女性ならではの気遣い、心配り、おもてなしで最高な品質の梅を!「山口農園」

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越生は日本でも有数の梅の産地。なんと人口よりも、梅の木の数のほうが多いのだといいます。
川越から車で40分ほど。8月のある日、カワゴエ・マス・メディア一行は、東武越生線武州唐沢駅からほど近い梅農家「山口農園」を訪ねました。

梅の収穫はすでに終わっていたが、広い敷地内には所狭しと梅の木が並んでいる(山口農園)

 

「町の特産品があるってすばらしい」

越生町で1.5ヘクタールの梅園地とその中に休憩所を兼ねた『梅凛caffe(ばいりんカフェ)』を経営するのは、三代目 山口農園のお嫁さんであり、「長男の嫁」「本家の嫁」「農家の嫁」という肩書を持つ、山口由美さん(55歳)。由美さんが40歳の時にお義父様が病で倒れてから、ご主人が公務員だったこともあり、梅農家を継いで「女性農業経営者」になりました。

由美さんは、自ら「梅不二子」と名乗り、Twitterなどで越生の梅の魅力や自身の活動のことをメインに発信。「おごせの梅」や「山口農園の梅」などの自社ブランドをつくりあげ、今では講演会などにもひっぱりだこの女性経営者です。

由美さんは越生の梅や自らの活動を「梅不二子」と名乗り発信している

 

大阪で生まれ、小学6年生から鶴ヶ島市で育った由美さんは、近隣の川越や狭山、毛呂山などはみんな特産品があるけど、鶴ヶ島の名産って何だろうと思っていたそうです。特産品があることのすばらしさに越生の町の人たちが気づいていないなんてもったいない、とも。

越生の梅を県内外の人たちに知ってもらい、消費を通じて応援してもらえるようにつなげたいと由美さんは言います。直接消費者からの声を聞くことにより、越生の梅は和歌山の梅に比べて知名度が低いことを思い知らされる場面もあったということです。

梅凛caffeはシェアキッチン方式をとっている。その日のメニューはボードに書かれている

「梅のうめぇアレンジ」カフェ内では梅の種類の違う梅干しの食べ比べもできる

 

若い世代にも農業のよさ、大切さを知ってほしい

由美さんが梅の生産に携わり始めたのは28年前で、この時まだ越生の梅農家は150人いたのですが、現在はその半分ちょっとの80人ほどに減っているそうです。実際、農業従事者の高齢化や後継者不足が問題となっていて、日本の食料自給率は37%にまで落ち込んでいるのだとか。

キツイ、汚いなど、ひと昔前はネガティブなイメージで語られることの多かった農業。そして今も、そのようなイメージを抱いている人は多いのかもしれません。大変な仕事だけれど、良い面やいろんな可能性があるし、おしゃれだってそれなりに楽しめると由美さんは仰います。

「今どきの10代の子どもたちが進路を考えるとき、農家ってダサいからなりたくないとか、もっとカッコイイ仕事がしたいなんて思うかもしれないけど、農業は食卓を支える大切な仕事をしているんです。囲いのない場所での仕事は自然のパワーがもらえるんです。」と由美さん。越生の魅力は、東京から近いのに、美味しい空気をのびのびと吸えることなのだそうです。

農業に参加することは難しいのではと考えがちですが、「地元の身近なものを買って食べるだけでも農業に貢献できるし、それなら簡単なのでぜひ皆さんにやってみてほしい」と話されていました。

埼玉県でも越生で美味しい梅が獲れることを知ってほしい

 

3人の子育てに介護、苦労の日々を乗り越えて…

由美さんは、サラリーマン家庭で育って、幼稚園の教員になり26歳で結婚。ご主人のご両親と、重い障がいのある叔父(義父の弟)様との同居生活が始まりました。2年後にお子さんが生まれ、ほどなくしてお義母様が亡くなりました。

