環境を守るさまざまな取り組みの成果の集大成〜かわごえ環境フォーラム〜
市民/事業者/民間団体/行政が協働し街の望ましい環境像の実現を目指す「かわごえ環境ネット」
その活動の集大成「かわごえ環境フォーラム」。2月25日ウェスタ川越で開催されました。

2003年から始まり、今年で15回を迎えます
「かわごえ環境ネット」の村上理事の司会で始まりました。

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「さまざまな環境の成果を共有することで活発にしていきたい」と小瀬理事長。

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部屋の後ろには各団体の活動を紹介したパネルが並んでいます。

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「ヤマ、川、畑の活動はワンダーランドだ」
雑木林を拠点に活動する「ふくはら子どもエコクラブ」が1年間の活動を発表。

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雑木林での落ち葉の堆肥作り、循環型農業。トウモロコシやエダマメの収穫体験etc。
子ども達一人一人が順番に大人たちの前で堂々と活動を紹介していきます。
詳しくはこちらを → http://www.j-ecoclub.jp/ecoreport/profile.php?id=504

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2016年市民の森で出会ったきのこ
川越の笠幡在住の大久保 彦(まさる)氏は、市内で見つけた様々なキノコを紹介。

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近辺では秩父市や小川町でしか見られなかったシャカシメジを自宅で発見。

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身近なところでもキノコの習性を知っていれば見つかるのだそうです。

珍しいキノコを次々と写真で紹介
パリ協定と我々の対応
かわごえ環境ネット 社会環境部会 宮﨑誠氏は「パリ協定」を取り上げます。
2015年COP21で米中を含む196カ国が採択。2016年に批准が行われて発効。
地球温暖化に関する新しい国際ルールが「パリ協定」です。
産業革命当時からの温度上昇を2℃以下(現在は0.8℃)に抑えることを目指すもの。

シベリアの永久凍土が溶けるとCO2より温室効果が23倍も高いメタンが放出される
日本は2030年に2013年比で26%削減、50年には80%削減を目指します。
特に家庭のCO2が増えており40%削減を目標としていますが省エネだけでは限界。
それを達成する鍵は電力。
エネルギー源をCO2が出ない再生可能エネルギーや原子力にシフトしていきます。

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家庭で自然エネルギーを使い電気を生むZEH(ゼロエネルギーハウス)もその一つ。
今、新築の50%はこのZEH。積水ハウスでは70%に達しています。
宮﨑さんは2010年に3.4KWの太陽光パネルを自宅に設置。電力の8割を賄っています。

太陽光発電量をグラフで紹介(5月が多い)
ゴミはゴミを呼ぶ〜解決への模索と提言〜
最も身近な環境問題「ゴミ」に立ち向かう「クリーン&ハートフル川越」の武田侃蔵氏。

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武田さんがゴミ問題に取り組んだのは「クリーン川越を目指す会」が始まり。
「クリーン川越」を議会に請願して議決されるも14年間具体的な動きが無く…。

2000年8月川越市広報に掲載
ゴミだしルールの呼びかけ、市の広報、自治会の回覧、24万枚の違反シール、PR看板。
いろんな解決策を試みるもなかなか効果が得られない。

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最終的に見出した解決策は「ゴミを見せないようにする」。
ビルのオーナに許可を取りゴミを発見したら、すぐに撤去してビルの陰に隠すようにする。
武田さんは毎朝これを行なっており効果を上げています。

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市民が先頭に立って汗をかいて動かなければ問題は解決しない。
ぜひ、この活動に参加をと武田さんは訴えかけました。

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人がつながり生きものを育む川越街づくり
農家と非農家の連携・協力で無農薬で稲やマコモを栽培する「かわごえ里山イニシアチブ」。
柏井喜代恵理事がその多岐に渡る活動を駆け足で紹介。

