その後のレレレ~小島 大補さん(「レレレノレコード」 代表)~

 

「そろそろ、僕を取材しませんか?」

声をかけてくれたのは、今年4月に6年目をむかえたレレレノレコード代表兼店主の小島大輔さんでした。(以下大ちゃん)

 

このサイトでは、お店や事業を始めたばかりの方々にもお話を伺い、ご紹介してきました。

その後、取材した方のお店に足を運んだり、SNSで発信している様子を見て、

またいつかインタビューできればいいなと思っていました。

そんな気持ちを見透かされたような申し出にびっくりしつつ、お会いしてきました。

▼前回のインタビュー記事はこちら

昭和の街の秘密基地に~小島 大補さん(「レレレノレコード」 代表)~

大ちゃんといえば、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、昨年4月、SNSで店が4周年を迎えた投稿とともに、新型コロナウイルス感染症に罹患し、入院療養をしていることを実名で公表。

症状や入院にいたるまでの様子はNHKのインタビューで詳しく語っています。

「感染者 実名で証言 その思い」

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/testimony/detail/detail_08.html

 

オープンから夢中で走ってきた4年間、思いもよらぬ年になった5年目、そして世の中の事態は変わらず突入した6年目の今年。

オープンから現在までの“振り返り”と“これからをお伺いしました。

 

当時はちょっと珍しい業態

「始めた頃は、飲食メインの居酒屋をやるのとはわけが違うので、食べていけるのかな?という不安はありました。細かく事業計画は立てていたわけじゃなく、資金がこれだけ減ったらまずいという感覚はあって、そのヨミはある程度当たっていたのかもしれません。

僕たちの世代は景気の良い時代を知らないんです。だから最初の生活水準をそんなに高く考えていなかったし、今でもそうです」

 

レコード店兼カフェバーという当時では、ちょっと珍しい業態だったレレレノレコード。

ユニークな名前、蓮馨寺のすぐ目の前という立地、昨今のレコードブームの再燃もあり、注目を集めるようになりました。しかし、店名だけが大きくなり独り歩きしているような感覚におちいることもしばしばあると言います。

 

「今何が課題かというと、言い方悪いかもしれないけど、レコードも飲食も片手間にやっている感じがするし、自分的にどっちも全力でやっていない気がします。(レコード屋と飲食業を)二股かけている感じがして、どちらからも不満が聞こえてきそう(笑)でも、レコード屋としてなめられちゃいけないと思っているんです」

 

片手間、不満という言葉が口をついてでるものの、レコードもカフェバーもどちらも手を抜きたくない、もっと高みを目指したいという、気持ちの裏返しです。

店頭に置いてあるレコードはごく一部。実家にも多くのレコードが保管してあるとのこと。大きな倉庫を借りて、そこを倉庫兼店舗にできたらという構想も。

 

「僕自身、ギャンブル性がそれほどないので、そんな無理しちゃっても・・という部分もあります。大きくしたところで、結局どちらも愛しきれなくなりそうなので、お店自体はもうちょっとこのままで限界までいってみようかな?と思っています」

 

バイトもお客さんもユニークな人たち

右腕になるような人を雇って、お店の一部を任せるということはないのか聞いてみたところ、それなら誰かに雇われている必要はなく、自分でお店を持ってお互い協力していけばいいし、変に上下関係ができるのは避けたいとのこと。

「お店のバイトさんでも、どっちが偉い、ということが出ないようにしています。みんなと仲良くできるというのは基本ですが、違う生き物なんじゃないかって思うくらい、やれることが全然違う人に働いてもらっています(笑) これは、唯一うまくいっているところかもしれない。もちろん現場では色々あると思いますけどね」

 

ところで、最初のインタビューでは、レコード、音楽好き、何かやりたい人たちが集まるような場所にしたいと「昭和の街の秘密基地に」というタイトルを付けました。表通りに面しているお店ですが、入りにくいと言われるのは相変わらずのようです。

店内の様子が分かりにくいことに加えて、一人飲みのお客さんが多いためか、マニア向け、常連向けと思われるようです。お客さんの中には、やっと入れましたという方もいるとか。

 

「あえて、誘いはしないけれど、興味をもって入って来た人には、いてくれても大丈夫なように話しかけています。秘密基地=誰でも来られる“居場所”ってことなんですよ・・・あ、入り口のドアが固いのは直しました(笑)」

 

名前も知られ、長くやっていれば、それなりに周囲からの目も集まるもの。

オープン当時、どことなく少しやんちゃなイメージがありましたが、仕事をしている大人として後輩達の見本となるよう、商店街の集まりにも積極的に参加して、店主としての責務も果たしています。

通りに観光客も増えましたが、お店のスタンスを変えることなく、また周囲と比べられることなく、やれてきているのも自画自賛(!)ポイントとのこと。

「他のお店がやっているから、うちもやろうとか全く思ってないんです。まあ、こういうお店が一つあってもいいでしょ? でも、案外5年後には、たこ焼き売っていたり、芋とか焼いているかもしれない(笑)」

 

