川越百景ウォーキング〜新河岸舟運でたどる川越の歴史〜
平成24年に「あなたが選ぶ みんなの景観」をテーマに応募総数296件から選ばれた「川越百景」
その景観資源をより周知し、身近に感じてもらう方策である「川越百景ツーリズム事業」。
その一貫として、「川越百景ウォーキング」というモニターツアーが行われました。

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11月21日(土)のツアーは「新河岸舟運でたどる川越の歴史」
川越の歴史を語る上で、川越と江戸を結んだ舟運を欠かすことはできません。
今回のコースはその歴史を川越百景を巡りながらたどるもの。
参加したモニターの意見は今後「川越百景」を活用するための施策に役立てられます。

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当日配布されたコースマップ(掲載許諾を取っていないので精細な画像はアップ出来ません)。
歴史、コース、見所がまとめられていて、とても良くできた地図だと思います。
‖ 配布物
この日モニターに渡されたのは、「川越百景」の冊子、「新河岸駅周辺おすすめマップ」
そして、万歩計と腕時計型の心拍計(左写真)、音声レシバー(写真右)です。

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主催の川越市都市景観課、新河岸駅中央商店街会長ほかの挨拶の後、いよいよ出発。

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住宅街をしばらく歩き、川越百景(No.71)の「新河岸川河岸場跡周辺」に向かいます。
レシバーで都市景観課による解説が聞けるのが良いですね。
ちなみに解説される都市景観課の課長さんは、川越市立博物館にいたそうで情報量が凄い!

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‖ 新河岸日枝神社・観音寺
ほどなくして、新河岸日枝神社・観音寺(川越市下新河岸55)に到着です。
明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)を逃れており、同じ境内に神社と寺があります。

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入り口には左右一対の石碑が立っています。
前面には「阿吽の仁王像」、裏面には「弘法大師像」が彫られています。
越生の五大尊として祀るために新河岸からは陸路で運ばれるのが何故かここに捨て置かれた。
一時は土留めとして使われていたものだったそうです。

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ここで新河岸川舟運の歴史の簡単な解説がありました。
舟運は寛永15(1638)年、川越大火で仙波東照宮の再建に伴う物資の輸送がきっかけ。
その後、越藩初代藩主の松平信綱が回収を始め正保4(1647)年に舟運が開始されました。
川越から江戸(浅草)までの距離は120Km。
これは、「九十九曲がり」と云われるように水量を確保するため川を屈曲させたためです。
当初は藩の荷物、1700年代からは民間の荷物や人の運搬も行っていました。
河川改修で水量が確保ができなくなったことや、鉄道の開通で昭和6年に廃止されました。

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写真右手が「観音堂」。左手の高台に有るのが「新河岸日枝神社」です。

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‖ 伊勢安(いせやす)
かつては、船着き場には舟問屋商家が多数軒を連ねていましたが。
その往時の姿を今も残すのが伊勢安(川越市下新河岸45)です。

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今回のモニターツアーでは特別な計らいとして建物内部も見学させて頂きました。

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入り口を入って右手には帳場や金庫が当時の姿を偲ばせます。
注)伊勢安は江戸初期に開設され、明治3年に火事で再建、平成11年に改築されています。

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伊勢安には、味噌蔵、米蔵、素麺蔵と並んでおり、いずれも市の指定文化財となっています。
軒下には長さが10メートルもある帆柱が掛けられています。

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こちらは文庫蔵。

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舟運が行われていた頃の写真。大きな舟は小学校の25mプールほどありました。
今の新河岸川と想像も付かないような幅と水量が豊富で、旭橋から飛び込める位だったとか。

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‖ 舟下り体験
川越春まつりや新河岸舟下りを行っている「新河岸昭栄会」による舟下り体験。
この日のツアーの目玉で、福岡河岸までの約1時間の船旅です。

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当時の舟(高瀬舟)の模型。舟の右側の小屋みたいなところは、船頭さんが寝泊まりする場所。
帆は麻でできており、今、実物大のものを作ろうとすると2〜3,000万にもなるそうです。

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今回乗るのは、現在の水量に合わせた平田舟。
当時はこの舟で川は下りませんでしたが、タグボートとして使われたことはあるようです。

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最初の組を載せた舟がゆるりと岸を離れました。

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続いて、私たちも舟に乗り込みます。

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岸からの舟歌に見送られ、いよいよ川下りのスタートです。

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新河岸川の景観、特に向かって右岸では湧き水が多く見られること。
新河岸川の水源(赤間川〜伊佐沼〜九十川〜新河岸川)などが解説されました。

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こんな橋の下をくぐるれるように、高瀬舟の帆は簡単に畳める構造となっていました。

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‖ 福岡河岸
養老橋をくぐり福岡河岸(ふじみ野市福岡3-4-2※)に到着しました、ここで昼食休憩です。
注)住所は福岡河岸記念館
ここまで下って来た舟は、クレーンで吊り上げてトラックで運びます。

