介護も子育てももっと男が参加できる社会になりますように~霞ヶ関の髙橋信彦さん

かつて、多くの商店が軒を連ねていた川越の角栄商店街のほど近くに、髙橋さんのご両親は前回の東京オリンピックが開催された1964年10月に東京・二子玉川から越してきました。

霞ヶ関に住む髙橋信彦さん(53歳)(以下、のぶさん)は、介護職で役職者として勤務しながら、高齢のご両親の介護に追われる日々。父、母、兄と4人で暮らしています。

のぶさんは大学を卒業してすぐに池袋の百貨店に勤めたあと、世界一周の旅に出て故郷の川越に帰ってきました。その間、「若い頃は両親には本当に心配をかけてきた」と言います。だからこそ、川越に戻ってきた今、親孝行がしたいとの思いで、介護休業を取得することにしたそうです。

のぶさんこと髙橋信彦さん(中央)と、父の信男さん(90)、母の嘉津美さん(86)親子

 

どんなときも両親をそばで見守りたい…

今年1月に母・嘉津美さんがご自宅で転倒、大腿骨を骨折して手術をしてから、誤嚥性肺炎→虫垂炎→腸閉塞→脳血管障害→再び誤嚥性肺炎になり、合計3回の手術に耐え、すっかり小さくなってしまった嘉津美さんを見て、なんとかそばにいてあげたいと思うようになったそうです。
 
また、1月には嘉津美さんが入院生活になったのとほぼ同時に、父・信男さんも体調を崩し、ご自宅でも酸素吸入が必要になりましたが、のぶさんとお兄さんが協力して懸命の看護を続けた結果、みるみる回復し、7月には90歳のお誕生日を迎えられました。
毎日親子喧嘩が絶えないそうですが、それでもやれることは精一杯やっていきたいというのぶさんです。
 

のぶさんと父信男さん。元気で信男さんが卒寿を迎えられたことを喜んでいる

 

介護休業への思い

のぶさんは先日、Facebookに介護休業への思いを投稿しました。
 
おうちに帰りたい。みんなに会いたい。そう思っている母親のために、一大決心をしました。
母親の最後の生活の場として、施設や病院ではなく、家族と一緒にもう一度、住み慣れた自宅で、
人生のエンディングを過ごしたい・・・・・
母親の希望を叶えるために、世話になっているリハビリ病院のスタッフが、こちらに提示して来た条件。

『介護の現場にいる息子さんが、介護休暇をとって、お母様の世話をしてくれませんか!?』

あたくしも悩みに悩みに悩みました・・・・・
慢性的な人手不足の業界ですが、幸い理解ある上司が、あたくしの背中を押してくれました。
厚生労働省が提唱している介護休業制度を、このタイミングで、思い切って取得することを決心しました。
9月から3ヵ月間、あたくしが中心になって、自宅で母親の介護をすることになりました。
(中略)
あとからみんなで振り返った時、『あの時、介護休暇とって本当に良かったね・・・・・』いつの日か、そんな瞬間が来る時を夢見て、精一杯精進したいと思います。
 
 

エレクトーンの講師だった母・嘉津美さんは、本当に音楽が大好き。今も音楽を聴いて過ごしている

 

まだまだ『男は仕事・女は家庭』の世の中を変えていきたい

日本社会では、まだまだ『男は仕事・女は家庭』という価値観があります。
のぶさんの願いは、愛情込めて大切な人に寄り添いながら生きること。
それが人生の原点であり、幸せなんじゃないかって思うんです。と。
 
もちろん、その大切な人が生きててよかったと言ってくれることが一番の喜びだと思うし、それには男も女もないと思うというのぶさん。
母・嘉津美さんも、自宅の防音室にエレクトーンを置いて、家で音楽教室を開きながら、3人の子供を育ててきたそうです。そうやって苦労して愛情込めて育ててくれたお母さんを、しっかりケアしていきたいと言います。
 

のぶさんを育んだご両親の手。お父さんが、お母さんの手をしっかり握っている

 
 
のぶさんの職場では介護休業取得は5人目、役職のついている男性職員では初めて。これだけの決断をするには、非常に勇気が要ったことでしょう。自分が介護休業を取得することで、今後高齢化社会を支えていく男性たちの先駆者になれたら、と言います。
 
大好きな人たちが笑顔で生きられることが、一番というのぶさん。
介護休業だけでなく、育児休業も男性の取得者が増えて行けば、とのぶさんは願っています。今年に入ってからすっかり体調を崩してしまったお母さんの、自宅に帰りたいという願いをどうしても叶えたい。のぶさんは、「男性だって、もっと介護や育児に参加していいと思う!」と、話してくださいました。

『母親が、もっと生きたいと思ってくれたら…』

母・嘉津美さんは、大分県の水郷日田市出身で、8月20日が86歳のお誕生日。そしてこの日に今年4回目の手術を受けることになっています。予後が順調であれば9月には退院し、ご自宅に戻られる予定です。
家族の愛を感じながら、これからも幸せな時間を過ごされますように。
 

どんなに呆けて小さくなっても、世界で一番の最高の母親です。そばに居られるだけで、最高にしあわせです。byのぶ

 
 

Information

髙橋信彦さん

 
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