田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト全国集会 in 川越〜第一部エクスカーション〜

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損なわれた田んぼの生きものの多様な世界を再び取り戻す。

そのための様々な取り組みの受け皿となる「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」

その全国集会が平成29年2月18日にウェスタ川越で開催され、約150名もの参加がありました。

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2010年に愛知で開催された生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)

損なわれた生物多様性を回復するため10年間に行う20の具体的な目標が採択されました。

ラムサールネットワーク日本では、その達成に向け水田の生物の多様性に努めています。

日本各地の団体・個人が水田の生物多様性の向上に目指し取り組む数多くのプロジェクト。

その発表や情報交換、交流を行う場がこの集会。

ラムサールネットワーク日本とかわごえ里山イニシアチブとの共催

全国集会は、エクスカーレション、基調講演と報告会、ポスターセッションの3部構成。

その模様を2回に分けてお届けします。

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‖ 第1部 エクスカーション(体験型 見学会

午前中に開催されるエクスカーション。

「雁(かり)」にまつわる地と田んぼ10年プロジェクトに取り組む福田の田んぼを訪ねます。

雁をモチーフとした素敵なロゴができました!

30名の募集枠が満員になる大盛況。

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車中では、ラムサールネットワーク日本の呉地代表から、川越の雁にまつわる話し。

市の鳥として制定されていますが、いまは市内では見らなくなりました。

生物多様性を達成した証として田んぼに雁の姿を取り戻したい。そんな思いが込められています。

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‖ 松本醤油商店

最初の訪問地は、川越で250年以上続く老舗の蔵元「松本醤油商店」

ホームページ:http://www.hatsukari.co.jp/

代表取締役の松本公夫社長にご案内していただきました。

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250年前の店蔵(ガラスアートblue moonが営業)の横を通り抜ける。

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醤油蔵に近づくにつれ醤油の匂いが鼻をくすぐります。

「私たちは慣れていますが、ずいぶん遠くからでも香るそうです」と松本社長。

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松本社長が手にしているのは、醤油の原料。

松本醤油商店で使うのは「大豆」「小麦粉」「塩」「水」のみで他には何も入れません。

また、熱を加える製法であれば半年でできるが、ここでは、自然のまま1年かけて造ります。

「時代遅れの会社ですが、美味しいものを作りたい」

こちらが大豆と小麦から糀(こうじ)を作る部屋、 糀室(こうじむろ)

温度や湿度を厳重に管理しながら3日かけて糀(こうじ)を仕込みます。

今日は仕込みが無いので中を見せていただきました

いよいよ醤油蔵へ。

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天保元(1830)年にできたので、天保蔵と呼ばれている醤油蔵。

鴉山神社など寺社に囲まれていたお陰で川越大火を免れ、当時の建物が現存しています。

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ずらりと並ぶ仕込桶もこの蔵と同時に作られたもの。

建物には微生物(酵母菌や乳酸菌)が棲み着いていて、その働きで醤油ができる。

微生物を守るために建物をそのまま使い続け、復元工事で維持していくのだそうです。

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大豆、小麦粉、麹、そして塩水を桶に入れて1年間醗酵熟成させるとできるのが醪(もろみ)。

それを絞ると醤油になります。

「はつかり醤油」は、塩水の代わりに1年目にできた醤油を入れて、更に1年間の再仕込み。

これでいい甘みや旨みが増すのだそうで、松本醤油で販売する8割がこの再仕込み醤油です。

はつかり醤油の醪(もろみ)を試食させていただきました

こちらが醪(もろみ)から醤油を絞る「舟」。

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布を醪(もろみ)を入れる。これを積み重ねていき圧力をかけて醤油を絞り出します。

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醤油糟は群馬の酪農家に送り、牛の餌に混ぜて飼料としています。

大豆、小麦粉、麹、水、塩しか使っていないので牛にも安心して食べさせられます。

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大豆や小麦も地元のものを使っていきたいが、農家さんが辞めていく現実もある。