5歳になった長男が予防接種を受けた後熱が下がらなくて、いろんな病院を転々としても、入院してもなかなか原因が分からず、けいれんがずっとすごくて、意識がない状態が続き、一時はどうなることかと思ったといいます。診断は10万人に1人という急性散在性脳脊髄炎。「この子は助けられるかどうか分からないから覚悟してください」とお医者さんに言われて、大きなショックを受けたそうです。

やがて息子さんは意識も戻って元気になり、退院できましたが、今度は上の娘さんが小児ぜんそくになり、その後生まれた下の娘さんも小児ぜんそくになってしまいました。

さらに、お義父様が脳出血を起こして倒れ、そのあと認知症になってしまいました。そのうえ叔父様も重い障がいに認知症が加わりました。毎日、朝一番の仕事は排せつ物の処理。トイレを掃除して、おむつを取り換えて。そんな生活が5年ほど続いたということです。

カフェの窓は、亡くなった叔父様の部屋にあったもの。障害のある方のことも、そのご家族の気持ちも忘れないために

 

「ひめこらぼ」に出たことがきっかけに

山口農園の代表になってから、「越生の梅をもっと知ってもらいたい」と考えていたおり、2012年当時、農林水産省の事業を受けて、農林漁業に携わる女性どうしと異業種の全国ネットワークが新しくできていたんです。それが「ひめこらぼ」です。

由美さんは、出てみたことでとても衝撃を受けたといいます。女性たちが自分の意見を冷静に堂々と伝える姿勢がすばらしかったこと。また、若い女性の農家さんたちは、「みんな考えが古くて、私がやりたいことなんか一切やらせてもらえない」と言っていて、同じ悩みを抱えていることに気づくことが出来たのだとか。

ひめこらぼに出たおかげで、「自分の考えを外へ向けて発信していこう。埼玉の越生町が梅の名産地だと知ってもらうために、まずは山口農園が外から認められるようになろう」と、考え方を変えることができました。

今やセミナー、講演にもひっぱりだこの由美さん。笑顔がとてもステキ(山口由美さんTwitterより)

 

今度は若い人を育てたい

今は由美さんご自身がいろいろな人たちに育ててもらったという恩返しに、若い人を育てたいと思い、「新規就農」のお手伝いをしています。

農業大学校で講演したときに、「越生に来たらわたしが全力でサポートするから、農家になりましょう」と呼び掛けたら、去年農家志望の子が1人来て、今越生に住んで野菜農家として頑張っているのだとか。また今年も1人来てくれたそうです。

まだまだ農業は男性がやるものというイメージが根強いので、性別の壁を超えて、女性も活躍していけるよう基盤づくりをして、若い世代へ繋いでいきたいといいます。

2021年5月にオープンした梅凛caffe(ばいりんカフェ)外観。75年前の建物を利用している

メニューの一例。五右衛門風呂で作った窯で焼いたピザと、手作りのポタージュスープは多くのお客様から好評だ

 

2021年5月、山口農園の中に「梅凛caffe(ばいりんカフェ)」をオープンさせたきっかけというのが、みんなの夢を後押ししたかったから。

「体験だけでは伝えきれない梅の魅力や可能性を料理を通して伝えていきたかった」とも。カフェではシェフが日によって変わるスタイルにしており、ここでシェフをやってみて「自信がついた」と、自分の店を出す方もいます。

カフェでは、梅の品種や味の違いを楽しんでもらおうと、梅干しの食べ比べや、梅ジュース・梅酒の飲み比べができます。

カフェの建物は、75年前に蚕の飼育に使用していたものをリノベーションし、テーブルも当時の木材を利用したとのこと。また、元フレンチの料理人であった由美さんのお父様の登さんがおいしいフレンチを作っている日もあり、厨房で由美さんや若い人たちにお料理を教えています。

