あなたの音楽力を次世代に「川越市人材発掘 公開オーディション(前半)」

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日本中が大寒波に覆われた1月15日。

川越西文化会館(メルト)で「川越市人材発掘公開オーディション」が行われました。

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‖ 川越市人材発掘 公開オーディションとは?

「川越人材発掘公開オーディション」とは、小学生を対象に音楽の楽しさを伝え、音楽を楽しむ環境をつくり出す意欲あるアーティストを発掘する事業。オーディションに合格した2組は、市内小学校でアウトリーチ(体験付コンサート)を行なうことで、音楽に親しむ層を厚くし、将来の音楽家を生み出し・育む役割を担います。

https://www.city.kawagoe.saitama.jp/event/main/rekishi/bunkakikin.html

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オーディションは、第1次(書類)・第二次(音源)の審査を勝ち抜いたアーティスト11組で行われました。

最終審査は、実技演奏だけでなく、楽器・楽曲説明、ワークショップ等、実際に小学生に向けて行うアウトリーチを15分間の時間で実演。その後、審査員による質疑応答される形式となっています。

審査の結果、11組の中から2組が選ばれます

審査員は、後藤文夫(尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科 学科長)氏、
前田拓郎(尚美学園大学 ピアノ専任講師)
氏、荻久保和明(東邦音楽大学・大学院 特任教授)氏、
宮野陽子(東邦音楽大学 管弦打主任教授)、
関口俊一(川越市文化団体連合会 会長)の5名

それでは、 寒波に負けない、その熱い模様を余すことなくお伝えします。

 

Trymulty(トリムルティ)

 審査員が見守る緊張感の中、ステージ下手から聞こえてきたトントトンと軽快なリズム。

トップバッターの『トリムルティ』がジャンベを叩きながら登場です。

ヤギの皮が張られているアフリカの楽器「ジャンベ」

グループとメンバー紹介の後、披露されたのは『アフリカン・ブルース』。

優しいクラリネットの音色が緊張に満ちていた会場の雰囲気を温かくしました。

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ジャンベやカホンなどの楽器を紹介したら、次は、観客を巻き込んでのボディパーカッション。

手、膝、足と順番にカホンのリズムに合わせて体を叩き、最後はそれらをミックス。

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難易度が高いリズムとどんどん速くなるテンポに上手についていく観客の皆さん。

会場に楽しい笑い声が響きました。

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終わりの曲は、ジャズのスタンダードナンバー『アイ・ガット・リズム』

フィギュアスケートの浅田真央さんがショートプログラムで踊った曲としても有名です。

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取材する記者も楽しい気分になったところで実演は終了、審査員による質疑応答に入ります。

「説明はわかりやすくて良かった」「小学生向けなのでブルースやジャズなどのジャンルが分からないので説明を加えると良い」「楽器紹介をしている間、手持ち無沙汰になっていたので子供たちが気になるかも」

と演奏だけでなく小学生向けのアウトリーチを意識した感想やアドバイスが送られます。

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ルロット・オーケストラ

ルロットとはフランス語で屋台のこと。

ヴァイオリン・チェロ・フルート・コントラバス・ピアノの編成で音楽を運んできました。

最初の曲は誰でも知っている「森のくまさん」。

これをアメリカのジャズ風にアレンジしての演奏です。

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ステージ上手に並べられた沢山のフライパン。

準備中から観客の全員が気になってましたが、いったい何に使うのでしょうか?

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実はこのフライパン、バチで底面を叩くとそれぞれ音の高さが異なるんです。

子供たちに一音ずつ担当してもらい、みんなで「キラキラ星」の演奏です。

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続いて、運動会でよく流される『道化師のギャロップ』を披露。

いくつものフライパンを忙しく叩いてメロディを奏でる

そのあと、メンバーの手にする楽器を順に紹介して、子供用の小さなバイオリンに挑戦。

曲は「天国と地獄」

最後は、オーケストラで『天国と地獄』を演奏して、質疑応答に移ります。

楽器説明の仕方についての質問に「それぞれの楽器をソロでメドレーすることを考えています」と回答。こういったやりとりも審査の対象。「管楽器、打楽器など全部の種類の楽器が入っているのが良い」「演奏最中に笑顔が必要なのかな」というコメントも。

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dub saxophone quartet(ダヴ サクソフォン カルテット)

ワンツーワンツースリーの掛け声とともに、まずは、『ドレミの歌』で審査に臨みます。

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楽器はバリトン、テナー・アルト・ソプラノと4種類のサクソフォン。

同じサクソフォンでもその音色や役割の違いがあることを『ボレロ』で学びます。

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ベース・リズム・メロディと順に重ねていき、曲がどの様に編成されているのかを見せます。

この後、マウスピースを観客に渡して演奏に参加。最後の曲は「琉球幻想曲」

かもめの鳴き声を楽器で真似た演出もあり、サクソフォンが重なる音が美しい演奏でした。

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「音楽性と表現はとても良いです」「トークに工夫も、メンバーに面白いキャラクターの方もいそうな気がします」「小学生だとバリトン、テナー・アルト・ソプラノという言葉も分からないのでそれぞれの楽器の音域を実演してみては?」「サックスでなくサックスフォンですね」など、審査員のアドバイスがなされました。

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Acor Duo(アコル デュオ)