「自分で畑を作って育てることも今後考えていかないと」

原料がなければ美味しい醤油は作れない。そんな当たり前ことを改めて認識させられました。

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敷地内には酒蔵もあって、30代の若者5人が米作りから取り組んでいます。

ホームページ:http://www.kagamiyama.jp/

平成12年廃業したのを19年に復活

皆さんお土産として醤油や醪(もろみ)、ドレッシングなどを買い求めていました。

記者もお漬物と醤油(こうじ)を購入しました

ここからは、蔵造りの街並みが続く一番街を徒歩観光。

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‖ 川越まつり会館

やってきたのは「川越まつり会館」

ホームページ:http://www.kawagoematsuri.jp/index.html

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川越まつりをスクリーンで見学し、係員の解説を聞く。

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いま、展示されている野田五町の八幡太郎の山車。

「雁(かり)」が四方幕に描かれ、彫刻にも彫られています。

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‖ 初雁城と初雁の杉

川越城の別名は「初雁城」。

太田道灌が築城祝いの宴を開いたときに「初雁」が鳴いたことが命名の謂れとされてます。

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初雁城の近くには、三芳野神社(現在工事中)があります。

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三芳野神社の裏手には2代目の初雁の杉の石碑、3代目の初雁の杉が育っています。

毎年同じ時期に北から初雁がやってきて杉の真上で三声鳴き三度回って南に飛び去った。

そんな故事が川越の七不思議として伝えられています。

1代目の杉は石碑の後ろにあったのではと呉地代表

川越市立美術館の横を歩いて次の目的地へ。

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‖ 吟撰米屋「結の蔵」

五ツ星お米マイスターが厳選するお米販売の専門店「結の蔵」。

金子商店が12月14日にリニューアルオープンしました。

川越の街並みに合った蔵の外観

中に入ると全国から取り寄せた50種類のお米がずらり。

全国にお米は600種類、しかも毎年新しい品種が出ているとか!

「人によって柔らかめ、固めが好きという好みがあります。

これは水加減で調整するのではなく、食感が固めになる品種を選んで下さい」。

と語るのはお米マイスターの金子真人氏。

「チャーハンに魚沼産のコシヒカリは向かない、食材やライフスタイルに合わせたお米を選ぶ」。

短時間の間にもお米に対する熱意がビシビシと感じられます。

ふゆみず田んぼで雁(かり)を呼び寄せたらそんな願いも託されました

ゆっくりとお米を選びたい子育て世代のお客様ためにキッズスペースが設けられています。

ここから精米工程が見られます

ずらりと器械がならぶ精米室。

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蔵の外観を持った店舗は木造で、間伐材を使った木の壁や柱が目に付きます。

日本では昔から、山奥、里山、人里とあリ、里山が自然と人との境界となっていた。

しかし、今は里山の手入れが行き届かなくなりその境界が曖昧になってきた。

そのために、里に猪がでてきて被害を与えるようになってしまった。

使われる量が減った間伐材を少しでも利用して防げればという考えからなのだそうです。

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まず、選別機で玄米のなかから不純や未成熟なものを取り除いて精米機にかける。

精米が終わったら3枚のふるいにかけ、さらに後にある青い4台のカメラで一粒一粒をチェック。

品質の確かなものを安心して美味しく食べていただきたい。

そんな思いからのこだわりの精米方法「極み・トリプル精米」は必見です。

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ある企業から依頼されて開発中のブレンド米を試食させていだきました。

手にしているのは、100本近く試して見つけた絶対にくっつかないしゃもじ

A、B、Cと3種類あって、ベースは、いずれも、はえぬき195g、にこまる90g。

石川、島根、北越後のお米を15g入れたもので、それ以外の条件は全て同じです。

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「あっ、全然違う!」そんな言葉が口々に飛び交います。

全体の5パーセントに過ぎないお米が匂い、食感、甘みが全く違うものに感じさせます。

お米の品種改良には時間がかかるけど、ブレンドにすればどんな注文にも応えられる。

一口の中に、美味しいお米を知り尽くしてきた金子さんの一端を垣間見た気がしました。

その違いに気づいてくれたことに嬉しさが止まらない金子さん

さらに詳しくは、ホームページをごらんください。 http://yuinokura.jp/

 

