔を懐かしんで来てもらうのも大切ですけど、若い人にも来てもらいたい。小学生、中学生、高校生に見てもらいたい。

それには単発で終わらるのではなく定期的に開催して、ここに来れば映画を楽しめるような場所を作り上げたいです。

地方になると、映画館がないところもあります。映画館を立ち上げるのは難しいけれどドライブインシアターならばできると分かれば、地元の人も、気軽に始められるんじゃないかなと。特に地方だと広い土地があるし車社会なので、やっていれば来ることができる。

ドライブインシアターの形式で映画を上映する場所を増やせれば、日本の映画事情に一石が投じられるのではと考えています。

注)第一部のインタビューは、くらびとファンディングのサイトに「ドライブインシアター川越12月13・14・15日の3日間限定!車で映画を見よう!」として掲載したものを再編集したものです。また、写真は「ドライブインシアターを作る会」からお借りしました

 

12月15日(日)ドライブインシアターのラストディ

第2回ドライブインシアターは2019年12月13日(金)〜15日(日)に開催。

最終日の15日の様子を取材させていただきました。

会場となる川越オフロードビレッジの最寄りは入間大橋バス停。

入間大橋に差し掛かる道路からもスクリーンが目につきます。

地図はこちら

日本、〒350-0846 埼玉県川越市大字中老袋295−5

 

会場に近づくとエンジン音と土煙をあげて走り回るバイクの姿が見えてきます。

 

道路を背に駐車場に立てられた巨大スクリーンは500インチ(11×7メートル)

左の電柱は元からあったのですが、右はオーナーが立ててくれたそう。

 

記者が到着したときにはスクリーンをピンと張る作業の真っ最中。

 

時折、吹く強い風。今回からスクリーンをメッシュにして凌いでいます。

今は試行錯誤をしながら設備を整えている段階なのだとか。

 

無事に張り終えたスクリーンは風を孕んで帆船の帆を思わせます。

 

ここでホッと一息。お茶やお菓子をつまみます。

スタッフは主に柿沼さんの学生時代の友人。何だか楽しそう。

 

スクリーンからメジャーで距離を測って車止めのロープを張る。

ここがドライブインシアターの最前列となります。

 

 

映写機が登場しました

小屋の傍にでんと置いてある黒い箱が映写機というかプロジェクター。

一般の事務用の5〜10倍にあたる20,000ルーメンの明るさを持ちます。

 

これを箱から出してテーブルにセット。100Kg近くの重さがある代物です。

 

オペレーションパネル部も色んなコネクタがあって複雑。

記者はこういうのを見ると何故かワクワクしてしまいます。

 

玉掛け用のベルトでガッチリとテーブルに固定。

 

これを4人がかりで持ち上げて、映写機を収納していた黒い箱に載せます。

バランスも取りづらそうで、写真を撮りながらハラハラしてしまいました。

 

ジョイントマットを机の足に敷いて高さを調整。

 

 

続いて運び込まれたのは発電機。200Vが必要なのでかなりの大型です。

 

こちらでは売店の準備中、コーヒー、ポップコーン、カップラーメンなどを販売。

いずれはキッチンカーを呼ぶことも考えているそうです。

 

開場時間は午後4時を予定。車の誘導のためのベストを着用。

 

 

入り口付近には案内板を取り付けられました。

 

夕日に照らされてオレンジ色に染まる巨大スクリーン。

日が沈むとともに気温もぐっと下がり始めます。

 

今日最初のお客さんがやってきました

坂を下ってくる1台の車は、本日、最初のお客さんは群馬から。

お話を伺うとSNSで知って「なんだか面白そうだから」と来たそうです。

群馬と聞くと遠く思えますが、ドライブ好きなら苦にならない距離。

駐車場が会場なので移動が不要なのは、ドライブインシアターならでは。

 

準備も佳境、電源をつなぎこんでスイッチオン。

 

オペレータパネルが青く光り、白い光がスクリーンを照らします。

 

屋外のスクリーンに映し出されているとは思えない鮮明さに驚かされます。

 

映像は車の中に設置したパソコンから送られます。

 

音声はミニFMで流し、お客さんはカーステレオで受信します。

カワゴエ・マス・メディアでもイベントでミニFMをやっていたので懐かしい。

 

そうこうしている間に日はすっかり沈み、映像はより鮮明になってきました。

本日の上映の1本目は2010年のアメコミ調SFカーアクション『REDLINE』

2本目の『問いかける焦土』は、ドイツの巨匠ヘルツウォークが監督作品。

湾岸戦争の爪痕にカメラを向けた全13章のドキュメンタリーです。

 

案内もしっかり作り込んであって、意気込みが感じられます。

 

売店にて飲み物や食べ物を買い求めつつストーブの前でおしゃべり。

これから同じ時間を共有する仲間同士のような高揚感が会場を包み込みます。

 

いよいよ上映がはじまりました

38℃カフェの吉田さんが来ていたので少しお邪魔させていただきました。

 

フロントガラスを通して眺めるスクリーン。FMラジオで車内に広がるサウンド。

記者もドライブインシアターは初めてですが、映画館で見るのとは全く別物。

 

車の中なら室温も音の大きさも誰気兼ねなく好きなように調節できます。

シートを思い切り倒して寝転んでも文句は言われません。

 

だけど、車の中でDVDを見るのとは違い、みんなで同じものを見ている共有感。

これは今までにない経験でとても新鮮でした。

ドライブインシアターをやりたいという柿沼さんの熱意が理解できた気がします。

 

3日間の成果は、12月13日 6台( 9名) 、14日18台( 32名) 15日12台 (22名)。

目標は達成しませんでしたが、問い合わせが来ており手応えを感じているそう。

次回も開催したいと意欲を見せています。

今後も川越での上映があれば、イベントカレンダーでお知らせします。

ドライブインシアターの魅力は経験して見ないとわかりません。

次回、開催があればぜひお越しください。

 


Information

DRIVE IN THEATER 02 IN  KAWAGOE

【開催】2019(令和元)年12月13日(金)〜15日(日)

【会場】川越オフロードヴィレッジ(川越市中老袋295-5)

【主催】ドライブインシアターを作る会

【電話】090-9348-8219(柿沼節也 代表)

【HP】https://drivein.amebaownd.com/

【FB】https://www.facebook.com/drivein20000/

【TW】https://twitter.com/drivein20000