カワゴエ・マス・メディアでもたびたび取り上げています
かわごえ里山イニシアチブの活動拠点は福田地区の「プロジェクト田んぼ」。
ここで、水田活動1(広報)、7(生物多様性)、8(無農薬農法)に取り組んでいます。

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民間稲作研究所が確立した抑草技術のポイントは、2ヶ月間7cmの水位を保つ水管理。
農薬や除草剤を使わず生物多様性に繋がりますが、頼みの綱の水は入間川から取水。
夏の渇水などの影響を受けず安定した水を確保のため「井戸掘りプロジェクト」を始動。
周辺田んぼへ水供給、ビオトープの水温調整で稲の生育を促し、生きものの住処を増やします。

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目指す街づくりは多様な活動との連携。それを花びらに置き換えました。
花びらの一つに「生きもの」の視点を仲間に入れ共生共同の花を咲かせます。

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雁が舞い戻ってくる里ということで「プロジェクト田んぼ」を「初雁の里」と命名
女性の視点を活かす。川越の名所を巡ることも兼ね備えた体験型エコツアー。
環境と経済を両立させ、人と生きものが共生できるよう地域と連携していきたいと結びました。

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当日様子を動画でアップしましたのでご覧ください。
ここから、東洋大学総合情報学部 小瀬研究室(かわごえ環境ネットの代表理事)が続きます。
栽植密度・植え付け本数の違いによる稲の育成の変化と収量の比較
東洋大学総合情報学部 小瀬研究室の成瀬 啓誉氏は、大学での研究の成果を発表。
民間稲作研究所の稲作技術を検証します。

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農薬や化学肥料の使用量の増加による生物多様性の減少、健康被害を懸念。
無農薬、無化学肥料による稲の栽培を行った時の稲の成長・除草・環境を測定。

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苗の種類、一株あたりの植え付け本数、植え付け間隔を変えた3.6mx3.6mの4区画で比較。
収穫量の調べる株は隣の区画や周りの環境の影響を受けないよう中心部を使います。

A区画が民間稲作研究所に則った種類・植え付け本数や間隔。
成長過程は稲の草丈で比較。
D区(ポット苗、1株1本、東西15cm、南北30cm間隔)が最も成長。
また、同時に温度や雨量も測定。
水量が少なく稲と似たイヌビエが生え区別が付かず除草にも苦労したそうです。

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区画の中央の調査株から平均の歩数に近いものを代表株を収穫。
これを成瀬氏は一粒一粒計数・計量(これが一番大変だったとか)。
民間稲作研究所の基準に則ったA区画(ポット苗/1株1本/30cm間隔)が最高の収穫量でした。

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「こもれびの森」の植生と森林施行による環境の変化
東洋大学 こもれびの森・里山支援隊 津田麻衣氏。
1961年から東洋大学にある「こもれびの森」と言われる森林の施行を2014年から開始。
2年間の活動で森林環境がよくなったと考えるのでその現況を調査した結果の報告です。

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森林内の植生を把握するための作成した植生図。

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森林整備施行の効果を経年的に把握すため指標植物となるヤマユリ。
その草丈、株数、着花の有無を8箇所で調査。
平均背丈は6箇所のエリアで上昇、着花は2箇所のみ昨年を上回り、株数は増加しました。

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この後、コドラードを用いた植生調査と毎木調査の結果が発表されました。
「こもれびの森」の植生が把握するため、今後も定期的な調査を続けていくそうです。

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川越昭和の街における街並みの変化と魅力的な要素の把握
東洋大学総合情報学部 佐藤 加留磨氏
連雀町にある蓮馨寺を核とし中央通りと立門前通りからなるエリア「川越昭和の街」
現在、昭和の街並みを生かした街の活性化に取り組んでいます。
しかし、一番街や大正浪漫夢通りと比べるとその魅力が生かしきれてない。
川越昭和の街を見出すための2つの研究の発表です。

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地元の住民や文献から過去の昭和の街を47枚集め、現在の街並みと一枚一枚比較。
建物の構造自体は変わらないが、かつて銀杏並木やアーケードがあったことがわかります。

