【X’mas特別企画】豊嶌登志子×山田隆広 対談「市民と第九を語る」

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今回は、クリスマス特別企画として「小江戸川越第九の会」会長の豊嶌登志子様と川越在住のピアニスト山田隆広様による対談「市民と第九を語る」をお届けします。

第九は知っていてもその魅力や鑑賞の仕方を知る機会というのはなかなかありません。お二人の対談を通じて第九をより深く知るきっかけになれば幸いです。

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山田:「小江戸川越第九の会」会長の豊嶌登志子さんをお迎えしました。よろしくお願いします。まず知らない方のために「小江戸川越第九の会」について教えてください。

豊嶌:はい、川越でもオーケストラと合唱とで合同演奏しようということから2011年に立ち上がりました。

山田:5年というと新しい団体ではあるのですね。

豊嶌:そうですね、まだ模索しながらといったところです。

山田:第九の会は各地にあると思うのですが、他のクラシックは知らなくても第九は知っている、歌いたいという方多いですね。市民にとっての第九の魅力とは何でしょうか?

豊嶌:日本人は第九好きですよね(笑)年末になると第九ですね。最後の高揚感は本当に気持ちがいいです。

山田:僕も多いと年末に6回くらい行きますね(笑)実は僕も「小江戸川越第九の会」のコンサートの日に、ここのサロンで第九の講座を開いています。サラリーマンの方やピアノの先生に第九の構造をスコアを見ながら解説します。これはもう10年やっていまして、知らない方に喜びの歌の部分だけでなく、全ての楽章に意味がある一つの作品としての魅力をお伝えするべく開いています。

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12月4日に開催された第九の解説の様子

豊嶌:知らない方は合唱の喜びの歌が出てくる最後の4楽章だけが第九だと思っていて他の楽章は違う曲だと思っていたりしますね。1楽章から全て通して第九だと伝えたいですね。

山田:歌う方もご自身が歌う4楽章以外眠くなるという方もいますね。

豊嶌:4楽章に全部の要素が出てきますから。

山田:ちょうど高校生の生徒に3楽章の分析をさせているのですが、あれは変奏曲といって決まった和音が変化していくんですね。悲愴ソナタと同じ和音なのですが、第九は衝撃的な1楽章のレラー!!から始まり3楽章もレーラーなのですが、同じレとラと思えない何と美しい。見事に変容して循環されていますね。ベートーヴェンの見事な作曲技法ですね。豊嶌さんは昔からベートーヴェンがお好きでしたか?

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豊嶌:ベートーヴェンが好きというよりは、彼の交響曲9曲の性格の違いにだんだんと魅了されました。それで特に9番の第九は最後ものすごく天にも昇るような感覚で魅了されます。

山田:あれはピアニストは一生味わえませんね。第九はピアノがありませんから(泣)そんな第九ですが、豊島さんの1番好きなところを一つ上げるとどこになりますか?

豊嶌:1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンで違いますね。1stなら美しい3楽章ですね。3楽章は1stのために書かれているかのようです。2ndなら絡みが素敵ですね。

山田:3楽章の冒頭は1stのメロディーをまるで呼んでいるかのようですね。

豊嶌:ゆったりの曲ですけど1stはかなり細かいんですよ。

山田:変奏曲なので低音の楽器はあまり動かず高音チームが変化していくんですね。

 

さて、今日は少し踏み込んだところまで話したいのですが、その美しい3楽章の後半金管楽器のファンファーレ、パパパーン!その前までは神の祝福みたいなイメージだと思うのですが、これは何でしょう?

豊嶌:それまでは確かに美しい音楽ですが、4楽章を予感させる感じもしますね。

山田:混沌とした始まりの4楽章の予感ですね。

豊嶌:2楽章も面白くてターンタタンというリズムですが、ティンパニなんですね。

山田:?

豊嶌:ターンタタンがティーンパニって言ってるようなんです。

山田:なるほど!言葉遊びみたいな。そもそもこの激しい2楽章はティンパニ大活躍ですしね。

 

さてCDの話ですが、豊嶌さんは好きな指揮者はいますか?僕は質実剛健な感じのベームが好きなのですが、絶対外せない神がかり的なのはフルトヴェングラーですね。

豊嶌:フルトヴェングラー好きですね!

