川越一番街商店街シリーズ~中田純平さん「陶舗やまわ」専務取締役~

 

寒さも徐々にゆるみ始め、春はもうすぐ、と思っていた矢先に世の中は一変してしまいました。

新型コロナウィルスの世界的感染は、今までそこにあった「日常生活」がどこか遠くにいってしまった、そんな気持ちになった方が多いのではないでしょうか?

それまで季節、曜日を問わず、あふれんばかりの観光客で埋め尽くされていた蔵の街一番街商店街も、人々の姿が消えてしまいました。

ニュース情報番組でも「閑散とした観光地」として蔵造りの町並みも何度か取り上げられており、その様子はご存知の方も多いと思います。

 

いつもは賑わっている蔵造りの通りの真ん中あたりに「陶舗やまわ」さんは位置しています。

NHK連続テレビ小説「つばさ」の『甘玉堂』ロケ地にもなったこともあり、蔵の街の象徴のひとつともいえる重厚な店構えが印象的です。

その「やまわ」の専務取締役である中田純平さんに、このコロナ禍の中で何を感じ、どうすごしてきたのか?を中心にインタビューしました。

店舗前で

ドラマの舞台にもなった店舗前で

 

 

中田さんは、青森生まれ。大学3年目から川越で約4年間をすごし、結婚を機に2012年から「陶舗やまわ」に勤め、4代目(現在は専務取締役)となりました。 現在は一番街商業協同組合副理事も務めています。大学生の頃は、すでに賑わいつつあった川越を、いち観光客として訪れたこともあったと言います

 

いつもと違う春の風景・・

常に多くの観光客が行き交っている蔵の街。そんな姿しか知らない中田さんでしたが、お店に立っていて新型コロナの影響が出始めたと感じたのは3月末頃でした。しかし街は、若い層を中心に、まだ着物で街を歩く人が多い時期でした。

 

「もともと閑散期ではあったのですが、外国の方やツアーも減ったなと感じました。そのときは、うっすらとした不安はあったものの、それより、もうすぐ春、ゴールデンウィークや観光シーズンが控えている、とそちらに気持ちがいっていました。でもまさかここまでひどくなる(感染が広がる)とは思ってもみなかったです」

今年のGWの蔵の街の様子

これが今年の5/1の11時半ごろの蔵の街の様子(中田純平さん提供)

 

4月に入りまもなく政府から緊急事態宣言が発令、不要不急の外出自粛の要請がされ、一番街商店街からも人が消え、休業する店舗もでてきました。

やまわさんでは、陶芸教室と喫茶店の「話処 陶路子(とろっこ)」は休業。陶器販売している店舗は営業を続けていました。

 

「うちでは茶碗や箸といった日用品を扱ってはいますが、右へならえで、お店を閉めるべきなのか悩みました。そもそも人もあまりいませんでしたしね。でも、わずかですが、お店に足を運んでくれるお客様もいらっしゃいました。わざわざいらしていた方に『あいていてよかった』とほっとしてくださればいいな、という思いがありました」

店舗内

色とりどりのお茶碗やグラスがならぶ

 

商店街では・・・

当時のニュースでは、営業を続ける店舗に対していやがらせをする行為、いわゆる“自粛警察”の存在が報じられていました。やまわさんではそのような被害はなかったものの、お店を開けていた飲食店等では、心無い言葉を浴びせられたり、貼り紙が貼られたりということも耳にしたそうです。

 

そんな中、商店街としてこれからどうしていくべきか、という話し合いももたれていました。商店街の様子を見回りに来た理事長と立ち話をしたり、Web 会議アプリケーションのZoomやSNSを駆使して、他の店舗の方とも随時コミュニケーションを取り続けました。

zoom会議の様子

Zoom会議の様子(中田純平さん提供)

 

「みんながみんな、SNSなどのツールを使えるわけではないんです。しかも休業するお店も多く、回覧板も回せず情報がいきわたらない。とりあえず、SNSなどでコミュニケーションできる人たちに発信していきました。直接はつながりがなくても、他のお店の方を通せばなんとかなるといったことがわかりました。ヨコは結構つながっているんですね。なんとかうまく周知することができました」

 

やまわの取り組み・・

お客様が減ったとはいえ、お店を開けている以上はいつ来店があってもいいように、店内の清掃はかかすことなく、ディスプレイの変更や、在庫整理等は続けていました。

飛沫感染防止用ビニールカーテン

レジの前には、飛沫感染を予防するための、ビニールカーテンを設置した

また、今の状況をポジティブに考えればこれも一つのチャンスになると考え、こんなときだからこそ動けることを積極的に取り組み始めました。

お問い合わせがあったときのみに対応していた通信販売ですが、あらたにECサイトを立ち上げることになり、今準備をしている最中とのことです。またお店で取り扱っている陶器の写真をInstagramにあげはじめると、そのセンスにたくさんのいいね!がつくようになりました。

