3頭の獅子に悪魔除け・安産・子育ての願いを込めて〜埼玉県無形民族文化財「石原のささら獅子舞」〜

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取材・記事 白井紀行

 

気温が一気に上昇し汗ばむ位となった4月16日(日)。

石原町にある観音寺で、埼玉県無形民族文化財「石原のささら獅子舞」が行われました。

 

観音寺は天台宗で比叡山の末寺。弘法大師(空海)が草創し慈覚大師が再興。

 

人々は丈夫な子供が生まれますように、健やかに育ちますようにと仏様にお願いしました。

受胎・安産に霊験顕著だったことから「世継観世音」と呼ばれます。

 

石原のささら獅子舞は、三頭に悪魔除け・安産・子育ての3つの願いを託す観音寺の祭礼。

以下は、案内板からの転記

「石原のささら獅子舞」と呼ばれる川越を代表する獅子舞で以前は、4月17日・18日に演じられていたが、現在は4月の第3土、日曜日に行われる(隔年で陰祭の年は日曜のみ)
慶長12(1607)年から始まると伝えられ、寛永11(1634)年川越城主であった酒井忠勝が若狭国小浜(現、福井県小浜市)に国替えになった際に、雌雄2頭のを連れ去り中断してしまったが、宝永6(1709)年に太田ヶ谷(現、鶴ヶ島太田ヶ谷)に習い再興された。

 

この獅子舞は一人立獅子舞の系統で成人男性が演じる・曲目は12切りという12の部分からなり、先獅子(雄)・中獅子(雌)・後獅子(雄)の3頭が軍配を持った山の神(少年)に誘導され、笛太鼓に合わせたササラッコ(花笠を付けた少女4人)のささら伴奏で舞う。中でも、2頭の雄がかみあいを繰り返しながら雌を争う場面は、最も特色ある場面である。

土曜日は「揃い」といって練習の総仕上げをする。日曜日は観音寺で一庭奉納し、次に町内廻りに出て町境の高沢橋で一庭舞う。夕方になって高沢町(現、元町2丁目)の井上家の庭で一庭、その後観音寺に戻り一庭半舞、最後に長老の歌う「千秋楽」で終わる。

 

土日の2日に渡って行われる本祭りと日曜日のみの陰祭りが交互に行われます。

今年は陰祭りの年で日曜日のみ。観音寺境内で4庭が奉納されます。

 

12の場面(12切りという)からなる一回の舞を庭(にわ)といいます。

庭には同時に演じる場所という意味もあります

 

復興が進む菓子屋横丁へ

20分ほどの一庭目の演舞が終わったところで一行は菓子屋横丁へと向かいます。

 

高澤橋を渡って、

 

ブォーッ、ブォーッと法螺貝を鳴らしながら菓子屋横丁を練り歩く。

 

時ならぬ行列に観光客は驚き、お店の人は「ありがとう」とお礼の声をかけます。

一昨年の6月に火事に遭った菓子屋横丁は、かつての賑わいを取り戻し復興。

 

3頭の獅子が舞を踊り菓子屋横丁の復興を祝いました。

 

まだ、ちょっと時間があるということでイベントスペースで記念写真。

 

再び観音寺に

2庭目は11時となっていましたが、11時30分頃から始めるとのこと。

待つ間に12の場面の解説が行われました。

※ここからの写真は2庭目と3庭目の2回分から選んで配置したものです。

 

ブォーッ、ブォーッと山伏が法螺貝を吹き、天狗を道連れに庭に繰り込む。

 

そのあとに、錫杖を持った天童(4人の男の子)が道を清め、謡方、笛方と続く。

 

簓(ささら)を持つ天女には、桜花が咲く錦笠を介添人が捧げる。

 

山の神に導かれた3頭の獅子は楽しそうに遊びながら賑々しく庭へと繰り込む。

 

笛方は右、謡方は左、天女を四隅に行き結界を張り、天狗、山伏、天童は正面に座す。

3頭は大足で闊歩して入り乱れて飛行。

 

山の神は軍配を上げ采配を振り、獅子の先に立ち、また背後に廻る。

それに従って舞う獅子。

 

笛楽が変化、

 

3頭の獅子が一線となり蹲踞(そんきょ)の姿勢を取る揃いの舞。

 

♪ やれ出たそれ出た、亀の子が出たよ〜と小唄が始まる。

 

獅子は里の繁栄を喜び広い野原いっぱいに狂い踊り花に戯れる。

山の神は片足でケンケンするような独特の動きで獅子を操ります。

 

再び、揃いの舞、長唄の舞、揃いの間と場面は進む。

 

♪この宿は 縦が十五里 横七里。

長唄ののびのびとした笛と歌に合わせ、3頭の獅子が共に楽しく戯れる。

 

山の神役の男の子。所作がピッっと決まって格好いい!

 

四隅に立ち、サラサラと音を奏でる簓(ささら)を演奏していた簓子(ささらっこ)。

 

4人の簓子は一列になり、花笠の上に造形する月と太陽とともに雌獅子を隠す。

 

2頭の雄獅子は雌獅子を探し求めながら双方優否を決する乱舞の状態に。

 

体を振り回し激しい戦いが繰り広げられます。

 

簓の音に合わせて笛の音が、激しい乱舞の間を哀しく流れる。

 

2頭の雄獅子は5回に渡って乱取る。

 

この場面は獅子狂いとも言いささら獅子舞の一番の見所です。

 

山の神に争いの無意味さを諭された3頭は元のように仲の良い仲間に戻る。

そして、楽しそうに遊びながら庭を去り帰路につきます。

 

本祭りと陰祭りは交互なので、来年は本祭りの模様をお届けする予定。

春から秋にかけて川越ではあちこちでこのような祭礼が行われます。

地域で脈々と伝わる祭礼を、今後とも取材していければと思います。

【お知らせ】

5月3日の川越春まつりフィナーレでも「石原のささら獅子舞」の演舞が披露されるそうです。

詳しい時間などは、Facebookでチェックしてみてください。


INFORMATION

埼玉県無形民俗文化財 石原のささら獅子舞

【日時】平成29年4月15日(日)9:00〜15:00

    注)本祭り:毎年4月の第3土・日曜/陰祭り:日曜のみ(交互に行われる)

【場所】観音寺(川越市石原町1-18-1

【主催】石原のささら獅子舞保存会

【HP】川越市HP(石原の獅子舞)

【FB】https://www.facebook.com/石原のささら獅子舞

川越市石原町1-18-1