山田:少し時代がかったというか、表現が強く、ほとばしる情熱の演奏は唯一無二ですね。

豊嶌:あの時代は使っている楽譜、版も違いますね。今はベーレンライター版やブライトコプフの新版が多く使われている。同じ曲でも楽譜の面がまるで違うので表現が変わりますね。そして一つの表現でも80人ぐらいが一緒の呼吸で息を合わせないといけないので大変です。

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山田:この曲はラストが合唱ではなくオーケストラで終わるんですね。難しい話ですが、最後は合唱、オーケストラともにモチーフを拡大したり縮小したりそして最後オーケストラがジャン!と終わりますが、なんとフルートがララララレ!と終る。ラレというのはこの曲の重要な素材で、最後お祭り騒ぎの中にもベートーヴェンの伏線が隠されている。見事です。

豊嶌:第九のスコアは何度見ても発見がありますよね。意外と演奏しているうちにもハッとここが管楽器と関係していたのかと発見したりします。

山田:僕が第九の講座を10年前に始めたのも、皆にこの壮大な曲の魅力を隅々まで知ってもらいたいというところからですが、最初はポピュラーのミュージシャンの方を連れて行ったんですね。一時間くらい講義をしてから行ったら最後まで楽しめたというのです。そこから音楽を事前にどう予習というか知っておくと知らない方も楽しめるのかを探る旅が始まりました。

豊嶌:生演奏の力もありますね。それから今は学校でも第九の合唱部分をドイツ語で暗記したりするんです。200年残る曲ということも凄いことですね。

山田:そうですね。子供たちにも伝えていきたいですね。さてそろそろお時間ですが、本日はありがとうございました。最後に読者の方にメッセージをお願いします。

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豊嶌:「小江戸川越第九の会」を通じて多くの方にクラシック、第九を楽しんでもらいたい、仲間が出ると行ってみようかなとなりますよね。そこから今度は私もやってみようかなとなる。演奏で参加された方は最後泣きながらやってよかったとなってます。そうやってぜひ市民の方の底辺を広げていきたいです。オーケストラの奏者の方も普段はできないけど第九だけなら演奏してみようかなという方もいます。学生の方もソロでは学べない奥が深い世界があります。最初は自分のパートに精一杯でもどんどん他が見えてきてスコアにはまっていくんですね。そうして市民の方に素晴らしさを広げていきたいですね。

山田:ありがとうございます。それでも興味ないという方は僕にご連絡いただければ釘付けにしてみせます(笑)豊嶌さん本日はありがとうございました。

豊嶌:ありがとうございました。

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取材・記事・対談 山田隆広


INFORMTION

山田隆広プロフィール

ピアニスト、作曲家、川越市クラシック演奏家協会会長。

埼玉県立川越高等学校、国立音楽大学修了。ピッツバーグ、カーネギーメロン大学にてダルクローズサーティフィケイト取得。アーティストへの楽曲提供、CM制作、オーケストラへの提供、ピアニストとしてはソロ、伴奏、室内楽など。クラシック、ポピュラー、ジャズとジャンルを問わず全国をまわり、年間100本以上のコンサート、録音をこなし、観客総動員数は10万人を超える。テレビへの登場、幼稚園から学校までのレクチャーコンサートから本格的なリサイタル、ミュージカルなどの舞台音楽も手掛ける。指導者としても門下生は全国に約100名を抱える。

【HP】http://clair-piano.com/

【FB】https://www.facebook.com/takapubin

【告知】クレアニューイヤーコンサート

    対談が行われた自宅サロンで来年1月15日(日)コンサートが開催されます。
    ヴァイオリン桂川千秋、ピアノ 山田隆広。詳しくはHP、Facebookにて

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豊嶌登志子プロフィール

ヴァイオリニスト、小江戸川越第九の会 会長、川越市文化団体連合会常任理事。

武蔵野音楽大学器楽器楽科ヴァイオリン専攻卒。大友直人氏と日中友好演奏会、ゲルハルト.ボッセ氏やアントニンキュ―ネル氏との室内楽、セルジオ.ソッシ氏とのオペラ、松山バレエ団とのバレエ音楽、日本各地の大学やアマチュアオーケストラに賛助出演する。

TV番組のストリングス担当やオーケストラ、室内楽、カルテット等ジャンルを問わず演奏している。ヴァイオリン教室講師としても後進の指導にあたる。

【HP】http://www.city.kawagoe.saitama.jp/event/main/rekishi/daiku2016.html