本当に発泡スチロール!?川越が誇るアーティストヤジマキミオ氏の制作現場を取材
川越の街中を散策すると、精巧に作られた生き物たちが街のあちこちに出現し、カメラでパチリとその姿をおさめた方も多いと思います。
『ご縁』があるように『五円』に乗ったカメレオン。
地図を配るチンパンジー。
水の中ではなく木の上を泳ぐ鯉の群れ。
「フォトスタジオ マカロン」という名札を付けた白うさぎの足元を見ると・・。
『発泡スチロールアーティスト ヤジマキミオ』と書かれております。
そうです。これらは全て、川越出身・在住のヤジマキミオさんが手掛けた、発泡スチロールから作られたアート作品なのです。
作品を見た人達からは、あまりにも精巧過ぎて『本当に発砲スチロール!?』という声をよく聞きます。
そこで、ヤジマさんに作品を制作する工程の取材をお伺いしたところ、快諾していただき、約2ヶ月間に渡る取材をさせていただきました!
‖ 蔵造の鬼瓦作り~本体作業~
今回制作する作品は、3月18日より川越市立博物館で行われている『蔵・倉・くら -蔵造りと川越の町並みを知ろう-』という企画展に展示される、蔵造の屋根の上に構える実物大の鬼瓦です。
企画展の情報はこちら。
http://museum.city.kawagoe.saitama.jp/ippan/tokuten.html
今回は依頼者から鬼瓦の設計図や写真等の資料をいただけたそうです。
一番大きい発泡スチロールの高さは約180cm程だそうです。
今回の作品はかなり大きい為、写真にある発泡スチロールを幾つも接着剤で繋ぎ合わせて使うそうです。
左隣の般若の能面もヤジマさんの作品の1つです。
ヤジマさんが自ら重石となり、発泡スチロールを圧着させています。
繋ぎ合わせた発泡スチロールから、本体になる部分を大きく切り出していきます。
よく見ると、発泡スチロールの繋ぎ目が見えます。
切り出した本体部分に、更に丸みを出していきます。
蔵造の鬼瓦作り~細かなパーツ作り~
本体がかたち作られると、次は本体の周りを構成する細かい彫刻や瓦造りの作業に入ります。
彫刻のようになっている部分は、別で作成し本体に対し組み立てていきます。
今回は設計図を頂いているものの、発泡スチロールをどのように切り出し、組み立てていくかは、全てヤジマさんの頭の中にあるそうです。
迷いなく、熱線で発泡スチールをカットする姿は、the職人です。
切り口も美しいですね。
これは、鬼瓦のどの部分を構成するか分かりますか?
上の写真で切り出したパーツを本体に乗せると・・。
ひさしの部分になります。
ここから、写真にあるような瓦模様を作っていきます。
設計図があるとはいえ、瓦を1枚1枚組み合わせる本物の鬼瓦と違い、各構成はヤジマさんの頭の中です。
組み立てる構成が間違うことはあるのですか、という質問に
『あるよ~』
ということでした。
その場合は、また1から作り直さなくてはいけないそう・・。
蔵造の鬼瓦作り~更に細かな作業へ~
前回カットしていたひさしのパーツに、更に細かいカットが入り、瓦屋根が見事に表現されています。
写真と見比べてみましょう。
こちらは、設計図との比較。
小学生の頃、授業の一環で蔵造の街並みを写生したことがあります。
その時は、立体のものを平面の紙に映す作業でしたが、今回は逆に、平面の図面を立体に呼び起こす作業です。
目の前の鬼瓦を見ていると、まるで写真や設計図から鬼瓦がそのまま飛び出てきたような迫力があります。
細かいパーツ作りが終わると、次は『パテ塗り』という作業に入ります。
これが、パテです。ヨーグルトみたいですね。
パテ塗りは、発泡スチロールに細かな穴があるため、それをこのパテで埋めていく地道な作業になります。
ザラザラし、ところどころに穴がある発泡スチロールですが、
丁寧にパテを塗っていくと、
写真では若干分かり辛いのですが、このように表面が平らで綺麗な状態になります。
パテを乾かすのは1日かかるそうです。
塗っては乾かし、塗っては乾かし、何回塗るのですか?という質問に、
『気がすむまで!』
というヤジマさん。
納得するまでパテでコーティングをしたら、ヤスリなどで削っていくそうです。
パテを塗る前は、木綿豆腐のような発泡スチロールが、
パテを塗ることで絹ごし豆腐のようななめらかな表面になります。
このような細かい作業を見ていると、『神は細部に宿る』という言葉が思い浮かびます。
目立たない、一見しても気づかないところに、本当の技術とこだわりがあるということ。
2~3回塗ったらパテ塗り作業は終了ではなく、『納得するまで』というところに、職人の心意気が伝わります。
蔵造の鬼瓦作り~完成へ~
パテ塗りが完了したら、クライマックスの色付けに入ります。
色付け作業はかなりの試行錯誤を経て、現在はもちが良く、作業も早いウレタンの吹き付けにたどり着いたそうです。
パテ塗りが完了した作品に、業者がウレタンを吹き付けコーティングを施した後、色付けの工程に入ります。
初期はタウンページを1枚1枚作品に貼り、その上から色付けをしていたので、かなりの作業量だったそうです。
ウレタンを塗った鬼瓦に、ヤジマさんが更に何色ものスプレーを使い、色付けをしていきます。
生き物の作品もそうですが、ヤジマさん色が付けることで重厚感が全く変わりました。
発泡スチロールから鬼瓦へ、完成です!
屋根に上らなければ見ることができない鬼瓦を、今回は目の前で見ることが出来る機会にもなります。
『こんな大きなものが屋根に乗っているのか!』
『これが本当に発泡スチロール!?』
と2度驚くことが出来ます。ぜひ、川越市立博物館に訪れてみて下さい。
企画展の情報はこちら。
http://museum.city.kawagoe.saitama.jp/ippan/tokuten.html
ちなみに、ヤジマさんの今までで1番大きな作品は4メートルもあるそうです。
依頼ではなく、自分で作ってみたい作品はありますか?という質問に、ヤジマさんが考えている構想を教えて下さいました。
これが、いつか川越の街中に出現したら、あっと驚くこと間違いありません。
楽しみにしています。
取材・記事 kawa
INFORMATION
発泡スチロールアーティスト ヤジマキミオ
【HP】http://kerokero2016.g.dgdg.jp/
INFORMATION(本作品が展示中)
蔵・倉・くら -蔵造りと川越の町並みを知ろう-
【会期】平成29年3月18日(土)〜5月14日(日)
【会場】川越市立博物館(川越市郭町2-30-1)
【料金】一般200円 高校・大学生100円 中学生以下無料
【HP】http://museum.city.kawagoe.saitama.jp/ippan/tokuten.html