地元だからこそ伝えたい地域の誇り〜映画『武蔵野』川越(霞ヶ関)地域上映会〜

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取材・記事 白井紀行

 

川越市・所沢市・ふじみ野市・狭山市・三芳町の五市町は三富と呼ばれる地域。

この辺りでは、伝統的な「落ち葉堆肥農法」が360年以上続けられています。

火山灰に覆われ作物が育ちにくかった武蔵野台地。

荒地の開発のため川越藩は農家の人たちに木を植えさせ平地林を造成させました。

この平地林を「ヤマ」と呼び落ち葉を畑の堆肥にして還元する江戸時代からの伝統農法。

都心近郊の広い地域で落ち葉堆肥農法が守られているのは奇跡的だと言われるほど。

それを後世に伝えるため製作されたドキュメンタリー映画「武蔵野」。

原村政樹監督が3年の歳月をかけ、2017年11月に完成しました。

 

2018年は埼玉、神奈川、新潟、大阪、兵庫、京都など各地で上映を実施。

この映画を地元でもっと応援しようと企画されたのが地域上映会。

1月27日(日)に川越市南文化会館(ジョイフル)で開催され150名を動員。

続いて、2月3日(日)に川越市西文化会館で開催されました。

 

上映会準備

映画の上映は10:00と13:00の2回に加え原村監督のトークショー。

ロビーでは千木良宣行氏の武蔵野「絵画展」。

地元農家のお米の販売やかわごえ里山イニシアチブの活動紹介も行われる。

これを支えるために集まったボランティアスタッフは17名。

映画「武蔵野」プロデューサーの鈴木敏夫氏が1日の流れや割り振りを説明します。

 

開場まで1時間あまり、スタッフ総出で会場設営。

ロビーに受付用の机を並べ、案内板、ポスターを館内各所に貼っていきます。

 

こちらは霞ヶ関地区で江戸時代から米作りを行っている「三村農園」ブース。

籾殻、糠、藁といった米作りの副産物を堆肥とした農法を行っています。

 

当ブログではお馴染みの「かわごえ里山イニシアチブ」

活動の紹介と乾燥マコモとマコモ茶の販売。

 

受付の準備も整いました。

 

開場しました

9時半の開場時間となり前売りチケットを持ったお客さんが続々と来場。

原村監督も受付に立ちお客さんを出迎えます。

 

上映時間が近づくにつれ徐々に客席も埋まってきました。

 

満員とはいきませでしたが、まずまずの入り。

 

上映にあたって(挨拶)

本日、司会を務めるのは鈴木プロデューサー。

昨年の3月には川越スカラ座を始め、大阪、神戸、京都でも上映したことを紹介。

今年も多くの人に見てもらいたいとあちこちに働きかけているのだそう。

3月には「ポレポレ東中野」の上映が決まりました。

 

続いて、今回の上映会の集客に尽力したスマイリーのぶさんが登場。

東武東上線霞ヶ関の西側にある角栄商店街のそばに生まれたまさに地元人。

地元を元気にしようと活動をしてきた中で、原村監督と出会ったこと。

チケット販売に日頃親しくしてもらっている飲食店にご協力いただいたこと。

会場を見渡せば見知った顔ばかり。地元で上映できる喜びに溢れた挨拶でした。

 

スクリーン一杯に武蔵野の美しい平地林が広がり映画が始まりました。

一家総出で落ち葉を集めて堆肥にし農作物を育てる農家の様子。

開発の波に呑まれ木が切り倒され倉庫や産廃置き場へと変わる現実。

平地林を守る活動、切り倒した木を使った家具の制作…。

どんなに時代が変わっても、変えてはならないものがある

武蔵野の自然と四季の映像とともに監督からのメッセージが描かれています。

 

オーケストラの荘厳な音楽とともにエンドロール。

作品の完成には、市民プロデューサーと呼ばれる多くの支援者も関わりました。

 

記者もReadyforのクラウドファンディングで協力。

スクリーンに自分の名前が乗るという初めての経験でした。

 

武蔵野を語る(トークショー)

上映が終わると原村雅樹監督と音楽を担当した鈴木光男氏が登場。

映画についてのトークショーがスタート。

 

原村雅樹 監督

映画「武蔵野」に登場した大木さん一家の近くに10代の頃から住む原村監督。

農業をテーマとしたドキュメンタリー作品をライフワークとしています。

この映画を撮るきっかけは、NHK-BSの新日本風土記で川越を担当したこと。

放映後に蔵の街や川越まつりを取材した先にお礼に伺うと、

「川越で伝統農法をまだやっているんですね」といった感想をもらう。

それで、江戸時代から続く旧家でさえ知られていないんだと気づきました。

【参考】NHK新日本風土記アーカイブズ▼

https://www2.nhk.or.jp/archives/michi/cgi/detail.cgi?dasID=D0004990458_00000

 

農業も海外の裕福層に高く売れば良いと工業製品のようになってしまった。

例えば、スマホは10年もしないうちに買い換えられ古いのはゴミとなる。

環境を破壊しながら経済成長している日本のサイクルは本当に正しいのだろうか?

