レポート:まち歩き物件探索ワークショップ~川越路地裏ツアー~

タイトル
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KAWAGOE〼MEDIA

 

1/29(金)川越市主催の「まち歩き物件探索ワークショップ~川越路地裏ツアー~」が行われました。

この取り組みは“川越の中心市街地を散策し、路地裏に眠る魅力的な遊休不動産を発掘するとともに、空き家・空き店舗の再生とまちの可能性を探る”(川越市公式サイトより引用)を目的として開催されました。

講師として東京R不動産を運営している株式会社Open A 代表取締役 馬場正尊氏が登壇しました。

馬場先生は街・都市・建築にメディアを絡めて、新しい視点から定義し、各地のリノベーション事業に携わるスペシャリストです。 今回は参加者と一緒にまち歩きをし、ワークショップを行い熱気ある時間を共有しました。

‖ ガイダンス

平日の昼間にもかかわらず、新しい事業を始めようという人や地域メディア、またリノベーション事業の担い手となる人等、様々な立場の方々、37名が参加しました。

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川越市役所の職員の方の挨拶に続き、講師をつとめる馬場先生からのご挨拶がありました。

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「ふつう初めてまち歩きワークショップをやると、なんとなく興味があるといったふわっとした感じになりがちです。しかし、参加者の面々を見ていると、川越の人は本気でがっつり取り組みたいという気概にあふれている。物件の方も、すぐにではないけどもしかしたら本当に借りれられるかもしれないような物件を、市役所の方になんとなくリクエストしたのですが、それを血眼になって探し出し、オーナーさんと交渉してくれました。だから街を理解するといったようなモードとはちょっと違いますね。何かを動かす第一歩のリアルなワークショップだと思っていただいて良いと思います。 

これは長年、町(市)が蔵や街の再生を民間ベースで行ってきたという歴史があること、そこにたずさわる人材の豊富さがあるからこそと感じています。

とはいえ少し裏通りに入るとまだ空き物件がある。第一期の取り組みとして僕ら上の先輩たちが、街づくりに取り組んできて、有名な街になってきた。参加者を見ているとみなさんはその次の世代なんですよ。だから新しい世代なりの川越の街を作っていく、未来を描いていくスタートが今日のワークショップなんじゃないかな?と思います。」

 

続いてワークショップのファシリテーターを担当する公共R不動産の飯石藍さんから、ガイダンスと本日のながれをお話しいただきました。(実は飯石さん、高校は川越で、特に市街地は3年間通った思い出の場所とのこと。街の変化に触れ、さびしいような嬉しいような、でもとても感慨深い思いですとおっしゃっていました。)

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まち歩きワークショップのポイントは

・物件だけでなはく、その周辺エリアに対してもどういう価値を見つけていくか?を大切に

・地域の資源は街の潜在能力。 お宝をさがすつもりで!

・一見ダメなもの(空き家、使われていない公共施設等)に価値を見出す。ポジティブに考える。

・今あるものを活かして新しいまちの使い方を提案する。

 

「そして、これらをみつけて、つないで編集してつむぎだしていって欲しいのは思いもよらない川越の未来の暮らし方です。どうしたら川越で楽しく暮らし続けていけるか?をみなさんと一緒に考えて行きたいと思います。」

と飯石さん。

 

今回のワークショップは各チームごとそれぞれにエリアと物件が仮に設定されています。 自分のチームの担当エリアの物件の魅力や可能性を見つけ出しそこに新たな価値をつけ、最後には皆さんに向けてプレゼンテーションします。

「自分たちが見てきた地域のお宝を全参加者に伝える気持ちで」取り組みます。

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もし他のチームのプレゼンをみて、自分でやりたいと思っていたことに合致する物件なら、市の担当者などにに掛け合えば、もしかしたら・・・可能性があるかもしれませんと、馬場さん。

チームは全部で4チーム。参加者37名が各チームに分かれ、指定された物件お呼びその周辺エリアの散策を行うことになりました。

 

‖ まち歩き物件散策

小雨降る寒い中いよいよ、まち歩きがスタート。

今回はカワゴエ・マス・メディアの記者も、あるチームに同行して参加者の皆さん同様にまち歩きを体験してみました。

 

「自分たちが見てきた地域のお宝を全参加者の伝えるつもりで」

 

それを意識してまち歩きをすると、見るものが心に引っかかるようになってきます。

いつもの街が、ちょっと違った顔を見せてくれているかのようです。

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ときには立ち止まり、見上げ、馬場先生と一緒に建物や通りなどを新しい可能性を探りながら物件に到着。

その物件は築年数が経っているということで内部は傷みもあり、かなり古びた印象を受けるものでした。

記者は外観や部屋の様子を中心に見ていたのですが、物件だけでなくエリア全体を見渡してみると、実は大きなポテンシャルを秘めた「お宝」だということに後で気づいたのでした。

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その後は蓮馨寺周辺をまち歩き。

この辺りは、ちょっと置いて行かれたような不思議な時間が流れるエリア。

蓮馨寺から北へ真っすぐ伸びる参道の様子(右下)にも馬場先生は興味津々。

数多くの「お宝」を発見して興奮しているようにみえました。

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雨の中のまち歩きを終えて、各チームではプレゼンに向けてディスカッションが始まりました。

