川越と東秩父村のご縁を結ぶ伝統の和紙「細川紙」〜東秩父SELECTION#2〜

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取材・記事 白井紀行

 

大勢の観光客で賑わう一番街を抜けて更に北へ。

縁結びの神様で知られる氷川神社へと向かう交差点の角にある「旭舎文庫」

 

中に入れば一足早く満開となった桜(取材日は3月10日)。

 

お祝い事には欠かせない白の胡蝶蘭。

 

初夏を思わせる紫陽花の鉢植え。

 

結婚式に華やぎに彩りを添える薔薇の花々。

色とりどりの花が目を楽しませますが、季節外れの花は一体!?

 

実はこれらは「細川紙」と言われる和紙でできた花。

「細川紙フラワー」と呼ばれています。

 

「細川紙フラワー」は再現性が高いのでパッと見では本物に見えてしまう。

外から見た時にお花の展示をしているのかしら?

そう言われる方も多いです。と素敵な笑顔で話すのは案内頂いた西さん。

 

東秩父村の魅力を川越でPR

「東秩父村」は埼玉県では唯一の村。

川越市から見て北西の方向に位置し、車で約1時間の距離にあります。

村をPRし身近に感じてもらおうと企画されたのが「東秩父SELECTION #2」

第1回は「本町の長屋」で開催されました。

 

東秩父村は東西7.7km、南北10.4kmで正三角形の形をしています。

総面積は37km2と川越市のおよそ3分の1の広さ。

8割が山林で花々が咲き誇りハイキングコースが充実した自然豊かな村。

 

そして、何と言っても有名なのが「小川紙」と呼ばれる手漉き和紙。

隣接する小川町とともに1,300年の歴史を持つ伝統産業。

平成26年に本美濃紙、石州半紙とともにユネスコ無形文化遺産に登録されました。

 

和紙は書道や水墨画のほか、古くは大福帳に使われていました。

火事になったら井戸に投げ込んで、後から使えたくらい水に強いからだそう。

また、古文状の修復や海外では絵画の修復にも用いられているそうです。

封筒や便箋もありますが手紙を書く習慣も少なくなっているのが現状。

 

和紙で作ったコマや竹とんぼなどの民芸品。

 

しおりや巻き紙、ポチ袋など。本物の草花を入れて季節感を封じ込める。

細川紙を様々な形にした加工製品にも取り組んでいます。

 

西さんから説明を受けながら商品を手に取るお客さん。

ちなみに細川紙の名前は、和歌山の高野山麓にあった細川村が由来。

昔から東秩父村では紙漉きが行われていて、細川村の技術を取り入れたもの。

紙の大量消費地の江戸に近く小川町とともに和紙の一大産地として発展しました。

 

冒頭で紹介した、まるで本物と見間違う「細川紙フラワー」。

30年位前から趣味の教室としてやっていてどんな花でも作れるほど技術は確立。

そこで、家でも飾ってもらえるような手頃なサイズでの商品化を企画。

パッケージングも考えて1年半かけて販売を始めたのだそうです。

 

こちらは細川フラワーの髪飾り。和装にもドレスにも似合います。

 

ゆらゆらと揺れて目を引く切り紙が目に止まってやってくるお客さんも。

和風の建物に和紙は相性が良い、季節に合わせて飾って欲しいと好評価。

 

旭舎文庫は以前は「旧梅原菓子店」という駄菓子屋さん。

子どもの頃通っていた店がこういう風になったのねとの感想ももらったそうです。

 

新たな可能性を見い出すために作った洋服やドレス。

細川紙は揉むと強度が強くなる性質があって、ミシンで縫うこともできるそう。

子供なので着るときや動き回って破いてしまうこともあるとか。

 

裏に布地をつけて着心地を良くしたり、着せやすさからチャックにしたり。

素材により強度や質感も異なるので、そういうのを比べながらの試作の段階です。

 

広間では「細川紙」を使ったワークショップを併設。

 

細かくちぎった和紙をダルマの型に貼り付けていく「染め紙ダルマ」

 

出来上がったイメージ。ワークショップでは顔も自分で描きます。

 

こちらは和紙の切り紙を貼り付けた「紋切り小箱」

この他、トルコキキョウを作る和紙フラワーのコーナーもありました。

 

2Fでは和紙づくりの工程を紹介

2Fに上がると和紙づくりの工程がわかりやすく展示されていました。

 

それぞれの工程を写真と道具で解説。

 

細川紙として重要文化財に指定されるには様々な条件があります。

その条件の一つが材料に楮(こうぞ)を使っていること。

 

