町がミュージアム・建物が作品に!?これまでに無い感動体験〜川越蔵造りの町並み 音声ガイドツアー〜

一番街の蔵造りの町並みが続くなか、ひときわ目立つ「埼玉りそな銀行川越支店」

 

その敷地内にあるポケットパーク奥にトレーラが設置されているのをご存知でしょうか?

実はこれ、10月19日から始まった実証実験「音声ガイドツアー」のサービス拠点なんです。

 

音声ガイドツアーとは?

小江戸蔵里の空間デザイン、店舗の誘致、商品計画までをトータルプロデュースした丹青社。

詳細は → https://www.tanseisha.co.jp/works/detail/53857

歌舞伎座やのなどで音声ガイドシステムを展開するイヤフォンガイド社。

この2社が共同事業で、1月28日まで実証実験を行っています。

 

使い方は、サービス拠点に行って、音声ガイドアプリとコンテンツをダウンロード。

マップの番号がある地点に到着したら、アプリ(コンテンツ)の番号をクリック。

すると、スポットを解説する音声がスマートフォンから再生される仕組みです。

 写真は、コンテンツをダウンロードしている様子(イメージ)

音声ガイドアプリの名前は「MyGuide」https://www.artandpart.co.jp/equipment/app.html

美術館や博物館で作品の鑑賞を手助けする音声ガイドを「まち歩き」に展開する試み。

川越の街をミュージアム、建物を作品に見立てて、その歴史や見所の音声を聴きながら散策する。

観光体験をより豊かにし、街の理解を深める新たなコンテンツとなることが期待されます。

 

導入部の音声サンプルがアップされてますので、どんなものかまずは聞いてみてください。

日本語版 → 1.ようこそ川越へ   英語版 → 1. Well come to kawagoe

 

音声ガイドツアーに出発!

スポットは川越一番街、菓子屋横丁、大正浪漫夢通りを中心とした全31箇所。

地図はこちら → https://www.tanseisha.co.jp/resource/Tanseisha_NewsRelease_20171017_flyer.pdf

川越の街ミュージアムの最初の作品(建物)は、埼玉りそな銀行川越支店。

アプリから2番を押すと解説が始まりました。

「埼玉りそな銀行川越支店。ここは明治11年、第八十五国立銀行が誕生した場所です」

歌舞伎座で解説している方が話すので、ゆったりとした口調でとても聞きやすい。

でも、内容は既知のこと。川越をよく知る人にはちょっと物足りない気も。

そんな感想を頭に浮かべつつ次のスポットへ。

イヤホンの利用をお勧めします(歩きスマホはNG)

音声ガイド、これ面白いよ!

次のスポットは「くらづくり本舗(小林家住宅)」。音声ガイドの3番をポチッとな。

 

「屋根に注目して下さい。なんだか触ると痛そうなまつ毛のようなものが見えませんか?」

と音声ガイドが案内。その言葉に誘われるように自然と顔が上がる。

「まつ毛のような飾りは『カラス』と呼ばれておりまして魔除けの御呪いという説があります」

と解説と自分の目の前の景色がリンクを始めます。

 この飾りは江戸時代から明治にはよく見られたものだそうです(音声ガイドより)

明治26年に建てられ呉服屋だった歴史が話された後、再び、屋根に注目させます。

「軒の瓦の丸い部分をご覧ください『小林』という文字が見えますね、これは家の名前です。

そして、その横に並んでいる瓦の先端にも注目してください。

三つ巴の模様を水玉が囲んでいます(中略)ここには防火の思いが込められているのです」

三つ巴は水が渦巻く様子、水玉は水滴を表す

「屋根や瓦には家それぞれの思いが表されています。

どんな飾りになっているのか他の家の瓦にも注目して歩いてみましょう」

コンテンツを聞き終わって辺りを見回すと、見慣れた街がミュージアムになっている!

これ面白いです!

 

亀屋本店

「亀屋本店」では、看板に注目させた後、店の歴史を説明。

 

北側の袖蔵、そして、小さい壁の袖壁(うだつ)の解説。

川越大火の教訓、家や財産を守るため北側のガードをする役割であることを知ります。

 

音声ガイドは、袖蔵一階の少し厚くなっているところに注目させます。

ここは「腰巻」と呼ばれる部分。単なるデザインでなく、防火性、防水性を高める目的を持つ。

「必要なものを格好良く見せる川越商人の粋といえるでしょう」と結びます。

 砂利と土、漆喰を混ぜて積み上げた「たたき」という構造だそうです(音声ガイドより)

 

解説があるとこんなに分かりやすいなんて!

番号に沿って、マツザキスポーツ、カフェエレバードと進みます。

 

保苅歯科医院。丸広百貨店に使われており保岡勝也氏が設計したことは知られている。

だけど、玄関の上にあるステンドグラスに注目したことはなかったなぁ。

 何をモチーフにしているかは音声ガイドで解説

「亀屋栄泉」の見慣れた看板も音声ガイドを聞くと意味を持ち出す。

 

「陶舗やまわ」の屋根。鬼瓦を包むモコモコした影盛は、目立つのですぐ気づきます。

 

でも、ここにある高さ20cmほどの鍾馗(しょうき)像は、音声ガイド無しには気づかない。

見逃しても大丈夫!何度でも好きなだけリピートして聞き直すことができるのですから。

 

音声ガイドは歩みの方向を変え「養寿院の横丁(門前通り)」に入るように促します。

 

ここでは、川越の街を語るのに欠かせない十ヵ町四門前についての話がされます。

学校で昼下がりの授業に聞いたら間違いなく全員が眠りに落ちるような心地よい声。

建物の見所に加えて、歴史や文化の話も巧みに織り込まれた解説。

目の前に当時の光景が浮かび上がってくるようなイマジネーションの世界が広がります。

こういったものには人工音声を使いがちですが、それだと想像が刺激されません。

 

日本語版と英語版はちょっと違う

蔵造りは英語版ではStore House(Kuradukuri)。どんな風に訳されるかも興味深い。

「菓子屋横丁」の解説では関東大震災のことには触れていない。

日本語版と英語版で全て同じことをしゃべっていると思ったらちょっと違うようです。

 ちなみ菓子屋横丁は「Penny Candy Lane」と訳されています

海外から来た友人に川越の街を案内で苦労するのが、どう翻訳したらいいか?

