木桶に込められた22世紀へのメッセージ〜笛木醤油12代当主襲名式と創業祭〜

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取材・記事 白井紀行

 

20石の大桶づくり

寛政元(1789)年に創業して以来、木桶で発酵・熟成させる伝統的な醤油作りを守り続けている笛木醤油株式会社(川島町上伊草)。

木桶を使って醤油を作っているのは今や醤油業界の1%以下。木桶職人も全国で60人ほどで高齢化も進み、このままでは、木桶で醤油を作る文化が途絶えてしまう。その危機感から笛木醤油では一昨年から木桶づくりを始めています。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

未来へ繋ぐ100年プロジェクト「新桶初しぼり」完成〜 笛木醤油株式会社 12代目当主 笛木吉五郎様〜

 

一昨年に50年ぶりに2石の木桶を新調し、昨年もう一本製作。

今年は、高さ2m、直径1.8mという20石(3,600ℓ)の大桶の製作に取り組みました。

材料もこれまでの吉野杉からときがわ町産の杉と埼玉にこだわります。

8月30日(木)から9月8日まで10日を掛けて製作。

取材に伺った9月5日(水)は、側板を仮のタガで留めているところでした。

 

木桶は徳島と大阪から来た桶職人と笛木醤油の笛木社長と木桶部の6人で製作。

埼玉県新座市出身の伊藤さんは、親方の原田さんに弟子入りして1年半目。

徳島で6年修行したら埼玉に戻ってきて独立するそうです。

木桶の修理のために各地への出張も多い。

明治、大正の方が良い材料を使っていて昭和のものより痛みにくいとか。

 

表では日高産の竹を編み込んで本番用のタガを製作中。

右の方が徳島から桶作りに来た親方の原田さんです。

 

親方の指示で竹に荒縄を巻きつけ始めました。

 

できたものをタガの内側にはめ込みます。

木桶に付けると見えなくなるので、製作過程で始めて知る部分です。

 

タガを木桶に取り付ける。

 

木桶はこの時点では逆さま。上が底になっています。

 

タガを水を濡らして滑りを良くして締めていきます。

 

声を掛け合いながらながら、二人一組になって木槌を振る。

カンカンという音とともに、少しずつタガが下に降りて桶を締めていきます。

 

これはまだ1本目。全部で7本のタガを取り付けるのだそうです。

製作の過程は、笛木醤油のFacebookで紹介されていますので、ご覧下さい。

https://www.facebook.com/kinbuesoysauce/

 

襲名式&大桶完成披露

9月8日(土)10時から笛木醤油229年目の創業祭が行われました。

 

襲名式に先立って吉五郎記念ラベルが貼られた純米吟醸樽酒お酒の配布。

お子さんには玉力製菓のペロペロキャンディーをプレゼント♪

 

笛木社長自らが底板を木槌で打ち付けて20石の木桶がついに完成!

 

ぐるりと回して出来たばかりの木桶をお披露目。

 

三遊亭鬼丸さんの司会で襲名式が始まりました。

 

笛木社長が壇上で12代目笛木吉五郎襲名式の挨拶。

自身が納得できる醤油が出来たら吉五郎を襲名するのが笛木醤油の習わし。

「新桶初しぼり」でそれを決意したが醤油づくりはまだまだ道半ば。

「これからもお客様を笑顔にし、愛されるよう誠心誠意精進します」

と結びました。

 

筆を手に取り未来への向けてのメッセージ。

 

「子どもたち 13代目に 木桶をつなぐ」

木桶での醤油づくりを受け継いで欲しいという願いが子ども達へと託されました。

 

鏡開き

川島町の飯島町長、長年取引のある創健社の中島社長、岸本常務が壇上に。

鬼丸師匠とともに皆んなで「ヨイショヨイショ」の掛け声。

 

3回目の「ヨイショ」でパリンとフタが開き、襲名を祝いました。

 

13代目若旦那として笛木醤油の将来を担う空司郎くんの掛け声で「乾杯!」

創業229年&12代目吉五郎襲名&20石の木桶完成おめでとうございます!