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‖ プレゼン発表

いよいよみなさんがみつけてきた「お宝」の発表です。

各グループより「エリアの可能性(ポテンシャル)」「エリアの名前」「物件の可能性」「物件の活用提案」が発表されました。

観光客などの人通りこそ見込めるが、入口が建物の側面にあり入りづらそうな事務所、時代に取り残され朽ち果てたような古い店舗、静かな住宅街にある天井の高い作業場、観光地と住宅地を結ぶ商店街にある店舗の2階スペース。

一見すると活用が難しいと思われる物件が、参加者の新たな視点とアイデアで魅力あふれる空間となりました。

例えば、

広めの作業場を複数のアーティストでシェアして、アートの創造基地にしてそこでものづくり教室などを開催。

古い店舗はそのたたずまいと人の流れの変化をとらえ、昼はカフェ、夜はノスタルジー溢れるバーに、夜の川越の魅力発信スポットに。

人(観光客、住民)が多く行き交う場所にある物件は結節点としての役割をもたせ街のコンシェルジュとして情報提供場所や休憩場所に。

物件のみならず、エリアの隠れた特長を生かした活用アイデアが各グループより提案されました。

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‖ 講師講評

すべてのプレゼンテーションが終了し最後に馬場先生から総括がありました。

「この短い時間でどうかな?と思いましたが、さすがポテンシャルを感じさせるものでした。今日のたったこれだけのワークショップで次の川越のポイントが具体的に見つかった気がします。

一つは『夜の川越』、川越の今までの観光は昼間が中心です。しかし、お金を落としてくれるのは昼間より夜です。夜の川越(観光)が盛り上がれば、宿泊も欲しくなる。そうすると、わざわざ泊まっていこうという人も出てくるかもしれません。街に住んでいる人も都内で飲んで帰るのではなく、川越に帰って飲むということができます。

もう一つは『結節点』、結ぶということです。人と人の結びつきはもちろん、表の川越ともう一歩奥に入って裏の川越といったちょっと深めの情報の結節点。通りと通りの物理的な結節点。 この結節点をどうデザインして、ここからどう街を変えていくか?だと思います。

また、市役所の方の頑張りもあったと思いますが、物件が安い!実際ここで事業を始めてもうまく(経営が)まわるんじゃないかな?と思うものもありました。川越にはまだまだ空き物件の可能性があるんだなと改めて思いました。

今日のワークショップは、今後に続く川越の新しいタイプの変化のスタートになればいいなと思っていました。

もしこの取り組みが来年度にも続くとしたら、一体これをどういった方法で具現化するのか?オーナーとどう交渉するのか?役所などとどう調整するのか?投資対効果はどうなのか?プロモーションはどうするのか?きわめて具体的なアクションを起こすのが来年と思っていました。しかし、名簿を見るとおそらく半分くらいの人が、ぼんやりだけど川越で何かやりたいと思っている、やっているけどもっとアクセルを踏みたいと思っている人なんじゃないでしょうか?

今日のはただのワークショップだと別に思わなくてもよいです。川越市と一緒に次のアクションを具体的に起こしていこうと、動いてもらってもよいと思います。たとえば僕ら(OpenA)は技術的アドバイスできるかもしれない。川越には地元メディアもあるし、いろんなプロモーションの手段もある。今から自分でやろうとしていることを発信するメディアをあらかじめ押さえていくと色んなことができるはずです。

今までまち歩きワークショップというのは何回かやったことがあるんですが、こんなに具体的なものがたった4時間ででてくるものなのか?とちょっと驚いています。それはたぶん川越という街のポテンシャルなんじゃないかと思います。この感じでガンガンいきましょう!」

 

参加者の中には、お店を開きたいとすでに具体的に考えている方がいました。今回のワークショップによってさらに実現のイメージが描けるようになったのではないでしょうか?

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‖ ワークショップを終えて

事業をやりたいと真剣にかつ具体的に考えている人はいる、そして今回のサンプル物件には驚きの声があがるほど安いものもありました。

ならば、あと何があれば現実的な一歩を踏みだすことができるのだろうとカワゴエ・マス・メディアでは考えてみました。

もちろん家主さんから理解を得る事は大事です。あと忘れてならないのは周辺住民の理解を得る事です。

また、需要(借り手)と供給(貸し手)を結びつけ流通するような仕組み作りも必要でしょう。

しかし、大事なことは様々な環境が整うまで待つのでは無く、今回のワークショップのルールにもあったように、まずは今あるものから何ができるかにフォーカスをあて、そして取り掛かっていくことなのではないかと思います。

従来の景観や文化財保護目的の改修事業に加え、起業を促す事で新しい価値を創造し展開するこの新しい切り口の川越市のリノベーション事業、今後も取り組みに新たな動きがありましたら、レポートをしていく予定です。

お楽しみに。

取材・写真・文 白井紀行・本間寿子


INFORMATION

まち歩き物件散策ワークショップ〜川越路地裏ツアー〜

【日時】平成28年1月29日(金)13時〜17時で開催しました。

【内容】川越の中心市街地を散策し、路地裏に眠る魅力的な遊休不動産を発掘するとともに、空き家・空き店舗の再生とまちの可能性を探るワークショップ。

【会場】中央公民館他

【対象】リノベーション事業に関わってみたい方、市内で起業をお考えの方、市内の不動産オーナーの方、リノベーション事業に関心のある不動産業や金融機関の方、市内商店会の方など。

【主催】川越市産業振興課