練習も楽しく市民が歌う歓喜の歌〜小江戸川越第九の会演奏会〜
師走、今年もあと1ヶ月を切って何となく気もそぞろとなる月。
そして、この時期になると目につくのが「ベートーヴェン交響曲第9番」、通称「第九」。
川越では、12月4日(日)に「小江戸川越第九の会」による演奏会が開催されます。
場所は、「ウェスタ川越大ホール」。
その練習風景を見る機会を得られましたので取材してきました。
‖ 小江戸川越第九の会
「小江戸川越第九の会」とは、第九を演奏しようと結成された市民参加の団体。
豊嶌会長にお話を伺った後、ウェスタ川越のリハーサル室へ。
合唱するメンバーは2月末から3月末の1ヶ月間に応募された方たち、約170名。
第九の会は、団体として活動しているのでなく演奏が終わればそれで解散。
翌年なれば、また新たに募集するシステムを取っています。
合唱の全体練習は5月から日、水、土の21回で、10日に1回のペース。
だから、発声練習からは始められず、初心者ではついて行くのは難しいレベルです。
オーケストラは市外からも来ていて80人弱の編成でこちらも毎年募集。
いずれも楽団に所属するなど実力のある方が参加されています。
合唱、オーケストラとも市民公募の「市民第九」が、この会の大きな特徴です。
今年の指揮は、岸本祐有乃さん。
オーケストラと合唱団が一緒に練習するのは本番直前の限られた回数のみ。
これまで練習を重ねてきた合唱団の方たち。
そして、オーケストラの方たち。
こうして、指揮を挟んで対峙するのは、両者の表情を確認するためなのだそうです。
本番近くということでピリピリとした雰囲気だろう。
ウロウロして邪魔にならないかといささか緊張して撮影に臨みました。
だけど、練習が始まるとそんな感じは一切ありません。
もちろん、目の前で行われる演奏は本番さながら。
だから、撮影しながらもふと気づくと聞き入ってしまう。
合唱団の皆さんも心地良さげに自然と体を揺らしています。
そう、皆さんこの空間に広がる音に身を委ねて楽しんでいるんです。
リハーサル室にブワッと広がってスッと消える、まるで淡雪のような合唱。
それが気持ちよくて、体全体が意識してその感覚を受け止めています。
リハーサル室の本領がいかんなく発揮されていることも同時に体感します。
これだけの沢山の人たちが半年以上をかけて一つのものを作り上げる。
その生み出される過程をこうして観客が目にする機会はありません。
だけど、こうして練習を積み重ねた成果が、心に響くのでしょう。
オーケストラとの合同練習は1時間あまり。
練習の終りを告げると合唱団の皆さんからは笑顔がこぼれます。
そして、両者から自然と拍手が沸き起こりました。
合唱団はすっきりとした表情で満足げにリハーサルを後にして行きました。
‖ オーケストラで楽器は歌う
ここからはオーケストラの練習に入ります。
キリッとして張り詰めながらもリラックスした雰囲気。
一瞬の静寂の後、スーッと音が立ち上がり室内に広がります。
一区切り演奏が終わったら次の区切り。
音の形を少しずつ少しずつ変えながら丁寧に組み立てられていく。
練習を見ながらそんな印象を受けました。
しばらく練習をして一旦休憩。
休みの合間にも思い思いに音を確かめます。
休憩が終わると、リハーサル室の空気がサッーと練習モードに切り替わります。
岸本さんの指揮の元、練習が続けられます。
それでは、XXX小節目をやってみましょうか?
ダメ出しではなく、完成度を高めるために練習が繰り返されます。
だんだんと音が練られてまとめ上げられていくこの感じ。
稚拙な言葉を加えなくとも出来上がっていく様子が伝わると思います。
岸本さんの指揮は、指で丁寧に音を触りながら全体を整えているよう。
こうして欲しいと、時には歌を交えて伝えます。
だからなのか、楽器が音を鳴らすので無く歌っているかのように錯覚します。
時には、高揚した気分を隠しきれない表情も垣間見せる。
それが場を包んで、全体を見事にまとめ上げているのでしょう。
2時間の練習を終えたリハーサル室。
楽しく演奏しているように見えても常に気持ちは張り詰めていたようです。
それが緩んだ開放感と練習した満足した気持ち、その余韻が広がります。
12月4日(日)こうして完成された歓喜の歌が、ウェスタ川越大ホールに響きます!
取材・記事 白井紀行
INFORMATION
小江戸川越第九の会演奏会
【日時】平成28年12月4日(日)13:00(開場)/14:00(開演)
※チケットは指定席(S席、A席)は完売。自由席も残席僅か(完売の可能性あり)
【会場】ウェスタ川越大ホール(川越市新宿町1-17-17)
【主催】小江戸川越第九の会、川越市、指定管理者NeCST
【曲目】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」
ワーグナー:歌劇「リェンツィ」序曲
【出演】指揮:岸本祐有乃
コンサートマスター:水山裕夫(元東京都交響楽団)
ソリスト:守谷由香(ソプラノ)
横瀬まりの(アルト)
村上公太(テノール)
久保和範(バリトン)
合唱:小江戸川越第九の会合唱団(公募約170人)
オーケストラ:小江戸川第九の会オーケストラ(公募約70人)
【HP】http://www.city.kawagoe.saitama.jp/event/main/rekishi/daiku2016.html