新型コロナウイルス感染、そして

順調にお店を経営してきた大ちゃんですが、前出のとおり、昨年4月に新型コロナウイルス感染症に罹患し入院。当時は緊急事態宣言も発出、有名芸能人の訃報が相次ぎ、世の中を濃い霧のような不安が覆っている頃でした。

レレレノレコードのSNSで、入院療養していることを公表ののち、お店の経営を救うべくクラウドファンディングを立ち上げることを決意しました。

 

「入院したことを公表した方がいいという声があり、SNSで発信しました。このままでは噂が独り歩きし、風評被害も広がりそうで、とにかく店の将来も心配だった。

実はクラウドファンディングを利用するのは、かなりの葛藤があったんです。でも、お金の面で助けになる。それと、ちょっといやらしいかなと思ったけど、僕もレレレも大丈夫だよというメッセージを届けたかった。不安やマイナスなエネルギーを転換して、攻めていかないとダメだと思いました」

 

【コロナからの復活】小江戸川越のレコード喫茶・レレレノレコード(現在は終了)

https://camp-fire.jp/projects/view/266037

 

入院中の二週間、クラウドファンディングの概要をまとめたり、ネットショップサイト構築、テレビの取材を受けたりと、少々忙しい毎日となりました。大ちゃん曰く、病状の不安はあったけど、閉鎖空間にいながら、自分の仕事が持て生きがいをあらためて実感できたとのこと。

しかし、営業再開には慎重にならざるを得ませんでした。

 

「5月中旬に緊急事態宣言が明けましたが、6月まで店を開けるのを我慢したんです。無理して(お店を)やっていても、政治的メッセージになりそうだし、休みすぎてもそれはそれで良くない。なにより、もう一人、ここから感染者を出すのは避けたかった。スタッフのテンションと、そして世の中の状況を見ながら開けました」

 

休業期間中に開始したクラウドファンディングは160名もの支援者をあつめ(サイトでは129名)、目標額は無事達成。多くの期待と応援を受けて、お店を続けていく自信にもなりました。

 

8月には支援のお礼も兼ねて、蓮馨寺で小さなイベントを開催。みんなのストレス解消に一役買いました。秋からはゆるやかに日常に戻ると思いきや、今年の年明けにまたもや緊急事態宣言が発出されました。

2月のこんなツイートが、そのときの大ちゃんの心情をよく表していると思いました。

https://twitter.com/rererenorec/status/1356598529091756040?s=20

 

さらに4月末には「まん延防止等重点措置」に川越市が加えられ、酒類の提供ができなくなりました。

お店のウリの一つであるカレーのテイクアウトや物販にも力を入れていましたが、お客さんの数も日々まばらに。

お酒を提供できないことから、一か月ほど休業することになりました。

さぞかし悔しい思いをしたのではと思うのですが・・・

 

「オープン以来、自分自身を世話する余裕がなく、歯医者と髪の毛を切るくらいで精いっぱいだった。だからこれを機会に鍼などに通い身体のメンテナンスに勤めようと思いました。お店の仕事が少なくなった分、家事を引き受け、家庭内で労働力を提供してました」

 

前を向く、そしてこれから

誰かを、何かを責めても何もならない。仕事ができずに腐っていてもしょうがない、今自分ができることに集中。そして、お店を守るためには我慢も必要。経営者として、当たり前の感覚なのかもしれません。

時短勤務、休業と時間ができたことと、5年たってお店の運営もやや落ち着いてきたこともあり、以前、知り合いから話があった障害福祉関連の相談にのることに。

 

「僕自身に障害があって、個人的に障害者雇用のシステムにあまり良くない印象があるんです。それを払拭したい。仕事というよりむしろ僕のミッションとして、障害者雇用自体はこれから何やりたいなとは思っています。それだけでなく、障害福祉と周辺地域を繋げられたら楽しいかもしれない。

まだまだどうなるかは分からないんですけど、自分にちょっと手に負えないくらいの事って面白いのかもしれない」

 

大ちゃんの世代は、就職氷河期を経験しています。夢を捨ててとりあえず就職、会社員生活も10年くらいして、起業して頑張ろうという人も周囲には多いとか。

協調性がある世代とは思えないし、夢みがちな人が多いかもしれないけど、目の前のことをいかに自分に引き寄せて楽しめるかが大事だと言います。

「ここ1年くらいは、自営業=過酷労働みたいな定義を壊すきっかけになったかもしれない。人権もあるし家庭や友達との時間も大切にしたい。お店開けてもちょっと過度な資本主義を緩めて楽しんで生きたいな。だけど、苦労って素敵よ」

 

できたら、また5年後にお話をお伺いして、あのときは・・・の話で大いに盛り上がりたいと思いました。お時間いただきありがとうございました。

INFORMATION

レレレノレコード

※営業時間や定休日は、現在(2021年7月13日現在)変則的になっております。
 お店のSNSをご確認ください。

【住所】川越市連雀町8-2-2

【電話】049-222-0023

【FB】https://www.facebook.com/rererenorec/

【Instagram】https://www.instagram.com/rererenorec/

【HP】http://www.re4.jp/