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ワークショプはツアー形式で街を歩き撮影した写真3枚をハッシュタグをつけてSNSに投稿。
集まった67件を6つのカテゴリに分類に分けて集計。
その結果、「町屋・蔵・長屋」「看板・街頭・サイン」に関心が高いことが判明。

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また、比較した47枚を「昭和の街懐かし写真館」として掲示。
その感想「景観」「思い出」「雰囲気」「その他」の4つのカテゴリに分類して集計。
57人中25人の回答から景観に関する関心が高いという結果がえられました。
(袖)看板も町屋の一部として扱うことで、昭和の街の魅力となるのでは?
消失した看板の復元が出来ないかを課題とし発表を終えました。

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知って欲しいマイホーム建設に伴う6価クロム汚染
初野建材工業株式会社 環境事業部
6価クロムは体に有害な発がん性物質。土壌汚染対策法でも特定有害物質に指定。

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6価クロムはマイホーム建設で行う軟弱地盤の地盤改良工法で関わってきます。
地盤改良工法の一つ柱状改良工法。これは、セメントと土を混ぜ合わせるもの。
そのセメントに六価クロムが含まれており、土壌に溶出してしまうのです。

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なぜ、セメントに六価クロムが含まれているのか?
それは汚染土壌を洗浄処理したときの洗浄残残渣(せんじょうざんさ)が材料となるから。
また、セメントの原料の石灰石には天然由来の3価クロムが含まれています。
これが、製造の過程で加えられる高熱で化学反応を起こし6価クロムとなります。

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コンクリートを完全に硬化してしまえば6価クロムは溶出しません。
けれども、柱状改良工法では土と混ぜ合わせるので完全に硬化せず溶出してしまいます。
また、公共工事は6価クロムの溶出検査が義務ですが、民間工事では努力目標。

初野建材工業では、事前検査を提唱しています
3月11日の東日本大震災を教訓に液状化の発生など地盤改良工事に関心が高まっています。
ところが、地盤を強固の際には、6価クロムのことを知らずに固化材を投入しまう。
それが土壌汚染や地価の下落、健康被害の悪循環を引き起こす。

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初野建材建設では大学と共同で6価クロムを3価クロムにする還元剤を開発し特許を取得。
同社では「土壌汚染を未然に防ぐ環境に配慮した地盤改良工事を提案」します。

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かわごえ環境ネット・社会環境部会活動報告
部会の開催、環境施設の見学、緑のカーテン普及、環境講演会、エコドライブ教習会等。
板野徹氏による社会環境の活動内容の紹介。
コラムへの投稿を通して環境活動に参加して欲しいと呼びかけました。

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かわごえ環境ネット・自然環境部会
「水と緑と土」が自然環境部会のテーマこれが無くしては人は生きていけない。
また、緑はCO2の削減、生物多様性の保全の根源と始まる賀登環氏の活動報告。

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同会では行政とのパートナーシップ、調査活動、保全活動、自然観察会、イベントなどを実施。

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同会の活動の一つは、野生種として貴重な植物の保全活動
川越市森林公園(仮称)では毎月第二月曜日に動植物調査を実施。
ギンラン、キンランなどの希少種(レッドデータもの)は株数を調査しています。

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その他、色々な活動の様子が写真で紹介されました。

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チョウ、トンボの調査では童心に帰って大人も必死にチョウを追いかける。

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調査結果はデータベースにまとめており成果を上げており、「緑の都市賞」も受賞。
昨年からは生態系に深い関係のあるキノコに着目し冊子作りに取り組んでいます。

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この景色がずっと見れればと一枚の写真で報告を終えました。

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取材・記事 白井紀行
INFORMATION
第15回かわごえ環境フォーラム(環境活動報告会)
【日時】平成29年2月25日(土)9:30〜12:00
【場所】ウェスタ川越(南公民館)
【HP】http://kawagoekankyo.net/news/003035.html