正しい基礎と安全とマナーを学んで親子の会話のきっかけ作りに〜NPO法人 こども二輪塾〜

取材・記事 白井紀行

 

「こども二輪塾」は2003年11月に始まり、2004年6月にNPO法人に認定。

八瀬大橋近くにあるナショナルパーク川越(NPK)を拠点に活動する団体です。

毎月第3日曜日の講習会の他、地方へ出張しての体験講習も行っています。

 

事務局長の矢島さんはレーシングチームに所属しマネジメントを担当。

バイクでご飯が食べて行けるような子ども達を育てることに携わって来ました。

設立の発端はレーシングチームで開催してきた子ども達や親御さん向けの講習会。

少子化に伴い親子の繋がりもだんだんと疎遠になっていると感じたこと。

講習が親子の会話のきっかけ作りになればと考えて始めたのだそうです。

今号では8月19日にNPKで行われた講習の様子をお届けします。

 

講習前の様子

インストラクターとのミーティング。

本日の講習、熱中症への注意、コースの草刈りなど諸々の確認。

 

コースの草刈り中。今年は暑さが厳しいせいか、特に伸びが凄いんだそう。

「子ども達が遊び、虫を取り、キャンプするコミュニティの場にも活用して欲しい」

その思いから除草剤は使わない方針です。

 

インストラクターの先生同士の打ち合わせ。

本日、受講する子ども達をどの先生が担当するかを決めていきます。

こども二輪塾のコースはMFJ(日本モータサイクル協会)で初の公認のコース。

自動車教習所のように体験、1→2→3→4段階と進級検定を受けるシステム。

最後は卒業検定でこれに合格するとレースに出場ができます。

国際A級やキッズレースで活躍する子も輩出し、塾としても嬉しい限りとか。

 

9時30分からの講習を受講する子ども達とその親御さん、先生らと集合写真。

この日は延べで60名が受講(講習は毎月第3日曜日、1コマ50分で5回行われる)。

こども二輪塾のように基本から教えてくれる所はとても希少。

横浜や長野、遠くは三重から来たこともあったそうです。

 

キッズ用バイクに給油し、エンジンの調子をチェック中。

このバイクにはギアはなくスクータのようにスロットルを回すだけで走ります。

 

子ども達は安全のためにヘルメット、ブーツ、防具を装着していきます。

ライダーらしくなって来ました。

 

全員で大きく身体を動かして準備運動。

 

フラットコース

初めてバイクに乗る子ども達の体験クラス。これまでの最年少は2歳半。

補助輪無しの自転車に乗れてバイクに跨ってつま先が地面に着けば受講できます。

 

エンジンを止めた状態でスロットルやブレーキの扱い方を学ぶ。

 

キックスタータを踏み込んでエンジンを始動。

 

教えるときは目線は必ず子どもに合わせ、言葉は噛み砕いて「ひらがな」で。

どうやってわかりやすく伝えるか並大抵ではないそう。

 

さあ、いよいよエンジンを掛けてバイクを動かします。

 

スロットルをちょっと回せば、バイクはグィンと前に。

必ず先生が前に着いていて、何かあれば体当たりで受け止めてくれます。

 

走る前には必ず左右の安全を確認してOKなら手をあげてスタート。

これを忘れたときには「安全確認を忘れているよ!」と先生が注意します。

こども二輪塾では交通ルールやマナーの指導をとても重視しています。

 

そして、一人一人の習熟度に合わせて先生が丁寧に教えてくれます。

一つできれば「凄い!できた!できた!」と大きな声で褒めてくれる。

そんな姿を見て親御さんも教えられることも多いと言います。

 

50分のコマはあっという間に終了。

まっすぐ走れるようになった女の子は、もう一コマ延長することにしました。

 

怪我を最小限にするためにも安全で、正しい乗り方を教えています。

バイクを持っていても基本ができていないという理由で受講も多いそうです。

 

まっすぐに進みブレーキ(ゴー&ストップ)ができれば次はコーナリング。

正方形の4つの頂点に置かれたコーンを回ってイメージトレーニング。

 

2コマ目に挑戦した女の子もコーナリングができるまで上達しました。

 

先生も一緒に走り回って一生懸命教えてくれます。

 

講習が終わった後はお世話になったバイクを綺麗に磨く。

お母さんが「ほら、そこも拭きなさいね」と優しく声を掛ける。

モノを大切にする気持ちを自然に学びます。

 

講習が終わると先生が「あゆみ」と呼ばれる進度表を見せながら説明。

段階をクリアすると「見きわめ印」が押されて次の段階へ進むことができます。

「あゆみ」には、先生からのメッセージが書かれています。

それを見ながら「今日はここまでできた」「凄いね」と親子の会話にも一役買います。

 

Aコース

こちらは主に第一段階を教えるAコース。

「まっすぐ前を見て曲がる」とコーナリングのやり方を教えているところ。

 

曲がるときは足を出して身体を内側に傾ける。

 

イメージができたらバイクを走らせて実践。

 

コーンを目印にスラロームを何度も繰り返し練習。

 

スラロームを体得したらコブ越え。こちらもまずはイメージトレーニング。

 

膝を軽く曲げてスタンディングフォームでコブ越え。身体に覚えこませます。

 

傍らではひたすら8の字走行の練習に勤しんでいました。

Bコース(南コース)

大人一人が歩けるくらいの幅を持つBコース

 

ヘアピンカーブや高低差が連続する周回コースになっています。

 

Aコースよりも更に短い間隔で置かれたコーンでスラロームのイメトレ。

 

曲がりきれずに足を着いたりコーンを倒してしまったりと苦戦していました。

こちらもひたすら練習あるのみ。基本をきっちりと学ばせます。

また、スタート前に安全確認を忘れれば「安全確認!」と先生から注意も。

どれだけ運転技術が上達しようが安全教育を徹底させています。

 

一本橋の練習中。見ているとバランスを取るのが大変そうでした。

ギア無しのバイクで「あゆみ」にある全ての項目ができれば3段階は終了。

4段階はギア付きのバイクで3段階と同じ項目ができれば晴れて卒業です。

卒業しても子ども達は遊びに来たり、先生のお手伝いをしたりするそう。

塾では指導技術やノウハウを伝えることでインストラクターの育成も行なっています。

 

本コース

コブやカーブが連続する本コースでバイクを操る子ども達。

 

各段階を順番に見て来たので、基礎がどう生かされているかが良く分かります。

 

バイクは転べば痛いし、ぶつかれば友達に怪我をさせてしまうかもしれない。

だから、常に安全に気を配りルールを守って走らせる。

そういうことをちゃんと子ども達に伝えられるよう心がけているそうです。

 

講習が終わればバイクを磨く。もうすっかり染み付いているようですね。

 

当初はバイクに興味があって乗っていた親御さんのお子さんが参加。

それが、今では8割以上がバイクに乗ったことがない親御さんだそうです。

「教育というにはおこがましいかもしれませんが、こども二輪塾はその一助でありたい。

それが、社会貢献に繋がればという気持ちで活動をやっています」。

講習で身体を張って教える先生と夢中になって練習をする子ども達の姿。

矢島さんの言葉が伝わっていることをハッキリと感じ取れました。


INFORMATION

NPO法人 こども二輪塾

【HP】http://www.kodomo-nirinjuku.net/