‖ 初雁の里へ

最後の目的地は、かわごえ里山イニシアチブの拠点となる福田の田んぼです。

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ここからは、田んぼ作りの指導をして下さっている高梨さんが案内します。

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田んぼに目をやると何やら青い芽が吹き出しています。

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昨年、緑肥として蒔いたストロベリーキャンドルの芽。

4月頃にはイチゴのような赤い花でいっぱいになるそうです。

川越の有名な豆腐屋さん「小野食品」のおからで作った肥料も使います

この辺りを「初雁の里」と名付け、全面的に農薬、化学肥料を使わない稲作をする。

そのモデル集落にするプロジェクトが今年から始まります。

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初雁の里でもっとも課題としているのは田んぼに不可欠な「水管理」

除草剤を使わない稲作には、7cmの水深をキープすれば良いことは実証済み。

しかし、今は入間川から水に頼っているため、初夏の渇水に悩まされています。

そこで、今年の4月から井戸を掘ることで解決を図ろうと計画しています。

水にこだわるもうひとつの理由。

それは、「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」のテーマ生物の多様性にあります。

 

川越市の水道水は県水で、さいたま市の大久保浄水場で取水され川越に送られます。

川越から出た田んぼの用水、家庭の下水、工場排水は入間川から下流の荒川へと流れ込む。

http://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/jogesuidobu/jigyonoannai/josuidojigyo/dokokarakuruno.html

つまり、川越から汚れた水を川に流すと、それが取水されて再び川越に戻ってくるわけです。

田んぼの水で多くの生物が育まれているというのは、その水が安全なことを表すバロメータ。

田んぼに限らず自分の使った水はきれいして川に返す。

そういったことは、我々の普段の生活の中でも心がけていかなければなりません。

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田んぼの一角には、東洋大学の小瀬先生が設置した「田んぼカメラ」。

高梨さんの自宅には、雨量と風力を図る測定器も設置され大学に送られています。

http://hkose.com/seasonShots/

初雁の里は、IoTも積極的に利用(1時間に1回撮影)

偶然にも私たちが立ち寄った時間(12:00)に撮影されていました。

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目の前に広がる初雁の里の田んぼは7反。

その一部には、川越の新たな名産とすべく「マコモ」も栽培されます。

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溝さらえの終わった用水路。

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田んぼの一部にはビオトープも設けて、より生物が棲み易い環境も整えます。

ビオトープには水温調整の働きも

‖ウェスタ川越へ

ウェスタ川越の帰路、高梨農園で育てられた耕福米を使ったお弁当で昼食。

エクスカーションで見識を深めた後なので、また、格別の美味しさ♪

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雁(かり)をキーワードに醤油やお米、田んぼを巡ったエクスカーション。

ひとつひとつはいずれも更に掘り下げて学び体験したいものばかりでした。

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次回の第2部、3部はただいま絶賛編集中!

金曜日の配信を楽しみにお待ち下さい!!

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取材・記事 白井紀行


INFORMATION

田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト全国集会 in 川越

【日時】平成29年2月18日 9:15〜18:00

【場所】ウェスタ川越(第1・2活動室)

【主催】NPO法人 ラムサールネットワーク日本 http://www.ramnet-j.org/

    かわごえ里山イニシアチブ https://www.facebook.com/kawagoesatoyama/

【協力】松本醤油商店 http://www.hatsukari.co.jp/

      川越まつり会館 http://kawagoematsuri.jp/

    吟選米屋 結の蔵  http://yuinokura.jp/

    高梨農園(耕福米ブログ) http://blog.goo.ne.jp/koufuku_mai

川越市新宿1-17-17