 

色んなブースが立ち並んで賑やかです。

多くのブースが並ぶ会場。角煮丼やしょうゆ焼きそばを提供しいい匂い。

お客さんの行列も絶えず、お昼すぎには完売するほどの人気でした。

 

こちらでは、金笛醤油をはじめとする看板商品を特価で販売。

金笛醤油と我が家の煮物では欠かせなくなった「だし醤油」を購入。

 

笛木醤油を長年扱っている自然食品の創健社のブース

http://www.sokensha.co.jp/

このほか、ウラニワキッチンのコーヒー、福呂屋の醤油かき氷などなど。

多くのブースが出展し賑わいを見せていました。

 

醤油絞り体験

もろみに圧力をかけると醤油が絞り出されていきます。

 

絞った醤油は瓶に詰めてお持ち帰り。どんな味だったのでしょうか?

 

フレーバー醤油づくり

かつおぶしエキスやキムチ、レモン果汁などを加えたオリジナル風味の醤油づくり。

どれをどれを混ぜあわせようかと思案する姿がみられました。

 

木桶づくり体験ワークショップ

桶光(おけみつ)の宮崎光一さんによる木桶作り体験のワークショップ。

宮崎さんは長崎県の五島列島で桶屋を営む日本で一番若い桶職人です。

 

ワークショップでは、桶の仕組みや桶作りの工程を丁寧に説明されていました。

桶は底の方が窄(すぼ)まり、内側も外側も弧を描くという意外と複雑な形状。

何より板同士の擦り合わせだけで水が漏れないようする必要があります。

写真は側板の側面を専用の鉋(かんな)で削っているところ。

普通は鉋を動かしますが、桶作りでは側板の方を動かします。

 

タガを外して桶を一旦バラバラにします。

 

それをもう一度組み直す。最後の1枚を入れるのに結構苦戦。

木槌でトントンとタガを締めるとがっちりと組み上がります。

 

「タガを緩んだら今日みたいに木槌で締めることができるんですよ」

Q&Aでは桶に関する手入れや修理の方法などの質問がされていました。

 

100年先に向けたメッセージ

側板を手に木桶作りの質問に答える原田さん。

醤油には塩分を含むため側板同士は錆びないよう竹釘で繋いでいます。

 

側板の側面には未来に向けたメッセージが書かれています。

きっと、22世紀の世界で何代目かの笛木吉五郎さんが受け取ることでしょう。

 

川越高校応援団による演舞披露

大団旗を翻し、創業祭の最後を飾るのは「川越高校応援団」による演舞。

 

太鼓の音に合わせ力強い応援歌とともに演舞がスタート

 

メンバー紹介のところでは観客との掛け合いも

 

応援団の溢れるパワーを受け取った20石の木桶。

どんな、美味しい醤油が出来上がるのか、今から楽しみです。

 

醤油蔵見学ツアー

工場見学も行われていたので、参加してみました。

 

プーンと鼻をくすぐる醤油の匂い。いよいよ仕込蔵の中へと潜入します。

 

2階に上がるとずらりと並んだ木桶。直径は約2.7mで50石(9,000ℓ)の大きさ。

 

笛木醤油では常温で醤油を発酵熟成。

桶が置いてある場所で日の当たりや風の通りが違い味も変わってくるそう。

そんなことからも醤油づくりの大変さがわかります。

 

醤油を絞る装置。木桶からもろみを吸い上げてタンクの中へ。

バケツ2杯くらいの量を袋に入れて300枚ほど積み重ねる。

1日目は自重で、2〜3日目は油圧で絞り出していきます。

 

薄い板状のものは醤油を絞り出したもろみ。

食べられないことはないですが(笑)とおっしゃってました。

 

櫂(かい)突き体験

昨年、製作した2石の木桶を使っての櫂突き体験コーナー。

 

かき混ぜることで酵母菌に空気を送り込み発酵を促します。

 

子ども達は初めて触る感触を楽しんでいました。

 

木桶はまず塩水を満たして締め、もろみで麹菌を着け、生醤油を塗る。

これで木桶に麹菌が定着し醤油が作れるようになるそうです。

多くの人が木桶の完成、12代目の襲名、そして、創業229年を祝いました。

日本人の食卓に欠かせない醤油。

木桶による醤油づくりを未来に伝えられるよう、私たちも応援して行きたいものです。


INFORMATION

笛木醤油創業祭

【開催】平成30年9月8日(土)11:00〜15:00

【場所】笛木醤油株式会社本社(比企郡川島町上伊草660)

【HP】https://kinbue.jp/

【FB】https://www.facebook.com/kinbuesoysauce/

【TW】https://twitter.com/kinbue12

比企郡川島町上伊草660