保岡勝也が手腕を余すところ無く発揮した邸宅〜旧山崎家別邸〜

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川越のシンボル「時の鐘」

このまま、鐘つき通りを進めば蔵造りの街並が広がる一番街。

でも、今日はその手前で曲がってみましょう。

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一番街の喧噪はここまで聞こえて来ない、静かな通り。

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保岡勝也氏が設計した大正建築、埼玉りそな銀行川越支店が見える。

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こちらは大正2年に建てられた洋風建築の中成堂歯科医院。

こうした裏通りを歩くのも川越散策の楽しみの一つです。

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‖ 旧山崎家別邸

この通りの新たな観光名所として4月1日に公開されたのが旧山崎家別邸です。

建物が市指定有形文化財、庭園が国登録記念物(名勝地)に登録されています。

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入り口から見える白い建物は管理塔。

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敷地内に入って右手にあるのが旧山崎家別邸です。

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旧山崎家別邸は、川越の老舗和菓子店「亀屋」の5代目嘉七氏の隠居所として建てられました。上棟は大正13(1924)年、完成は大正14(1925)年。設計は保岡勝也が担当しました。敷地内には、木造モルタル仕上げの洋瓦葺の洋館と数寄屋造りの和室を備えた和館で構成された和洋折衷の母屋、広々とした庭園、我前庵の写しの茶室があります。

かつては、陸軍大演習などで川越付近を訪れた皇族方がご宿泊されたこともあり、川越の迎賓館的な役割を果たしました。建物は平成12(2000)年4月に川越市指定文化財に、庭園は平成23(2011)年2月に国の登録記念名勝地に指定されています。

入り口の案内板より

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‖ 管理棟

別邸を見学するには、先ほど入り口から見えた管理棟を通ります。

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受付で入場料(一般100円、大学生・高校生50円)を購入。

荷物で建物や調度品を傷つけないようにコインロッカーに預けます。

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別邸に関する説明パネルや当時使われていた日用品等が陳列されています。

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また、無料休憩所にもなっていますので、川越散策の後、一休みにも最適。

奥にはトイレも完備されています。

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ここから邸内へ、入り口でスタッフの方が見学エリアの説明をしてくれます。

以前は庭園が公開されていましたが、現在は母屋の1Fと庭園の一部のみになっています。

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‖ 玄関前

母屋を正面に見て右が客人を迎える玄関となっています。

1階は吹付モルタル塗り、2階は細い横目地の磨き壁とすっきりした作り。

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玄関の正面がプラットホームのようになっているのは人力車をつけるため。

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すくっと真っすぐに伸びた松の木(お手植えの松)。

旧朝鮮王族だった王垠(りおうぎん)殿下が昭和4年に植えたものだそうです。

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玄関の手前には「車待ち」があります。

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‖ 母屋へ

それでは母屋の方を見学してみましょう。

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内玄関で靴を脱いで上がります。

受付でストラップとともに渡され青、緑、黄色の3色の札。

黄色は靴につけ、青は傘、緑はロッカーが一杯の時に受付に預けます。

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邸内を巡る順路がありますので、それに従って見学します。

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畳敷きの廊下、天井には明かり取りの窓が設けられています。

壁に埋め込まれているのはガングスイッチともいう連動式の照明スイッチ。

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矢印に従って右に曲がります。

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奥へと連なる廊下

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左手は女中部屋、台所。右手は銅板張りの流し、浴室、トイレと並びます。

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廊下を今度は奥から見たところで、この先が食堂となっています

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ここから料理を食堂に運び入れる仕組み、3畳の準部室となっています。

客人と女中が直接顔を合わせないよう機能的に設計されています。

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廊下をさらに進むと赤ラワンが材料とされる階段。

手摺の端部に設けられた親柱は簡素な縦線をモチーフとしたデザイン。

2Fには皇室が泊まった寝室や書斎、暗室もあるのですが非公開です。

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階段の右手は蔵になっています(こちらも非公開)