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新河岸川の九十九曲がりの河川改修を示す図面。

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対岸にある古市場河岸(こちらは川越市)
橋本屋で醸造された醤油を運ぶために使われていました。
かつては古い街並が広がり、時代劇のロケでも使われたそうですが今はその面影はありません。

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養老橋を渡りその古市場河岸があった対岸へ。

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土手には桜並木が続き、「新河岸の桜堤」として花見スポットとして有名です。

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‖ 蓮光寺
蓮光寺(川越市渋井248)の総門が見えてきました。
ちょうど、紅葉の時期だったので、門の朱が映え合って思わず息を呑む美しさです。

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高麗門(こうらいもん)という建築で、後ろには小さい切妻の屋根が乗せられています。
この門は川越市の有形文化財。そして、蓮光寺は「川越百景(No.66)」となっています。

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紅葉が美しい境内。

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風格をみせる鐘楼門。左右には二天王尊が納められています。
先ほどの総門は、かつては、この前に設置されており厳島神社の鳥居のようでした。
これは、舟の上から直接お参りできるようするためだったそうです。

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十二支の動物を携えたお地蔵様。

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堂々たる風格の本堂。室町時代中期の創設と推定されています。
天正19(1591)年に、徳川家康がこの地に鷹狩りにきた記録も残されています。

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蓮光寺のホームページはこちら→ http://www.renkouji.or.jp/
時間の都合で、当初のコースでなく今来た道をUターンします。
(この先の「第二新河岸橋」で対岸に渡り「福岡河岸記念館」に行く予定でした。)

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‖ 福岡河岸記念館
福岡河岸にあった回漕問屋 福田屋は明治時代中頃は十数棟の建物が築かれていました。
平成23年に残っていた母屋、台所棟、文庫蔵、離れが景観重要建造物に指定されたものです。
同記念館の館長さんに建物を案内して頂きました。

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母屋の様子。

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こちらが帳場。当時の雰囲気がそのまま息づいています。

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1階は部屋が田の字型。8帖の中の間、10帖の奥の間。
写真左手には仏間、茶の間とあります。

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母屋に続く台所棟には住み込みの雇用人が暮らす12帖の男部屋、他に女部屋もありました。

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階段を上がって2階へ。ここが住居となります。
左上の写真が新河岸川方面、左下がその反対からの様子で、高低差があることが分かります。

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文庫蔵には、星野家(福田屋は屋号)に関する資料が展示されています。
星野家の当主は代々、仙蔵を名乗っていて、回漕業を始めたのは7代目。
10代目は剣道の館長を務めた他、衆議院議員当選後には、東上鉄道の敷設に尽力しました。

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文庫蔵と離れ。3階建ての離れからの景観は残念ながら見れませんでした。

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福岡河岸記念館の詳細はこちら→
http://www.city.fujimino.saitama.jp/categories/institutiontype/bunka/kashi/
福岡河岸記念館を後に、新河岸川の土手を上流に向かいます。

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土手から見えるダイナミックな景色。

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‖ 寺尾調整池
新河岸川の河川改修の目的は水害を防ぐためでしたが、それが舟運の停止に繋がります。
ただ、その後も流域では水害が続いたので造られたのが「寺尾調整池」です。
川越百景(No.73)になります。

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‖ スピードウォーキング
とここで、冒頭に出て来た心拍系を使います。
健康ウォークの側面も持ったこのツアーで、心臓に負荷を掛けて歩いてみるものです。
平常時の心拍数をまず計り、それから自分できついと思ったところの心拍数を計ります。

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‖ 寺尾の日枝神社
いよいよ、最後の目的地である寺尾の日枝神社(川越市寺尾641)です。
うっそうとした鎮守の杜の中に建てられた雰囲気のある神社で、川越百景(No.72)です。

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この付近にあったとされる寺尾城の物見の代わりをした槙(まき)※の木。
雷に打たれた跡もあるそうです。
注)川越百景の説明では「かや」となっていますが、槙が正しいそうです。

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寺尾日枝神社。

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神社の北側には勝福寺(川越市寺尾640)の本堂が見えます。

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墓地にある板碑(いたび)
これは墓石ではなくて殺生を生業とした武士のための生前供養塔。
長瀞や小川町から運ばれた青石から出来ていて、建長3(1251)年と刻まれています。
文字は阿弥陀三尊種子の薬研彫。梵字で「阿弥陀如来」「観音菩薩」「勢至菩薩」を表します。

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「川越百景」の存在は知っていましたが、以外と見ていなかったことに気付きました。
今回のツアーで川越の歴史の深さと景観の素晴らしさに触れることができました。
中心街に注目が集まる川越ですが、このように郊外にも素晴らしいところが沢山有ります。
そういった点在する景観を線で繋げてマップにすれば、そこに新たな観光資源が生まれる。
この試みが、今後、どういった展開をしていくのかとても楽しみです。
取材・記事 白井紀行
INFORMATION
川越百景ウォーキング
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