川越でユースクリニックを毎月開催!~こころとからだの相談をしよう!
皆さんは、性教育というと、「いやらしい」とか「恥ずかしい」といったイメージはありませんか?筆者はだいぶいい年齢になりましたが、ユースクリニックを取材させていただくまではまだまだそんなイメージがありました。自分の子にはたとえばですが「大切なところは誰にも触らせてはいけない」「結婚するまで性交渉してはいけない」などと漠然としたことしか伝えられない大人も多いかもしれません。それ以前に、わが子には性教育の情報にアクセスさせたくないと思う親御さんも多いかもしれません。

鉄分が不足しがちな女子のためのレシピもユースクリニックで配布している
ユースクリニックとは?
「ユースクリニック」は、スウェーデン発祥の「若者支援施設」で、1970年代に当時世界的に流行しつつあったエイズ対策のために作られたのが始まりです。若者のためのクリニックってなんだろう?と思いがちな日本人ですが、学校や家庭では性教育にはどうしても規制があったり抵抗があったりして、伝えられないことがたくさんありがちです。

ユースクリニックでは生理用品も展示してあり、手に取ってどのようなものかを確認できる
「一般社団法人 彩の国思春期研究会」が運営する「若者のための街の保健室たんぽぽユースクリニック」は、保護者の同意がなくても思春期の若者がからだやこころ、性の悩みを専門家に気軽に相談できる場所です。性教育の本や最新の生理用品、避妊具などを展示し、その使用法について学ぶことができます。
絵本の展示やワークショップを行い、保護者や小さいお子さんでも気軽に立ち寄っていただけます。関心のある方なら老若男女どなたでもお越しいただけます。
「一般社団法人 彩の国思春期研究会」では、埼玉県内の自治体や学校、民間企業や関連職能団体と連携を図り、活動実績として、2023年5月から現在までユースクリニックを50回以上開催しています。

ユースクリニックは性教育だけではなく、からだのことをもっと知るきっかけにもなる
日本の性教育の課題
日本の性教育は、学習指導要領に定められた内容を中心に行われていますが、「性交について触れてはいけない」という制約のため、正しい知識を十分に提供できていない現状があります。また、性教育を受けられるかどうかは学校や地域によって差があり、性に関する知識不足や偏った情報の影響で、若者が適切な判断や行動を取れない場合も少なくありません。またSNSなどネットの情報も多く、誤りや悪意のある情報もあって、若い人たちが何を信じてよいのかがわからないところもあるようです。
さらに、緊急避妊薬の高額な費用や入手の難しさ、妊娠検査薬購入への抵抗感、性感染症検査のアクセスのしづらさなど、若者が直面する課題は深刻です。どこにそういったものを買いに行けばいいのかがわからない。特に、思春期の若者が性やからだ、こころの悩みを相談できる身近な場の不足は、若年妊娠や性犯罪、性感染症の拡大につながっています。

ユースクリニックではいろいろな避妊法とそれをどこで入手できるかを紹介している
これらの課題を解決するため、地域に根差したユースクリニックの開設と常設化が求められています。パートナーや自分のことを大切にするために必要な性教育がなされないまま、私たちは大人になってしまいました。若者が気軽に相談や情報提供が受けられる場として、ユースクリニックが広がっていけばいいなという思いで、一般社団法人彩の国思春期研究会は中学校、高校、大学だけではなく、街の中にも活動の場を広げています。

街の中、本川越の「すくすくかわごえ」でユースクリニックが開催されるようになった
毎月開催!「若者のための街の保健室たんぽぽユースクリニック」
本川越にある「すくすくかわごえ」では、毎月「若者のための街の保健室たんぽぽユースクリニック」を開催しています。予約不要で、無料、匿名で、産婦人科医、保健師、助産師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士、社会福祉士、教員などの専門家に性やからだ、こころについての相談をすることが可能です。

ユースクリニック入口。若者たちがからだのことをもっと知るためのきっかけになれば。
子宮がんに関するブースでは、がん検診に使用する器具の展示もあり、これは大人でもなかなか見る機会がないもの。筆者も初めて見ましたが、内診台の向こう側でこのようなことをしていたのかと、新しい発見になりました。
またワクチンに関する情報もあり、最近では20代から30代の方も子宮がんにかかっているので、ワクチンを受けられる年代の方は受けたり、それ以上の年代の方は検診を定期的に受けて早期発見することが大切ですね。