 

陶舗やまわさんのInstagramより

 

陶芸教室は長期教室日程にあわせて6/11(木)に再開。教室内には消毒液を設置、お互いが向き合わないように、ろくろの位置なども変更しています。

地元のファンも多い「話処 陶路子」は、県外からの移動制限が解除される6/19(金)に先んじて6/18(木)に再開されます。席数も少なくして、隣との間隔を広く保つレイアウトに変更しています。

 

緊急事態宣言があけて、そしてこれから・・

商店街の多くのお店は、業種、業態ごと個々に感染拡大防止の対応をとり、停滞していた経済活動を再開し始めました。

昨年の今頃とは、もちろんくらべものになりませんが、インタビュー取材当時(6/9)は、蔵の街界隈は少しづつ賑わいが戻ってきているようでした。

 

「まだまだ(新型コロナウィルスは)怖いですが、川越の街にそして、お店に来ていただけるのはありがたいなと思います。人に会えること、接客できることがこんなに嬉しい事なんだな、としみじみ思いました。市外からの方かもしれませんがお客さんには『普段はこんなもんじゃないんでしょ(笑)』と気を使って(?)声をかけていただいたり、『こんなにゆっくり買い物ができたのは久しぶり』という声も聞きました」

笑顔の接客

来店したお客様から応援されることも

 

普段は忙しく、お店では最低限の会話しかしてこなかったという純平さん。今はお客様の方から声をかけてくれ、マスク越しで思わず会話がはずむことも。

久しぶりに堂々と街に出かけられて嬉しいといった様子も伝わってきたと言います。

 

「一番街で商売をやっているとよくわかるのですが、一つのお店だけが良くなってもダメなんです。一番街の町並みやにぎわいを楽しみにお客さんは来ています。それに、一番街だけを守っていてもダメなんです。近隣の商店街もどこも欠けることなく一緒に、小江戸川越の賑わいを取り戻していきたいですね」

 

まずは、安心して川越に来ていただけるよう、商店街全体の衛生面の意識を変えるのはもちろん、海外の方にもわかりやすいピクトグラムやイラストを使ったユニークな注意喚起のサインも考えているそう。

また、今後様子を見ながらではありますが、商店街で小さなイベント開催も思案中だそうです。

 

昔はお客様より猫の方が多かった(!)とも言われていたそうですが、そこから先人たちの努力によって大勢のお客様に来ていただけるようになりました。そんな多くの人たちで賑わっていたところから、一気にゼロになり、まるで山から谷底に突き落とされたかのような思いだと言います。

しかし、コロナ禍の状況下で、あらためて自身の暮らし方、商売や商店街の未来について考える事も多くなったとのこと。

 

「色んな不安はまだ消えないです。状況は今、確かにどこも厳しいです。そこからまた元の賑わいを取り戻していくのは、なかなか大変なことです。でも美しい街並みは残っていますし、いつまでも残していきたい。今までの川越(一番街)にはない、新しい発見や楽しみがあるような街になるように引き続き取り組んでいきたいと思っています」

笑顔

お店があく前に撮影に付き合っていただきました

 

取材に際しては、適度な距離をとっていただく等、中田様にお気遣いいただきました。

ありがとうございました。

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今は観光事業にとっては、インバウンド需要が見込めない状況になっています。また、日本から海外旅行に行くにもちょっと躊躇してしまうそんな人も多いと思います。

星野リゾート代表の星野佳路さんが提唱する「マイクロツーリズム」という観光の形があります。
ざっくりというと、地元や身近な地域を観光してみよう、ということです。

ご参考:マイクロツーリズム(Wikipedia)

都心から電車でわずか一時間ほどの蔵の街周辺にも、元の賑わいが戻る日ももしかしたらそう遠くないのかもしれません。

今までの川越観光といえば、日帰り、食べ歩きのお客様が多い印象があります。

中田さんの「今までの川越(一番街)にはない、新しい発見や楽しみがある街に」という言葉に、小江戸川越の街歩きや観光も、これを機に何か変化をみせるのだろうか?・・・そんなことを思ったインタビュー取材でした。

取材・記事・写真 本間寿子


Information

陶舗 やまわ

【住所】埼玉県川越市幸町7-1

【電話】049-222-0989【FAX】 049(222)0948

【営業】10:00  ~ 18:00

【定休】不定

【HP】https://www.touho-yamawa.co.jp/

【Instagram】https://www.instagram.com/touhoyamawa/

【Facebook】https://www.facebook.com/touhoyamawa/

話処 陶路子(とろっこ)

【住所】埼玉県川越市幸町7-1

【電話】 049-226-1065

【営業】10:00  ~ 17:00 /ランチ 11:45 ~ 15:00

【HP】https://www.touho-yamawa.co.jp/truck/