生きものを育み雁の舞う田んぼを目指して〜かわごえ里山イニシアチブ〜
寒さもひと段落して日中は暖かさを感じる季節。
3月18日(土)「かわごえ里山イニシアチブ」による米作りが始まりました。
同会代表の増田氏による開会の挨拶。
この「生きもの育む田んぼプロジェクト」は、UNDB-Jの連繋事業として認定を受けた活動です。
http://undb.jp/authorization/3515/
場所は国道254号線の福田交差点近くの「プロジェクト田んぼ」。
同会ではここを「初雁の里」と名付け、有機稲作に取り組んでいます。
‖ 田んぼ作りの土台となる土作り
本日の作業は土作り。大豆粕とおからなどを発酵させて作った堆肥を撒きます。
軽トラックから堆肥を下ろし、
均等に撒けるように竿を立てて目印にします。
こちらが堆肥(民稲研1号)。
大豆粕とおからを発酵させたもので、鯉の餌をもっとマイルドにしたような臭い。
「食べれるのかな?」とそんな声が上がるくらい何というか美味しそう(笑)
目印の竿の間に全員が並び、
手の隙間からこぼすような感じで撒いていきます
こんな感じで土にばら撒かれます。
葉っぱは4月の開花が楽しみなストロベリーキャンドル(緑肥)。
最初の二反分が撒き終わりました。
残りの二反も同じ要領で。
春の日差しがポカポカと暖かく、30分ほどで全て撒き終わりました。
袋やバケツなどを片付けて
活動の始まりを記念して集合写真。
ドローンの試験飛行
メンバーの方が今年の米作りで使えないかと持参した「トイドローン」
プーンと可愛らしいプロペラの羽音とともに浮遊。
空撮もできるので、今年は、空からの生育状況がお届けできるかもしれません。
‖ 午後の授業
午後は、北部ふれあいセンターに場所を移しての座学です。
今年から新しく参加される方の自己紹介。
茨城県で障害者スタッフとともに野菜作りをしている「ごきげんファーム」
今年から米作りに取り組むため、川越で稲作を学びます。
今年からマコモタケと一反の実験用の田んぼに取り組む林さん。
新年会のときにみんなの意見をまとめた「マインドマップ」
納豆、味噌、草木染め、米粉、エコツアー、井戸掘りプロジェクトetc
この中から新たな活動が生まれていきます。
稲の育成に関する研究結果(発表)
東洋大学 小瀬教授による研究結果の発表。
民間稲作研究所が提唱するポット苗、植え付け1本、間隔30cmのA区。
これとマット苗、植え付け本数、間隔を変えた3区との比較結果です。
植え付けと収穫方法。他の区の影響を受けない中央付近を調査対象とします。
途中経過、平均草丈は7月21日の時点では植え付け間隔の短いD地区が高い。
気温と降水量も記録。お盆までは雨量が少なく高温。それ以降は多雨でした。
収穫は9月11日行われました。各区、中央付近の1m四方に入る株で調査します。
代表株について、籾の数を一粒一粒計数、計量。
民間稲作研究所が提唱するA区の方式が最も収量が高いという結果が得られました。
その後は、「田んぼカメラ」で記録した画像。
http://camera.hkose.comでも見れます
動いたものに反応するトレイルカメラの画像。
夜にはアオサギやアライグマの姿も。
有機稲作ポイント研修
NPO法人 民間稲作研究所の稲葉光圀理事長による有機稲作ポイント研修。
「田んぼ10年プロジェクト全国集会(2/18開催)」でも同研の名前を多く目にしました。
第一部は、有機農業をやっている立場からの注意喚起
テーマは「TPP崩壊後の食の安全と循環型農業のすすめ」。
農薬(ネオニコチノイド、プリンス)の影響や懸念事項などの最新情報を紹介。
特にネオニコチノイド農薬は国内出荷量と子どもの発達障害に相関関係が見られます。
血液脳関門と呼ばれる脳へ有害物質を侵入する仕組みは20歳を過ぎないと完成しません。
そのため、子供には化学物質の影響を大人よりも受けやすくなっています。
ネオニコチノイドは農薬だけでなく、殺虫剤などで日常生活でも使われています。
