令和の新時代へ受け継がれていく地域の繋がりと伝統芸能〜石原のささら獅子舞〜

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取材・記事 白井紀行

 

川越に春の訪れを告げる「石原のささら獅子舞」。

4月14日(日)の朝8時すぎに石原公民館を訪ねると準備は佳境でした。

 

衣装に着替え化粧を済ませた「ささらっ子」。可愛いですね♪

 

観音寺

石原町のささら獅子舞は、慶長12(1607)年に新河岸川沿いにある観音寺の観音祭。

悪魔降伏、災難消除にて国利民福を祈り、平和を謳歌するため獅子舞を演じます。

土日の2日に渡って行われる本祭りと日曜日のみの陰祭りを交互に実施。

今年は、陰祭りの年にあたります。

 

開眼式(かいげんしき)

演舞に先立ち、獅子頭と天狗に魂を入れる儀式「開眼式」が行われます。

一年間眠っていた獅子頭に活を入れ、関係者の安全を祈ります。

 

祭壇に鎮座する三頭は左から先獅子、中獅子、後獅子。

中獅子の前には天狗の面が並べられています。

 

ささら獅子舞保存会の方々が着席し安全祈願の法要が始まりました。

 

その後、一人一人がご焼香。

 

茶碗一杯のお神酒を口に含み身を清めます。

 

ささら獅子舞は「親」の演舞から始まる

警護を先頭に錫杖、天童(拍子木)、山伏、天狗と順番に並ぶ。

山伏の法螺貝を合図に、笛が鳴り、獅子の動作が始まります。

 

演舞に先立ち観音寺の本堂の周りを一回り。

 

資料によると、この時笛には「聖殿」といって高音を入れるのだそうです。

 

法螺貝と笛の音に導かれて境内をぐるりと一回り。

 

笛方、謡方、天狗、山伏、天童、ささらっ子らが位置に付き演舞が始まります。

ささら獅子舞は「12切り」という12の場面で構成され、これを一庭と呼びます。

 

笛の音に合わせ、三頭獅子と山の神が輪になって舞う。

最初に踊るのは「親(しん)」と呼ばれる新しく舞を習った人。

今は新人でも、いずれ「親」となって次世代へ伝える役目を果たす。

また、獅子舞を通じて親戚、親友、隣近所との親交を深める。

そんな意味が「親(しん)には込められているとか。

 

山の神が軍配を上げ采配を振ると、三頭はそれに従い舞い踊う。

笛の音、獅子舞が打つ太鼓の音、サラサラと流れるのは簓が奏でる音。

素朴ながらも優雅さを感じさせます。

 

小唄、長唄が終わるとそれまでのおおらかな雰囲気が一変。

二頭が中獅子(雌獅子)を巡って争いが始まります。

ささらっ子は中獅子を守るため横一列に並び中獅子(雌獅子)を隠します。

バサバサっと水引を左右に振る。ささら獅子舞の一番の見どころです。

 

最後は三頭は元のように仲良しの仲間に戻り帰路へ。

観客からは温かい拍手が送られます。

 

大役を終えてほっと一息。思わず笑顔がこぼれます。

 

ベテラン勢による二庭目

わいわいと遊んでいた子ども達に声が掛かり二庭目が始まりました。

 

山伏の法螺貝を合図に賑々しく庭へと繰り込む一行。

 

ベテラン勢による演舞が観客の目を引きつけます。

 

二頭の獅子が争う場面もさらに迫力があります。

 

菓子屋横丁へ

お昼ご飯を食べた後、衣装や化粧直しをしてもらう「ささらっ子」。

 

午後一番は、菓子屋横丁へと繰り出します。

 

笛や太鼓を鳴らし賑々しく観音寺を出発!

 

高澤橋を渡り菓子屋横丁に到着した一行。

観光客は何事かとざわめきスマホやカメラに納めます。

 

観光客が行き交う中を進む「ささら獅子舞」の一行。

 

誰もが思わず足を止め見入ります。

 

「浜ちゃん」の前で三頭の獅子が演舞を披露。

 

人混みを割っていくかのように進む一行。

錦笠の下に入ってもらったり、撮影に応じる場面もありました。

 

菓子屋横丁から再び観音寺を目指す。その様子はまさに春の使者。

 

賑々しく観音寺の境内へと躍り込みます。

 

本堂の前に整列した「ささら獅子舞」の一行。

 

本堂を正面にしての舞を披露。

 

一休みして三庭目

一休みをして三庭目。参道の方からの入場です。

 

ささらっ子は四隅へにたち結界を張る。

山の神に導かれ大足で闊歩し、輪になって踊る三頭の獅子。

 

♪ この宿は 縦が十五里 横七里/いりをよく見て ではにまような。

と伸びやかな長唄が始まる。

 

山の神の動きに合わせて、三頭の獅子がゆったりと優雅に舞う。

何とも伸びやかで記者の好きな場面の一つです。

 

静寂を破るかのように先獅子と後獅子が中獅子を巡って争いを始める。

 

四隅にいたささらっ子は横一列に並んで中獅子を隠します。

二頭の獅子は激しく争い勝ち負けを繰り返す。

満身創痍になった二頭は山の神に争いの無意味さ虚しさを諭されて和解。

 

最後には三頭はまた元のように親密に仲良くなって帰路へとつきます。

 

三庭目を動画にしましたので、その雰囲気をお楽しみください。

所用のため取材はここまですが、この日の演舞は四庭まで行われました。

最後は、来年に残すという意味で一庭半を踊り、千秋楽の唄でお開きとなります。

 

令和の新元号を迎え、来年に向けての稽古が既に始まっています。

時代は変われども、脈々と受け継がれて行く伝統。

来年は本祭りとなり「石原のささら獅子舞」は2日間に渡って行われます。

ぜひ、お越しください。


INFORMATION

埼玉県指定無形民俗文化財「石原のささら獅子舞」

【開催】平成31年4月14日(日)10:00〜16:00

【場所】観音寺(川越市石原町1-18-1)

【主催】石原のささら獅子舞保存会

【HP】川越市HP(石原の獅子舞)

【FB】Https://Www.Facebook.Com/石原のささら獅子舞

【TW】Https://Twitter.Com/3ino7

川越市石原町1-18-1