川越の街を作った職人たちからのメッセージを一つ一つの絵に込めて〜黒木利Q(Rikyu)〜
人が感じる空間意識を表現したい
この絵をスケッチしたのは2014年。最終に近いがまだ納得がいかず試作を重ねている。
そんな時間かけてどうするのと思われるくらい阿呆らしいことをしている。
何年も川越にいると上手い人はたくさんいるので、そういう人から見るとまだまだ。
ある程度、自身がついたら完成と言いたい。
時の鐘を正面にした一番街のパノラマ図を手にそう語り始めた「黒木久Q(Rikyu)」さん。
人が景色を見て感じたままを一枚の絵に凝縮するというこれまでにない表現を模索中です。
建築の設計をしていたというRikyuさんに川越の魅力を語っていただきました。
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今、パノラマ図と紹介しましたが、カメラで撮るとこんな風になる。
どちらが自然かというと、Rikyuさんの描いた絵ではないでしょうか?
人の目は正面だけでなく、左右も同時に見ていて頭の中で再構成した景色を描いています。
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その空間意識を一枚の絵の中に納めてなるべく違和感のない自然さを出したい。
絵の上手下手や技量でなく、自分の見たままに紙に落とし込むことを狙っている。
都内で仕事をする道すがら独学で絵を描き始めて10年。自ら辿り着いた表現方法。
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「陶舗やまわ」奥にある蔵。最初はこれをメインの景色にした一枚を描いた。
だけど、何か物足りないなと思った。
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自分が捉えた景色ならここまで入れたいなと思ったので付け加えた。と絵をパノラマに。
(その瞬間、絵の雰囲気がガラリと変わり動き出すような錯覚を記者は覚えました)
すると、空間意識の高まりと時間の凝縮が起こり、自分が感じたことが入れ込めた。
絵の中に物語を入れるようになったんです。そう話すRikyuさん。
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川越の文化や歴史を自分の表現で伝えたい
川越へは仕事で来たことがあって、その時に蔵の街を知った。
建築の設計をやっていたので、川越にはこんなに魅力のあるものがいっぱいあるのだよ。
建物がこんなことをアピールしていることを伝えたいと思って題材にした。
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蔵造りの建物は道と並行ではなく10〜15度傾いている。上からみればノコギリの歯のよう。
そこには、一直線に並んだ建物にはない面白さと深みがあって無意識に人は良いなと感じる。
1回だけだと良いと思う理由が分からないので、それを確かめるために何度も足を運んでしまう。
もう一度来て見たいという魅力を作り出している。
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この街をとらえるのに少し高いところから俯瞰して全体の都市感を表現してみたい。
(そう思って描いたのがこのスケッチ。時の鐘が高くそびえています)
本当は手前の屋根に隠れてしまうけれど、人が感じている景色はそうではない。
自分が見たいと思うように描くので不自然さを感じさせないようになっている。
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「陶舗やまわ」も空間意識がわかっていると、間があるところに魅力がある。
でも、そんなことを言っていると理屈ぽくなるから(笑)、絵で表現している。
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(同じところを写真で撮ってみました)
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今、絵を描く拠点にしている「埼玉りそなポケットパーク」から見た景色。
ねこまんまおにぎりの行列、このベンチで食べている人、ここでは鰹節が風で舞っている。
映像なら(時間軸があるので)表現できるが、自分は、それを絵で演出する。
景色だけでは終わらせたくない。着物と人力車は描いて、信号や余計な看板を省く。
そうすることで、川越をしっとりとした大人の街として表現したい。
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スケッチばっかりしていてなかなか追いついていなくて、家には200-300枚置いてある。
こういう描き方なので、1箇所を修正すると他のところも手を加えなければならなくなる。
1つの作品ができるまで長いスパンがかかる。こんなジャンルに挑戦する絵描きがいてもいい。
それが伝わればとRikyuさんは語ります。
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絵をもっと身近なものにしていきたい
みなさんは絵を高いものと思っているので、自分の絵は手に入れやすいものにしたい。
ちょっとしゃれていて、普通にないという感覚のものをお土産として買ってもらえるもの。
原画は売れないのでカラーコピーにしたものを1,000円くらいで販売したい。
最初は浅い色だったけど、これぐらいにしないと迫力が出ない。
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まだ、自分に自信がないので躊躇している。
時間がかかるけど、普通に川越を観光していたら気づかないインパクトを絵に込めたい。
それで川越の良さを知ってもらえたらと思う。
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川越のなんでもない景色も面白い
知ってもらわないといけないので、蔵の街を題材に描きながら自分の絵を模索している。
だけど、川越には面白いところがたくさんある。例えば、クレアモールのMDTカフェ。
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クレアモールの何ともない風景でも絵にすると面白いんですよ。
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まるで、絵を描くためにデザインしてくれたんではと思うくらい。
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(東口のアトレマルヒロからクレアモールへと向かう陸橋周辺)
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これは寝転んで描いて見た。
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街はどんどん変わって行くので、その変わる要素も取り込みたい。
写真も添付すると面白のではと思っている。
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一枚の絵に無理に納めずに付け足すことで空間が広がる。
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一枚だけだとなんともない絵が袖をつけることで空間が広がる。
しかも、ちょっとだけ隙間を開けて区切って線を入れることでよりリアルに表現できる
昔の人も屏風に景色を描いているが、そういう見せ方を考えていたのかもしれない。
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風景を一枚の中に収めなければならないという絵の常識を覆したい。
生意気かもしれないが、色々な角度で見たものを一つの画面に収めたキュービズムのように。
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絵を通して昔の職人さんと会話していきたい
影盛りなどの文化遺産もクローズアップしていきたい。
建物の部分部分をじっくり見ると昔の職人さんのデザイン、センス、アピールの仕方に気づく。
威風堂々とした建物の造形の中には、言葉では表せられない魅力がいっぱい詰まっている。
絵を描きながら昔の職人さんと会話して、そのメッセージを絵に表現していきたい。
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望遠鏡で見ないとわからないようなところにある瓦の彫刻の線の素晴らしさ。
職人さんのセンスの良さデザイン力が表現できれば、絵の良し悪しは関係ないと思っている。
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そこにあるんだけど見えてないものがある。それを絵で描くことでアピールしたい。
時間はかかるだろうけど、それができたら、この街の深さがしみじみとわかるのではないか?
Rikyuさんの挑戦はこれからも続きます。
もし、川越の街で見かけたら声をかけて見てください。
取材・記事 白井紀行