新河岸舟運の名残を訪ねて〜福岡・古市場・渋井界隈〜
かつては、川越舟運の河岸場となっていた養老橋付近。
川を挟んで福岡河岸(ふじみ野市)と古市場河岸(川越市)があり賑わっていました。
案内板には享保18(1733)年に開設、昭和10(1935)年に役目を終えたとあります。
約200年の歴史ですね。
‖ 河岸場として賑わっていた当時を偲ぶ
当時の周辺図に吉野屋、江戸屋、福田屋の廻船問屋の名前が見えます。
建物や蔵が数多く立ち並び、栄えていたことが読み取れます。
第23回特別展目録「河岸場と河岸道〜新河岸川舟運を中心に〜」P28
発行日 平成20年9月27日
編集・発行 ふじみ野市立上福岡歴史民族資料館より
対岸に立つとその面影を見ることができます。
船着き場の位置は変わっていないようで、昔の雰囲気が思い起こされます。
吉野屋
吉野屋には明治中期には十二番蔵まであったそうです。
今はこの文庫蔵だけが伝わり、平成10(1998)年に国の登録文化財となりました。
江戸屋
江戸屋は道沿いに米蔵や味噌蔵が3棟並んでいましたが、今は、この1棟のみ。
主屋の2階部分は昔のままのようです。
福田屋へと向かう石畳の坂道の左手には文庫蔵(改修中)
この界隈の雰囲気を取り込んだ新たな活用を考えているそう。
ここからは、そんなことも頭の片隅に置いてご覧ください。
※旧江戸屋は一般宅なので内部見学はできません。
福岡河岸記念館(福田屋)
そして、当時を偲ばせる建物がそっくり残っているのが福田屋。
今は、福岡河岸記念館として公開され、その姿を後世へと伝えます。
明治33年に建てられた当時としては珍しい木造3階建て「離れ」
敷地全体が武蔵野台地の上にあるので、道路から見ると5階分の高さ。
まるでお城のような石垣。当時はランドマーク的な存在でした。
福岡河岸記念館については、こちらの記事も合わせてどうぞ♪
‖ 古市場へ
養老橋を渡り古市場河岸の名残がないか散策してみましょう。
養老橋から上流を見れば、その先は南古谷の街。
こちらは下流側。右手には船着場。川はぐっと左にカーブしています。
当時の周辺図。今度は、古市場辺りをピックアップ。
橋を渡って右手には橋本醤油醸造所、左手には母屋や蔵が立ち並んでいたようです。
橋を渡って左手には「はしもと」の文字が見えます。
地図には無かった右にカーブする2車線道路。
位置的には醤油醸造所の敷地を抜けているのではと推測されます。
橋から真っ直ぐ延長線上にあるのがこちらの通り。
かなり年代物の建物は遊漁券の取扱所。
この延長線上に河岸場の面影がありそうと期待できる建物ですが…。
その先も、どうも辻の交わり具合などが地図とうまく一致しません。
資料を手に入れてもう少し調べて見る必要がありそうです。
今では貴重になりつつあるホーロー引きの看板。
記者の好きな蔵を見つけました。
‖ 桜堤から蓮光寺へ
古市場から川越市側の土手を歩いて、近くの蓮光寺へと行ってみましょう。
土手沿いに桜の木が等間隔に植えられ「桜堤」と名付けられています。
春には花見の名所となります。その頃にもまた訪れたくなります。
土手を歩くと左手に蓮光寺の総門(表門)が見えてきました。
約1年振りの再訪、相変わらず美しい姿です。
元々は山門の前にあって、川を向いてましたが、新河岸川の改修に伴い今の場所に。
紅葉が本格的に始まると門の紅と映え、まるで額縁のように。
振り返ると小さい切妻の屋根が乗せられているのに気付きます。
高麗門(こうらいもん)という建築なのだそうです。
境内の木々や灯籠を眺めながら歩みを進める。
風格のある山門。船頭さんも新河岸からこの山門を眺めていたのでしょう。
門の左右には二天王尊が安置されています。
山門をくぐって境内の庭。右手には十二支のお地蔵様がお出迎え。
一体一体、じっくりとその表情を見てみるのも面白い。
直線的に色分けされ幾何学的なデザインの本堂。
階段を上がって本堂の中に足を踏み入れます。
本堂の中に入って御本尊を拝見できる機会はなかなかありません。
見上げれば立派な天蓋と天井画。
植物や動物、富士山など自然のものをモチーフにしています。
徳川家康が鷹狩りに来たそうで、その時の絵も掛けられています。
門前でお茶を差し上げたところ、お礼として七石の朱印状を下付されたそうです。
山門の横には鐘楼
どんな鐘の音がするのか、一度、聞いてみたいものです。
これから落ち葉の季節。お地蔵様が見送ってくれました(なぜか、四角い)。
新河岸舟運の名残が、ここかしこに残る福岡、古市場、渋井界隈。
四季折々の移り変わる景色の中を散策できる魅力的なエリアでした。
取材・記事 白井紀行
INFORMATION
福岡河岸記念館
【住所】ふじみ野市福岡3-4-2
【電話】049-269-4859
【HP】http://www.city.fujimino.saitama.jp/categories/institutiontype/bunka/kashi/
曹洞宗鷲嶽山蓮光寺
【住所】川越市大字渋井248
【電話】049-235-2733
【HP】http://www.renkouji.or.jp/