2階へと上がる階段が見えますが、その後ろには地下室への階段もあるそう。

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そして何よりも美しいのがこのステンドグラス。

階段と蔵との間で暗がりになっているので外の明かりで際立ちます。

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踊り場にあるステンドグラスは、旧山崎家別邸で最も象徴的な装飾。

「泰山木(たいさんぼく)とブルージェ」という作品

高さ2.1m、幅約7cmの欄間付きの上下窓に入っています。

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最初に見学した玄関。中からはこんな感じです。

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玄関から客人は右にある客間(応接室)へと招き入れられます。

カーテンや天井の壁紙は当時のものそのまま。

かつて、この部屋で交わされた会話が今にも聞こえてきそうな錯覚を覚えます。

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西側の上下窓を設けた部分は天井を下げ変化のある空間を創りだしています。

ステンドグラスは、別府ステンド硝子製作所の作品。

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天井は二重格子を粗く組んだ格天井(ごうてんじょう)のデザイン。

山崎家別邸を見学する時には、ぜひ、天井も見てほしいポイントです。

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客間を抜けると6人がけのテーブルのある食堂。

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天井にはあえて照明を設けず南北の壁にブランケットが付いています。

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コンデジでもこんな雰囲気のある写真が撮れます。

きっと光を計算して設計されているんでしょうね。

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山崎家別邸の特徴は和洋折衷であること。

食堂の先は、がらりと雰囲気が代わり数寄屋作りの最上級の和室となっています。

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天井の桟は、よく見ると四角い竹。

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下手な解説はいりませんね。

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そろばんの玉のような竹の節がリズムをつくり美しい。

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ここにいると風がさっ〜っと吹き抜け、とても居心地が良い。

この風を感じるだけでもここに来る価値があります。

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畳廊下の天井は縁側が米杉の市松張り、室内側が米杉の目透かし張り。

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その先も和室の居間となっています。

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竹の装飾を好んだのでしょうか、邸内の各所に使われています。

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東南の角にあるのがベランダ(サンルーム)

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設計図ではベランダと称されていました。

解説によると、おそらく半屋外的な使い方をされていたのではとのこと。

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こちらが外からサンルームを眺めたところ。

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京都仁和寺の我前庵を写したとされる2畳半台目の茶室(中には入れません)。

保岡勝也氏は、昭和2年に「茶室と茶庭」を出版するほど和風庭園に造詣が深い方。
別邸の庭園設計でもその知識を発揮しています。

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別邸を訪れた孫のための部屋(児童室)でここからも直接出入りが可能。

この前には芝生(児童遊戯場)と北東には花壇や温室があったそうです。

これは、家族本意の実用性と観賞を考慮した当時の新しい考え方の庭の設計です。

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母屋を一回りして内玄関へと続く小部屋。

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障子を良く見ると柱のカーブに沿って竪框(たてがまち)もカーブしています。

このように細部に拘ったところが、実は紹介しきれないくらいあります。

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川越では他に、りそな銀行川越支店、旧山吉デパートを手がけた保岡勝也氏。

住宅作家のパイオニアと呼ばれた彼の手腕が余すところなく発揮された旧山崎家別邸。

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ぜひ、四季折々訪れて、彼の思いを感じてみてはいかがでしょうか?

取材・記事 白井紀行


INFORMATION

旧山崎家別邸

【住所】川越市松江町2-7-8

【開館】4〜9月 9:30〜18:30/10月〜翌3月 9:30〜17:30

    母屋および庭園への入場は閉館30分前まで

【休館】第1・3水曜日(その日が祝日の場合、以後直近の平日)

    年末年始(12/29〜1/1)

【料金】一般100円(80円)、大学生・高校生50円(40円)、中学生以下無料

    ( )内は20名以上の団体割引

【HP】https://www.city.kawagoe.saitama.jp/welcome/kankospot/kurazukurizone/kyuyamazakike.html

川越市松江町2-7-8

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