子宮がん検査についてのブース。大人でもなかなか見る機会がない検査の器具なども展示
また、ユースクリニックには子どもも楽しみながら性教育を学ぶことのできるブースもあり、かるたや絵本などを通して勉強することができます。大人向けの本の展示もされており、閲覧もできるので、書店ではちょっと気恥ずかしくてなかなか手に取ることのできない本の中身も確かめることが可能です。

会場内には子どもも楽しく性教育を学ぶことができるかるたの展示も

年代別向けに分けられた書籍の展示コーナー

コンドームケースをつくるコーナーでは、子どもたちは自分だけの装飾をしてかわいいケースにアレンジ!
「一般社団法人 彩の国思春期研究会」代表理事 高橋幸子さん
高橋幸子さんは、埼玉医科大学 医療人支援センター・地域医学推進センター/埼玉医科大学病院 産婦人科医であり、性教育をしたくて産婦人科医になりました。今では年間100件を超える性教育講演会を小学生・中学生・高校生・大学生に向けて行っています。
ユースクリニックに取り組んだきっかけ
中学3年生~高校生向けの性教育講演会では、「緊急避妊薬・妊娠検査薬・性感染症検査は保健所で」などを学びます。しかし、残念に思うことが何度もありました。知識があるということと、道具を手に入れて自分を守る、行動ができるということは決して同じではないと実感する出来事を目の当たりにしてきたからです。
「緊急避妊」という知識があったとしても、7000円~1万5千円と、高価であるためにあきらめる人がいます。72時間以内に処方してくれる病院にたどりつけなかった人がいます。「妊娠検査薬」を知っていたとしても検査にたどりつけなかったり、 「性感染症検査は保健所で」と知っていたとしても、そもそも保健所がどこにあるのかも知らないし、若者にとって身近な場所ではないかもしれません。

若者にとっては妊娠検査薬を入手するためのハードルは高い
そんな時、スウェーデンにはユースクリニックという、若者が性の知識を得たり、気軽に相談、受診できる場所があることを知り、2019年には視察ツアーを行いました。日本にも、駅の近くやすでに若者が集まっているところにそんな場所ができたら…。性教育を一緒に学ぶ高校生・大学生に「埼玉に、若者のための緊急避妊薬のサポートをしてくれるような場所があったとしたらどう思う・・・?」そう尋ねると一人残らず首がもげるかと思うくらい、何度も頷いてくれました。
「そんな場所が、欲しいです!そんな場所があると、私たちは社会から守られているんだと感じることができます」と言ってくれた人もいました。高橋さんはこの若者たちのために、埼玉県にユースクリニックを立ち上げようと決めました。

緊急避妊薬の紹介コーナーも。でもティーンには高額です!
性の悩みを親に言えない中高生
ある中学校の3年生のアンケートでは、性について困った時の相談先として、3位家族、2位友達、そして1位は「誰にも相談しない」でした。これまで関わってきた中高生は口をそろえて「親にだけは言えない」と言います。どうしてだと思いますか?実は「叱られるから」よりも「心配かけたくないから」という回答が多いのです。大人たちをこんなに気遣ってくれる若者たちに、私たち大人はどんな方法で応えてあげることができるでしょうか。

ティーンエイジャーも入手しやすいコンドームであるが、装着の方法を間違えると破れたりすることも…
埼玉県は都道府県別人口比で医師、助産師の数が全国で一番少なく若者が気軽に相談をできる環境が整いにくい状況です。このことは学校への性教育外部講師も少なく、平等に性教育を受けることができないことにつながります。
しかしながら、保護者や行政、教育関係者の来場は多く、高い関心が寄せられています。このニーズの高さから、今後も埼玉県内でユースクリニックを開催することで地域での包括的性教育への関心が高まり、その重要性への理解が深まることを期待しています。

性教育を正しく学ぶことは自分を大切にすることにつながる~展示資料より
ユースクリニックは今後も川越で開催!
「一般社団法人 彩の国思春期研究会」では2024年10月から、毎月川越でユースクリニックを開催しています。次回以降はいずれも土曜日で、4月26日、5月17日、6月21日に開催予定です。
ぜひ、皆様も足を運んでみてはいかがでしょうか。
Information
【団体名】一般社団法人彩の国思春期研究会
【代表】高橋幸子
【Email】sainokuni.shisyunki@gmail.com
【Facebook】 https://www.facebook.com/seikyouiku/
【Instagram】https://www.instagram.com/sainokuni_shisyunki/
【HP】サッコ先生の性教育研究所 https://sakko0607.wixsite.com/sakko/
【開催場所】すくすく子育て安心施設 川越市中原町2丁目1-9