梅凛caffeの梅づくしのランチプレート。コロッケのじゃがいもは山口家の家庭菜園でとれたもの

取材の日、カフェ内には写真のメニューが手書きされており、由美さんがお誕生日にいただいたというお花も飾られていた

 

また、障がいのある方たちに山口農園で農作業をしてもらうというボランティア活動もしています。

そんな由美さんの夢は、季節を感じる丁寧な暮らしをしていくこと。時間に余裕がない毎日を送っているので、もっと気持ちに余裕をもって、季節を感じながら生活していくことを目標にしているのだそうです。そして長女の沙弓さんと農福連携(障がい者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組)をしていけたらと語っておられました。

 

越生の一番の特産品といってもいい、「梅ジュース」

飲みやすく果実までおいしい「梅ジュース」

 

梅ジュースづくりのワークショップは週1回以上行っています。やはり梅の品種によって、どんな加工品にするかの向き不向きはあるのだそうです。

筆者を含むカワゴエ・マス・メディア一行がこの日いただいたのは、「白加賀(しらかが)」という品種の梅から作られた梅ジュース。白加賀は1キロあたり800ml以上の果汁が絞れるため、梅酒や梅ジュースに最適な品種であるといいます。ジュースは自然な甘さですっぱくなく飲みやすいです。梅の果実まで食べてみると、実がしっかりしていて食べ応えがあり、おいしい。素材の味をとことん感じられる梅ジュースです。

梅凛caffeに梅加工品の販売コーナーも設けており、手作りの加工品が販売されている

またその他、梅干用の梅と塩のセット販売や、また傷がつくなどしてそのまま出荷できない梅の有効活用として練り梅、梅味噌などの加工品の製造・販売も行っています。梅凛caffeには、梅加工品の販売コーナーも設けています。

 

梅で人と人とを繋いでいきたい

梅凛caffeの看板には「梅で人と人とをつなぐ」という由美さんの思いが刻まれている

 

越生の梅を通して、人と人とをつないでいきたいという由美さん。自ら経営するカフェや、梅の加工品づくり・染色体験のワークショップ、毎年5月中旬~6月下旬に行っている収穫体験などを通して、コロナ禍の中でも感染対策を行いながら人とのつながりを大切にする活動を行っています。

「山口農園やカフェを、近隣の住民の方々はもちろんのこと、農園体験に訪れた人たちもふれあえる場にしていきたい」とおっしゃっていました。

山口農園HPより、体験プログラムのご案内(提供:山口農園)

 

ラジぽて縁結び~BREW-UP~にご出演いただきました!!

6月3日、17日にCOEDOビールCEO朝霧さん&大野ひろみさんがお届けしております『ラジぽて縁結び~BREW-UP~』 に番組初のゲストとして山口さん母娘をお招きし、ご出演いただきました!

梅にまつわるお話を賑やかに深堀りしていき、2回とも楽しい放送になりました。おかげで、「ラジぽて縁結びを聴いた」というファンの方からお誕生日にお花が届けられ、店内に飾られておりました。

和気藹々と番組収録が行われた山口さん親子出演回の様子(左から長女・沙弓さん、由美さん)

Information

山口農園&梅凛caffe

【住所】埼玉県入間郡越生町上野東4-13-6
【Tel】049-292-6358
【FAX】049-292-6358
【Email】yama511219528@yahoo.co.jp
【定休日】不定休(農園) 水曜日(梅凛caffe)
【営業時間】8:00~17:00(農園)11:00~15:00(梅凛caffe)※
 ※梅凛caffeはTwitterやInstagramに営業日や営業時間、日替わりシェフをお知らせしています
 ※当面の間、電話・SNSともに、当日のご予約は受け付けておりません。
 ※来店希望日の前日までに、ご予約をお願いします。(電話での受付:午前9時~午前11時)

【HP】https://www.yamaguchinouen.com/
【Facebook】https://www.facebook.com/yamaguchinouen.ogose
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