川越では今も自然のサイクルに沿った伝統農法が守られている。

これは世界的にも類をみないこと。

その価値を多くの人に知ってもらい記録として残していきいたい

もっと人間が穏やかに心豊かに暮らしていくにはどうすれば良いのか?

それを農業から伝えたいと。映画に込めた思いを観客に熱く語りました。

 

作曲家 鈴木光男さん

クラウドファンディングのページで共感して監督に声をかけたという鈴木さん。

ドキュメンタリーは初めてでなかなか音楽の方向性を定められなかった。

監督に平地林に連れていってもらい発見した武蔵野の壮大さ雄大さ爽やかさ優しさ。

映画中盤のオーケストラにはそのイメージが反映できたそうです。

鈴木さんがこだわったのは生オーケストラで生演奏をして録音したこと。

「自然の映像には本物の演奏にある空気感がとても良く馴染む。

贅沢な話だが、コンピュータを使って映画を壊したくなかった」と話しました。

オープニングの「春」、エンディングの「芽」はこちらで聞けます。
https://soundcloud.com/mitsuo-suzuki

鈴木さんは原村監督の次作「お百姓さんになりたい」でも音楽を担当します。

 

三村農園・三村恵之さん

三村さんは地元川越市吉田で江戸時代から続く米農家。

2011年3月に原発事故が起こるまでは落ち葉堆肥農法を続けていました。

今は、落ち葉を使わずに籾殻、糠、藁を腐らせて堆肥で米作りをされています。

 

最後に、3月22日〜28日のフォーラム山形、3月23日からのポレポレ中野での上映。

そして、映画「武蔵野」の続編に位置する次作「お百姓さんになりたい」の案内。

主役となる明石農園は多くの農家に接してきた原村監督が初めて出会った農家。

「農業を通して人と人とが心を通わせ行く人間関係を描いた」

すでに問い合わせが入り川越スカラ座での上映も決定しています。

ここでも上映して頂ける良い映画に仕上げたいと語りトークショーを終えました。

 

三村農園のブースでは、農薬を使わずに育てた「彩のきずな」が人気。

用意した分では足りず追加して、1俵(60kg)が売れたそうです。

 

こちらでは映画を見た感想をアンケートを募集。

 

「武蔵野の四季の美しさを映像から感じることができた」

「江戸時代から受け継がれる伝統農業の素晴らしさを知ることができた」

「世界遺産へと働きかけて後世に残していきたい」

頑張ってくださいという応援とともにたくさんのメッセージを頂きました!

 

千木良宣行「武蔵野」展

上映イベントと同時開催された千木良宣行氏の「武蔵野」展

 

30代の時に川越今福に移り住んだという千木良さん。

そこで武蔵野の平地林の美しさに出会いました。

 

大手会社で設計の仕事をしていましたが定年を待たずに会社を退職。

独学で油絵を身につけ、30年近く武蔵野の平地林を描き続けています。

少しお話しさせて頂ましたが、今流行りのAI(人工知能)にも知見のある方。

どんなに技術が発展したとしても所詮機械にしか過ぎない。

平地林から何かを感じて表現することは人間にしかできないんです。

この言葉は原村監が映画で伝えたかったことに共通している気がします。

 

平地林の四季の美しさを描いた数々の作品に大勢の人が見入っていました。

 

千木良さんを真ん中に記念写真。

映画「武蔵野」が、また、新たな出会いを生み出しました。

 

ランチタイムにスタッフが絶賛したこちらの豪華なお弁当。

蓮馨寺の参道である立門前通りにある小江戸カントリーファームの特別製。

食材は全て霞ヶ関にある八百屋さんカントリーファームが仕入れたもの。

食べるという形でも地元と繋がった上映会でした。

 

上映会が終わりました

第2回の上映会が終わり会場を片付けてホッと一息。

鈴木プロデューサーからスタッフに御礼の言葉が述べられました。

 

今日一日お疲れ様でした!

 

成功の乾杯ももちろん地元で!

 

原村雅樹監督と知り合ったのは2017年7月1日。

当法人の事業「くらびとファンディング」がきっかけでした。

それまでもかわごえ里山イニシアチブの取材などで農業へ目は向けていました。

しかし、江戸時代から360年以上続くという落ち葉堆肥農法は知りませんでした。

映画「武蔵野」が無ければ、これほど深く関われなかった気がします。

今年も各地で上映会が行われ、続編となる「お百姓さんになりたい」も春に完成。

大都市圏に残る広大な平地林、そこで脈々と継承される伝統農法。

それを知ってもらい多くの人に広め、後世への記録する役を担う映画「武蔵野」。

本ブログでも引き続き記事にしていきたいと思いますのでご期待ください!


INFORMATION

映画『武蔵野』川越(霞ヶ関)地域上映会

【日時】平成31年2月3日(日)10:00〜16:00

【住所】川越西文化会館(メルト)川越市鯨井1556-1

【主催】映画「武蔵野」製作委員会

【HP】http://www.cinema-musashino.com/

【FB】https://www.facebook.com/musashinoagriative/

 

Readyforによるクラウドファンディングはこちら!

https://readyfor.jp/projects/ohyakushousan2019