近年発生している衝動的な事件にも触れ、農薬が鎮静効果を阻害しているのではと推定。
米・麦・大豆など無農薬・有機栽培、そして販売ルートを長期的な視野でと訴えました。
生物の多様性を育む有機稲作
第2部のテーマは「生物多様性を育む有機稲作」です。
有機水田の基盤作りは土作りと水田内のビオトープ。
藁が残っていると稲が根腐れを起こすので、細かくして微生物によって分解させておく。
ビオートーブは水を温めることでコナギの発芽を促し、代掻き時に浮き上がらせる。
稲の青立ち現象や排水路に魚道を作りコウノトリなど飛来する仕組みもある。
農薬や化学肥料の使用でエサ動物となるユスリカが減ってしまっている。
そのため、生物多様性が失われツバメや赤とんぼ田んぼを見かけなくなってしまった。
5月までにはアマガエル、クモ、ヤゴなどがユスリカをエサとして繁殖。
その成虫や子どもが6月から出てくるカメムシやウンカを食べるというのが本来の姿。
農薬を使うと益虫がいなくなり、却って害虫が増えてしまうのが現状である。
民間稲作研究所では種子伝染病害虫を防ぐため温湯消毒を行っています。
これは、病原微生物が60度で超えると死んでしまうことを利用。
60度150リットルのお湯に10kgの網袋に4Kgの種籾を2個に小分けし7分間付ける。
処理後は20度以下の冷水(流水を推奨)に晒します。
種モミに入っている発芽抑制物質が壊れ芽が出やすくなるという効果も。
また、農薬のように耐性が生まれず永久に使える手法です。
苗づくりでは研究の結果、ポット苗の一粒植えが最も収穫量が多いそうです。
一本の茎から出る分蘖だと葉がお互いに光を遮らないように生えるからだと考えられます。
苗床はハウス栽培でなく有機培養土を詰めた育苗箱の上に並べます。
そのあと、3往復してたっぷり潅水。シルバーラブで保温と乾燥を防ぎます。
ここからは除草問題をどうやって解決するかの話になります。
田んぼに入らずに稲を育つには、代掻きと水位の維持がポイント。
まず、田植え30日まえに代掻きをして水を温め、コナギなどを発芽させてしまう。
2回目の代掻きで泥をコナギなどの種にかぶせてしまう。その後、20〜25日水位を保つ。
これで抑草が実現できます。
この抑草技術を前提とした肥料。大豆を始めとする有機資源を生かした肥培管理。
市販の大豆やなたね油粕は遺伝子組換えなので、民間稲作研究所では自家栽培。
大豆油粕だけだと、りん酸やカリが不足するので補充したのが、民稲研1号〜3号です。
時期によってこれら肥料を使い分けます。
民稲研1号の効果(収量)を調査したもの。
平均的な総モミ数29,000に対して、32,000が見込めるのではとのこと。
抑草技術の基礎知識。
それぞれの雑草の発芽条件などをもとに除草ではなく抑草へと発想を転換。
この雑草の発芽の性質を利用して代掻きや水位調整を行い、雑草の除去と発芽を抑制します。
コナギであれば表層5mm以内で、光が必要、有機酸で根端細胞が傷つきやすい。
つまり、表層を酸欠状態にし、トロトロ層で覆い、有機酸を発生させると発芽しません。
また、アミミドロ(微生物)が発生すると水面を覆い発芽を抑制。
水質浄化、さらに死滅した時は稲の養分となる。
このように農薬や化学肥料を使わず生物多様性を巧みに利用した農法。
この一年、その様子を追いかけていきいければと思います。
そして、ぜひ、「初雁の里・たんぼプロジェクト」にもご参加ください。
次回は、4月22日(土)を予定しています。
https://www.facebook.com/events/391668021201898/
取材・記事 白井紀行
INFORMATION
かわごえ里山イニシアチブ(有機稲作ポイント研修)
【日時】平成29年3月18日10:00〜16:00
【場所】プロジェクト田んぼ(川越市福田310付近)
【FB】https://www.facebook.com/kawagoesatoyama/