単純に直訳するだけでは伝わらないことが沢山あります。

ここに歌舞伎や文楽で経験してきたイヤホンガイド社の強みが発揮されています。

  石畳の所々には飴玉を表すガラス(Glass Tile)が埋め込まれています

江戸時代には川越時代の中心地、もっとも情報が集まる大切な場所だった「札の辻」。

かつて、高札が掲げられたのがこの交差点の真ん中と聞くと景色が一変します。

高札とは幕府や川越藩が決めたお触れなどが書かれた木の板のこと

普段は特に気にも止めなかった丸い窓。

 

蔵の意匠を取り入れた「川越まつり会館」

 

同じく蔵の意匠を取り入れた「川越元町郵便局」

この3つの建物の共通点から川越の街づくりの特徴が垣間見られます。

 

街灯が素通しになっているのには意味がある。

 

「熊重酒店」の解説に合わせて屋根を見ると、ひょっこりと頭だけを出した時の鐘。

普段は気づかない建物の取り合わせで思わずシャッターを押してしまうのも面白い。

 

「近長商店」。へぇ、こんなところに布袋尊が乗っかっていたんだ。

 

「陶舗やまわ」から三軒続く蔵造りの屋根の高さの違いに気付かせる。

 

川越のランドマーク「時の鐘」。音声ガイドならではの演出が行われます。

 

案内に沿って時の鐘をくぐると、

 

参道にある足元の黒い敷石に注目させます。

「これはある漢字を表しています、さて何の文字に見えますか?」とクイズを出題。

 

答えは、境内の左手奥、そこに掛けられた絵馬をご覧ください。

 答えがわからずサービス拠点に聞きに来る人もいるとか

ここからルートは一番街と並行する裏通りへと進みます。

「中成堂歯科医院」や「旧山崎家別邸」を鑑賞したのち「原田家住宅」へ。

 

今は静かなこの辺り一帯が江戸時代から昭和の初めまで米問屋が軒を連ねていた。

ここでの取引額が埼玉県でトップ。当時は2階の窓まで米俵が積まれていた。

話を聞きながら頭の中には当時の賑やかな様子が思い浮かびます。

 

蔵造りの観音開きは見慣れたものと思っていましたが、原田家住宅の枠は6段。

その美しさ見事さに初めて気付きました。建物を既に作品として眺めています。

 

植木鉢にある鉄の蓋のようなもの。これについても解説がされていました。

 

大正浪漫夢通りへ

佐久間旅館、煉瓦造りの川越キリスト教会、亀屋山崎茶店と回って川越商工会議所へ。

 

大正浪漫夢通りには、以前、アーケードがあったこと。

平成7年に取り払われてて大正浪漫を合言葉に街づくりが行われてきたことが解説される。

 

レトロな建物を眺めながらのそぞろ歩きを楽しむ。

 

時の鐘を再建した川越を代表する大工の棟梁、関根松五郎が建てた「加藤家住宅」

 

ピッツァが自慢のイタリアンのお店「ウッドペッカーズ」

ついつい、店のメニューに目が行きますが、改めて蔵造りだったことに気づきます。

 

建物の両側や後ろは大谷石で囲んであるという珍しい蔵。

大正浪漫夢通りは何度となく通っていて、いつも目に入っているはず。

それなのに、意識に上がって来ていない。まだまだ見逃しているものがありそうです。

 

大正浪漫のなつかしい建物

音声ガイドを聞きながらの川越散策もいよいよ最後のスポット。

ドーム型の屋根を持つ和菓子の「いせや」、「シマノコーヒー大正館」。

 

白漆喰の「吉田謙受堂」、「大野屋洋品店」と連なる大正浪漫夢通りらしい建物を紹介。

 

1〜1.5分くらいの音声ガイドで31箇所のポイントを回っておよそ2時間。

街をミュージアムに見立てて散策するのは、最初に想像していた以上に面白かったです。

ツアーでガイドの説明を聞きながらとは、また違った感動が得られる体験でした。

 

音声ガイドツアーの今後

丹青社の企画開発センターの南 夏樹氏に音声ガイドツアーの今後を伺いました。

南さんが所属する部署は施設の空間プロデュースをしてきた丹青社において新規開拓部門。

それまで培ってきたノウハウを生かした新たな事業を開発するのが仕事です。

この音声ガイドの実証実験は1月28日までの予定。

その間の利用者数、男女、年齢、国内外の比率や利用者の声を集計。

問題点や改善点などを洗い出した上で、事業として始められればと話していました。

是非、この音声ガイドを体験して、その感動を味わってみてください。

取材・記事 白井紀行


INFORMATION

川越蔵造りの町並み「音声ガイドツアー」

【期間】平成29年10月19日(木)〜平成30年1月28日(日)

【場所】埼玉りそな銀行川越支店ポケットパーク内(川越市幸町4-1)

【営業】木・金・土・日・祝 10:00〜16:00(イベント時に休業あり)

【運営】株式会社丹青社

【HP】https://www.tanseisha.co.jp/news/info/2017/post-23698

【FB】https://www.facebook.com/audiotour.kawagoe/

川越市幸町4-1