細川紙の原料となる楮(かず)むきした楮(こうぞ)。

楮(こうぞ)を切って長さを揃えて大釜で蒸して剥いだ外皮の部分です。

この後も、表皮を削り、煮詰め、繊維状にしていく工程が続きます。

 

私たちが和紙づくりというと真っ先に思い浮かぶのが紙を漉く場面。

そのときに使われる「桁(けた)」と呼ばれる道具です。

 

「桁」にこの「簀(す)」をはめ込んで紙を漉きます。

 

「トロロアオイ」とはオクラの仲間の植物のこと。

根っこの部分を叩いて水に浸けておくとネバネバが出てくる。

この粘り気が楮の繊維がふんわりと浮かせて簀から水が切れるのを遅らせる。

これによって、繊維を十分に絡ませることができるのだそうです。

 

漉いた紙は脱水した後、一枚一枚剥がして鉄板に貼り付けて紙干しをする。

「刷毛」は鉄板に貼り付けるときに使われます。

以前、笛木醤油の木桶づくりを取材させていただきました。

https://koedo.info/180918kinbuesoysource/

木桶を作る職人さんが今は数えるほどになってきたのは和紙の世界も同じ。

「桁」や「簀」を作る職人さんも日本にはもう何人もいないそうです。

一つの工程がダメになれば全部がダメになる。伝統を守る難しさを感じます。

 

一昨年亡くなった細川紙技術者協会会長の鷹野禎三さんが漉いた紙。

光に透かすと筋が無くて楮のもくもく(繊維)が均等に綺麗に入っている。

薄くて均一な厚さにするには熟練した技術が必要で手間と時間のかかる仕事です。

楮自体が黄色がかっており、真っ白にするには天日に当てて1年かかるそうです。

 

「私が漉いた紙は全体が厚すぎるし厚みも左右で違っているしゴミも目立ちます」

と光に透かして名人との違いを解説。

全行程を機械化した和紙もありますが、手漉きの方が丈夫で味もあるとのこと。

 

明治40年代に医者兼画家の宮崎元育が残した「紙漉き工程図会」

12枚組で当時の紙漉きの工程が当時の風俗とともに描かれています。

12枚全てはこちらで見ることができます ↓

http://www.higashichichibu.jp/hosokawashi#step6

 

デジタルとアナログの融合

和紙づくりの工程解説の写真や図会で使われていたこのプリント。

パソコンで取り込んでプリンタで和紙に印刷したものです。

 

モノクロとの相性が特に良い。

 

普通のツルツルした紙と違って柔らかい雰囲気が出るのが特徴。

 

光が透けるので幻灯機で映し出したような味わいが生まれます。

 

和紙を日常的に使う場面が少なくなり、加工品としての道を切り開こうとしています。

だけど、もともと紙は書くためのもの。書くことで気持ちを伝えることができる。

デジタルな時代だからこそ、こういうアナログの部分も大事にしていきたい。

そんな西さんの言葉が印象的でした。

 

是非、東秩父村へ遊びに来てください

最後に、西さんに教えていただいた村の見所をご紹介。

細川紙が世界遺産に登録されたのを機にリニューアルした道の駅「和紙の里」。

ここでは手漉き和紙の見学や紙漉体験、うどん・そば打ちもできるそうです。

グルメもイワナの塩焼きや手作りこんにゃくに手打ちうどん。

長野に勉強しに行って作り上げたレシピも門外不出のおやきがお勧め。

今回紹介した細川紙や和紙製品のお土産や地元農産物の販売も行なっています。

特に春は花が綺麗な時期。素朴だけど何だか懐かしいなと思っていただければ。

とおっしゃっていました。

当日配布していた「花桃」も東秩父村の名産です。

 

こうしてお話を伺うと東秩父村をとても身近に感じることができました。

川越からだと車で1時間だし、電車でも小川町からバスで15分ほど。

今年のゴールデンウィークはカレンダー通りなら10連休。

そのうちの1日は埼玉県唯一の村で過ごして見るのはいかがでしょうか?


INFORMATION

東秩父SELECTION#2

【会期】平成31年3月7日(木)〜3月10日(日)

【会場】旭舎文庫(川越市志多町1-1)

【主催】東秩父村

【問合】東秩父村産業建設課

【電話】0493-82-1223

【HP】今年も川越で「東秩父SELECTION#2」を開催します!

【参考】http://www.higashichichibu.jp/hosokawashi 細川紙について

【FB】https://www.facebook.com/higashichichibu.chiikiokoshi/