日本の絹文化を次代へつなげよう!〜さいたま絹文化フォーラム Vol.1〜

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縁結びの神様として有名な川越氷川神社。

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その傍の氷川会館で2月28日に「埼玉絹文化フォーラム Vol.1」が開催されました。

主催は平成26年に発足した「埼玉絹文化研究会」です。

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同会は絹文化ゆかりの秩父・高麗・川越氷川の3宮司らが発足。

かつて盛んだった埼玉の蚕糸・絹文化を次世代に伝える活動をしています。

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‖ さいたま絹文化活動報告

名誉会長 薗田稔氏の挨拶

同会の名誉会長であり、秩父神社宮司の薗田稔氏による開会の挨拶。

「秩父神社と絹との関係」

秩父神社は「秩父夜祭」が有名ですが、これは別名「お蚕祭」とも呼ばれます。

秩父は江戸時代から養蚕が盛んで、今も養蚕が続けられています。

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会長 高麗文康氏による活動報告

高麗神社(日高市)宮司  高麗文康氏による同会の活動報告が行われました。

「高麗神社と絹との関係」

高麗郡は霊亀2(716)年に高句麗からの渡来人を移住させた郡。

明治29(1869)年には、入間・日高・飯能、川越の一部も含まれていました。

ここから絹織物の技術が秩父、越生・小川・児玉、八王子・多摩と広がりました。

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3社と絹との関わり、発足会記念講演会、秩父神社養祭などの活動が紹介されました。

発足記念講演は、法政大学総長 田中優子氏の「日本の絹をめぐる文化」

埼玉県上田知事、川越市川合市長もきもので参加し、大盛況だったそうです。

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そういった同会の活動や絹についての歴史や文化は会報にまとめられています。

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当日、会報も販売しており購入しましたがとても勉強になります。

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講演「蚕糸・絹と文化と共に学んだ60年」

多摩シルク21研究会」代表 小此木エツコ氏による講演。

伊勢神宮の式年遷宮での「青瀕瀕綿御衣(あおこうけちわたのみぞ)」の縫製の携わり。

皇居の紅葉山(皇后美智子様が養蚕されていた)との関わりなどを話されました。

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続いて、研究成果を語ります。

同氏が手にしているのは、蚕品種の改良で生み出した生糸。

また、高品質な絹の生産を可能にした直操チーズ巻繰糸機の開発。

作りたい着物に合わせて糸を設計する蚕糸・絹の加工方法の最適化※など。

※この最適化の研究はブランドシルク製品「東京シルク」に生かされています。

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パネルは繭糸の断面図。

セリシンⅡが豊富だと対摩擦性、耐水性、寸法安定性、光沢良好なのだそう。

同氏が作出した緑繭系品種、青熟交配種、四川三眠交配種もその特徴を持ちます。

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学内での対外的活動の成果として、蚕糸・絹に関わる公開講座の開講。

3年に渡って沖縄県石垣島から岩手県に至る1都33県の絹に関する視察。

92年に「科学技術展’92および絹まつり」を開催し来場者が6,000人と大反響。

これが「多摩シルクライフ21研究会」発足のきっかけとなったそうです。

会の発足後は、ブランドシルク事業、小中学生や一般市民を対象とした生涯学習。

全国の蚕糸に関わる研究機関とともに絹文化の継承や技術交流をされるなど。

絹文化の継承だけに留まらず、同氏は次世代を見据えた活動をされています。

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事務局長 山田禎久氏による挨拶

川越氷川神社宮司  山田禎久氏による終わりの挨拶。

神社のお祭りが地域の産業を支えていること等を語りまとめました。

「川越と絹との関係」

県内の絹織物の集散地だった旧織物市場が遺構として残されています。

また、蔵造りの街並も多くは織物商が建てました。

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‖ 展示・体験交流会

展示・体験交流会の会場となった山吹の間。

 

展示コーナ

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埼玉懸営業便覧

明治期、秩父地域での商いの様子を知る貴重書

ここに名前のある横浜の「原善三郎」氏。

同氏は、生糸貿易で財を築いた明治の豪商で埼玉県神川町の生まれ。

明治26年に時の鐘が焼失したときは多額の寄附をした川越との繋がりも。

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秩父神社へ奉納された繭。

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秩父銘仙コレクターの木村和恵氏が持つ貴重な銘仙の展示

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川越氷川神社では神職と巫女の手で「赤い糸」作りの作業をしています。

専門家の指導を受け、秩父産のいろどり繭の生糸を紅花で染めました。

近い将来、縁結びのお守りとして参詣者への授与を予定しています。

案内書きより

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今年、建都1,300年を迎える高麗郡。

高句麗古墳壁画をモチーフに再現した高句麗衣装の展示と着用体験。

その衣装を着てパレードを行う「虹のパレード」は4月10日開催です。

詳しくはこちら、→ http://komagun.jp/

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風をまとうような着心地からその名がついた「風通御召(ふうつうおめし)」。

「いろどり繭」を桐生の伝統工芸技術で織り上げた着物です。

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「いろどり繭」は、埼玉県ブランド繭で秩父地方でのみの限定生産。

「NPO法人 川越きもの散歩の会」では、3年間の事業でこの繭を100キロ購入。

着物や帯、ポケットチーフなどを販売しています(現在は、在庫販売)。

参考 → 顔の見えるきもの作り

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実演コーナ

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最も古い時代から行われて来た、玉繭から直接糸をつむぐ方法「づり出し」

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精錬した玉繭を角枠にかけてつくる「角真綿づくり」

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肌に優しく、軽くて暖かい真綿には様々な効用があるそうです。

また、繭を袋状に乾燥させる袋真綿の実演もありました。

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「信州紡糸機による糸紡ぎ」。左手にしているの角真綿から糸を紡ぎます。

この紡糸機は我が国初の電動紡ぎ機です。

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よりかけと綾振りの二つの機構を備える座繰器での「左手座繰り」。

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記者も体験させてもらいました。

繭から繰り出される糸がとても細くてこわごわという感じでした。

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明治時代には日本の近代化を支えた養蚕・製糸。

かつては、500万軒あったという養蚕農家も平成26年にはわずか393軒。

国産繭は1%しか流通していないそうです。

 

記者と絹との関わりは、世界遺産に登録された「富岡製糸場」に出かけたくらい。

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今後、川越とその周辺の絹文化について取り上げていければと思います。

取材・記事 白井紀行


INFORMATION

埼玉絹文化フォーラム Vol.1

【日時】平成28年2月28日14:00〜16:30開催

【会場】氷川会館(川越市宮下町2-11-3

【主催】埼玉絹文化研究会

【HP】http://saitama-silk.jimdo.com/

川越市宮下町2-11-3