 観客の目をひく大きな木琴(マリンバ)を運んできたのは、アコル デュオという2人組。

「マレット(バチ)を4本持って、開いたり閉じたりすることもあります」

と普通の木琴との演奏方法の違いを説明して、『道化師のギャロップ』の演奏に。

バチの動きにも注目してくださいね

5オクターブの音域を出すデモ。

小学生を意識してオクターブでなく「5つのドレミ」という表現に変えていました。

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鍵盤の下にある共鳴管。その役割を知ってもらうために鍵盤だけを鳴らします。

共鳴感の有無で音の大きさや響きが変わることが理解できます。

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何種類あるのだろうというマレット(バチ)。重さや硬さの違いが音色に変化を与えます。

糸の材質や巻き数、形が異なるマレット

とても分かりやすい解説で、より深くマリンバという楽器を知ることが出来ました。

その上で『チャルダッシュ』の演奏は、さっきと聞く側の姿勢も変わってきます。

演奏に入る前に「途中でマレットを変えるのでその音色にも注目してください」と加えます。

息のあった演奏も素晴らしかったです

観客全員、マリンバという楽器についての造詣が深くなったのではないでしょうか。

アウトリーチの現場では鉄琴なども加えたり、一緒にリズムを取ったりすることも考えているそう。

「一度に説明せずに曲を挟んでカテゴリを分けると子供達もわかりやすいですね」とアドバイス。

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音楽技能だけでなく、子供たちが興味を持ち、音楽の楽しさをわかってもらう。

15分間という限られた時間で行う「音楽プレゼン」で自分たちをどう演出するか?

それを、小芝居を交える工夫で演出したのが次の組でした。

 

川越フルートアンサンブル“ろり おど”

日本において、ある意味フルート曲の定番となった感もある『ピタゴラスウィッチ』のテーマ

その曲の演奏から始めたのが、川越フルートアンサンブル“ろり おど”。

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『フルートアンサンブル』ですが、まずは、小学生で必ず習うリコーダーを取り上げます。

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音を出している最中に穴を抑えるいたずら。

リコーダーの音が空気の渦でできていることがわかります。

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「テノールリコーダはアルトリコーダの倍の長さがあって1オクターブ低いですよ。」

こうして並べてみれば、それが一目瞭然ですね。

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リコーダーでアルプス一万尺を演奏した後は、音の鳴る仕組みを瓶を吹いて説明

低い汽笛のような、ボーッという音がします

さらにサインペンのキャップも鳴らす。

4人でトークの掛け合いをするので、見ている方もとても楽しめます。

サインペンのキャップはピーっと笛のような甲高い音

続いては、フルートの仲間の紹介。

ピッコロ、一般的なフルート、アルトフルート、バスフルート。

長さや太さを示した後、ディズニーの曲をワンフレーズずつ吹くので特徴がわかりやすい。

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最後はフルートによる『アイネ・クライネ』と『ティコ・ティコ』を演奏。

リコーダやフルートの鳴る仕組みを笑いの要素を交えた子供目線のプレゼンでした。

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4人での掛け合いスタイル、子供たちにも一番身近な楽器リコーダを使ったことで、審査員からも好評価。「この活動には音楽家の仲間を増やすきっかけ作り目的もあって、その入り口になるのでは」という意見が審査員から出ました。

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Saxolute(サクソルート)

午前の部の最後は、サックス・フルート・ピアノで構成されたサクソルートです。

この組は『展覧会の絵』の曲でまとめ上げました。

展覧会の絵は10枚の絵の印象を音楽で表現したもので、絵と絵の間を歩いて移動する曲もある。

そんな曲の鑑賞の仕方も解説した上で演奏が始まりました。

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一曲目は、移動する様子を表した『プロムナード』

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演奏し終えた後でクイズ。「ピアノは管楽器、弦楽器、打楽器のどれでしょうか?」

答えは打楽器(その中の鍵盤楽器)。ピアノの鳴る仕組みを述べ、次の楽器はサックス。

2曲目は、そのサックスをメインとしたどこか暗く寂しげな曲「古城」です。

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最後の楽器はフルート。

木・金属など色々な材質でできた仲間があることや高くて優雅な音色の特徴を紹介。

3曲目はそのフルートをメインとした『卵の殻をつけた雛の踊り』

ヒナたちがちょこまかする様子を頭に描きながら

最後は展覧会の絵の中でフィナーレを飾る『キエフの大門』を3人のハーモニーで奏でました。

 審査員からは「楽器の紹介でソロになった時に、他の人が遊んでしまうというのは気になったので表現の仕方に工夫を」「一つのテーマで絞ったのは良かったが、題材としては小学生に対しては地味だったかも知れない」そんなアドバイスが伝えられました。

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以上、前半の6組の模様をお伝えしました。

当初、記者はもっと固いイメージのオーディションを想像していましたが、これが実に楽しい。

各組の質の高い演奏や工夫を凝らされた音楽プレゼンを見るのはとても勉強になります。

そして、川越で音楽をする層の厚さ、幅の広さを実感しました。

後半の5組の模様は金曜日にお伝えします。乞うご期待!

取材・記事・写真 kawa&白井紀行(編集)


INFORMATION

川越市人材発掘公開オーディション

【日時】平成29年1月15日(日)10:00〜15:30

【場所】川越西文化会館(メルト)ホール(川越市鯨井1556-1)

【主催】川越市(文化芸術振興課)

【HP】https://www.city.kawagoe.saitama.jp/event/main/rekishi/bunkakikin.html

川越市人材発掘公開オーディション