五穀豊穣を願う地域のおまつり〜老袋の万作〜
取材・記事 白井紀行
桜も早や散り始め散り始めた4月10日(日)。
老袋氷川神社で県指定文化財「老袋の万作」が行われました。
現在は、4月11日※の春祈祷に、神社内に桟敷を建て奉納される。昔は特別な舞台は作らず、農家や薬師様の座敷を借りて行ったという。もともと明治25年頃比企郡から伝えられた下妻踊りを中心とする踊りであったが、その他段物も盛んに演じられるようになった。段物には笠松峠、お半長右衛門、小栗判官などがある。また、茶番にはお玉ヶ池などがある。豊年万作を願う五穀豊穣の芸能である。 (案内板より)
※現在は、4月の第二日曜日となっています。
境内には立派な舞台が設営されていました。幕まであって本格的です。
ずらりと並んだ主賓の方々、氏子総代の挨拶に続いて議員さんの挨拶。
本日の祭典のプログラム。午前中には神儀が執り行われました。
幕が開き、最初の演目の始まり〜
神楽奉納 三番叟 清河寺神楽師
さいたま市清河寺神楽師による三番叟(さんばそう)
能の「式三番」という演目から派生した踊りで五穀豊穣を祈るものだそう。
千歳(若者)、翁(おきな:老人)の二人が軽快な小太鼓に合わせて踊ります。
そして、黒いお面を付けた黒色尉(こくしきじょう)による扇子の舞。
最後に三番叟が登場して舞を奉納。
三番叟はとても有名な舞だそうですが、いかんせん記者の知識がありません。
演目について、少し解説があると理解が深まって助かりますね。
演目が終わって幕が引かれます。
万作下妻踊り(第1班)下老袋子供会
子供たちが舞台に上がります。一斉にシャッターを押す親御さんら。
練習を重ねた下妻踊りが披露されます。
次の出番を待つ第2班の子供たち。1班の踊りを真剣に見ています。
新舞踊 夫婦一生 関根輝子・天沼愛子
女性二人による新舞踏。
「夫婦一生」の曲に合わせて踊りを披露。
万作下妻踊り(第2班)下老袋子供会
今度は第2班による下妻踊りの披露。
踊りをしっかりと覚え、練習の成果が発揮されていたと思います。
昔ながらの村まつりという雰囲気。いいですねぇ。
かつては満開の桜の下で行われていたそうです。
万作芝居 日高川お半長右衛門の道行
「老袋万作保存会」による万作芝居。
初めて旅に出る若い娘と祖父。娘は疲れて一歩も歩けなくなってしまう。
祖父は娘を置いて宿屋に向かってしまう。
「駕篭かき」が登場。お客さんは未だ見つからないようです。
弁当を食べ始める二人。
卵焼きと云ったのが沢庵、かまぼこと云ったのが白菜の漬け物。
そんなやり取りのあと、どこからか甘い匂いがするのに気づきます。
そのやり取りをみながら声を上げて笑う子供たち。
娯楽が少なかった昔は、こういった芝居が何よりの楽しみだったのでしょう。
近くに落ちていた道具を見て、釿(ちょんな)、カンナだとやり取り。
やがて、娘(オンナ)を見つけます。
いやがる娘を力づくで駕篭に乗せ、遊郭に売り飛ばそうとする二人。
そこへ長右衛門が登場。
侍相手に「駕篭かき」がかなうはずも無く。
逃げ出そうとお互いに逆向きに進もうとする。
この後、今度は向かい合わせになるというお約束があって退散。
長右衛門はお半を探していて会いにきた。
女房になってくれと、誓いの印として簪(かんざし)と印籠を交換。
旅を続ける二人の元に、駕篭かきが助っ人を伴って登場。
チャンバラが繰り広げられ、もちろん、長右衛門の勝利。
無事にハッピーエンド♪
新舞踊 雪の浜町河岸 関根輝子
続いての演し物は、曲に合わせての踊りの披露「雪の浜町河岸」。
観客にはお酒やお菓子が振る舞われます。
神楽奉納 八雲神詠 清河寺神楽師
八雲神詠(やくもしんえい)とは、いわゆる八岐大蛇(やまたのおろち)伝説。
八人の娘のうち七人が大蛇に呑まれてしまい、最後の一人。
素戔嗚尊(スサノウノミコト)の作戦でお酒を調合する。
お酒を見つけた八岐大蛇はそれを飲み干す。
すっかり酔っ払い、眠ってしまった。
この隙に退治しようとするが足がすくんで動かない。
素戔嗚尊(スサノウノミコト)が八岐大蛇を退治(こらしめる)。
娘を呑まれた恨みを晴らすためお仕置き。
素戔嗚尊(スサノウノミコト)に娘を嫁にもらってくれないかと持ちかける。
了承され、嬉しさのあまり舞を踊る。最後は流れをダイジェストで披露。
神楽奉納 稲荷山 清河寺神楽師
稲荷大神と従者の弓のやり取り。
笛のフレーズに川越まつりのお囃子に似た箇所があった気がしました。
こうして、午后1時から4時半までの長丁場。
様々な演目が披露され閉会の辞で、今年の「下老袋の万作」は幕を下ろしました。
INFORMATION
老袋の万作
【日時】平成28年4月10日(日)13:00〜16:30頃/毎年4月の第2日曜日開催
【場所】老袋氷川神社(川越市下老袋732)