川越一番街商店街シリーズ~落合康信さん(「かつおぶし中市本店」店主)~

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扉
中市本店(以降中市)といえば、いまや蔵の街で食べ歩きグルメ「ねこまんま焼きおにぎり」で有名なお店です。店先からただようひときわ芳ばしい焦がし醤油のかおりも一番街の名物のひとつといってもよいのではないでしょうか?

 

今回はそんな老舗人気店を守り続ける中市の店主、落合康信さんにお話をお聞きしました。

お店の設立は1867年(明治元年)。戦争(第二次世界大戦)までは鮮魚店でした。戦後は缶詰などの一般食料品を扱い、その後現在のようなかつおぶしを扱う乾物専門のお店になりました。

店全体

 

— 落合さんが子供の頃に覚えているお店の風景はどのようなものですか?

 

「私が子供の頃はすでに卸売店になっていました。料理屋さんに出汁用のかつおぶしをおろしていたり、県内の式場に結婚式の引き出物としてかつおぶしをおとどけするという仕事がメインでした。商品は店頭には並んでおらず、今の店舗スペースには車が2台入っていました。奥の倉庫と作業スペースでは引き出物などの包装したりといった作業をしていました。」

 

— それが変わったのが1989年(平成元年)から始まったNHK大河ドラマ「春日局」の放送から以降からですね?

 

「観光のお客さんがちょっと増えてきました。せっかくお客様に来ていただいているので、何かできないかなと思い、お店を改装して小売りを始めるようになりました。丁度高校生から大学生になるくらいの頃でした。」

 

— その頃はお店を継ごうと思っていましたか?

 

「継ぐ気は全くなかったです。弟が継ぐ意思を見せていたので、それならば私は好きなことしようと思ってました。でも、大学を卒業する頃に弟が急に『やっぱりやりたくない(継ぎたくない)』ってことになったんです(笑) 親父の代で店がなくなるのは嫌だし、それならば長男として私が継がなければということになりました。その当時は川越プリンスホテルができて、取引が忙しくなってきてすでに家族だけでは手が回らない状態でした。就職活動はしていましたが、卒業してからすぐにお店に入りました。おふくろが2000年に亡くなりその後から実質的に店主となって今にいたります。」

店頭1

©KAWAGOE〼MEDIA

 

— ねこまんま焼きおにぎりが誕生したお話を聞かせてください。

 

「2009年『つばさ』の放送をきっかけにさらに多くのお客さんが街を訪れるようになりました。その様子を見てもっとチャレンジしてみたいという気持ちが起きました。埼玉県は海なし県で、観光の方が出汁用の昆布やかつおぶしを買っていくっていうことはあまり期待できないことでした。うちはかつおぶし屋なのでそのおいしさを手軽に楽しんでもらえるものは何か?と考えたとき日本人なら和のファストフードがいい、おにぎりを作ってかつおぶしをまぶしたらおもしろいなと思いつきました。ねこまんま焼きおにぎり以外にもアゴ(とびうお)をつかった練り物を串にさして焼いて提供するといったアイディアもありましたが、やはりそこは『かつおぶし』をつかいたかったんです。」

 

— 苦労した点などはありましたか?

 

「飲食は初めてでしたので、実際どんなふうに焼けるのか、焼き具合はどうしたらいいのかという試行錯誤を繰り返しました。うまく焼けなくてすすだらけになってしまったり、焼きがあまかったりといった感じで、試作品は相当作りました(笑)ご近所にも試食をお願いして、これならいけるのではないか?と背中を押してもらいました。いざ始めてみても、どれくらい売れるのかがつかめなかったのでおっかなびっくりやってました。でも、お客様が徐々に口コミで広めてくれたのでありがたかったです。食べておいしかったからと、かつおぶしやいわしぶしをお買い上げになってくださるお客様もいます。」

店頭2

©KAWAGOE〼MEDIA

 

― メディアにもたくさん取りあげられてますます盛況ですね!

 

「店頭で炭火でおにぎりを焼いて、かつおぶしをまぶすといったスタイルが珍しかったらしく、メディアにも多く取り上げていただきました。おかげさまで焼きおにぎりは好評をいただいていています。そのためか最近では、おにぎりやさんやお米屋さんと言われることがあります(笑)」

 

― お店での様子をきかせてください。

 

「削る前の堅いかつおぶしって特に子供たちにはなじみがなくときどき『木が売っている!』と言われたりします(笑)これは魚を干したもので、削るとかつおぶしになるんだよと説明しても子供たちは半信半疑だったりしますね。今は削っているものが当たり前になっていますが、かつおぶしの削りたてってやっぱりおいしいんです。ひと手間かかるけどおいしいんだということはお客さんには伝えていきたいですね。かつおぶしだけでなく、昆布も甘みがあるもの、香りが高いものがあるんですよ。料理にあった出汁のアドバイスもしています。あとはたまに地元のお料理屋さんに配達に行ったりもしています。『いつものやつ送ってください』って言われることもありますね。」

店内

©KAWAGOE〼MEDIA

 

― お店から見える風景はどんなふうに変わってきましたか?

 

「春日局の頃は川越の歴史ロマンを味わうという方が多かったのですが、今はグルメマップを持ってお店めぐりを楽しむといった方が増えましたね。天気にもよりますが、ここ最近は土日関係なく平日も人が多いという感じです。地元の方は土日は人が多いと分っているので、そこを避けて平日いらしていただいてたりします。その昔は地元の人が行き交う商店街でした。隣近所の人たちが、しょっちゅう軒先で立ち話してましたが今はそういったことは少なくなりました。商店街のお店の構成もだいぶ変わってきました。テナントさんやチェーン店も増えてきた反面、昔からここに住んで商売している人はだいぶ減ってきました。近所間のコミュニケーションは昔からくらべて弱くなったのかなとは思います。」

 

― 商店街(川越一番街商店街組合)の理事長もなさっていますよね?理事長として取り組んでいることはありますか?

 

 

「新しく入って来た方や若い人達には、一番街の成り立ちなどを説明したり積極的にコミュニケーションとるようにしています。商店街として共通の意識をもってみんなで頑張りたいと伝えています。お店やそこで働いている人たちの立場や考えもあると思うので難しいところは多々あります。しかし、こちらが思っている以上に、イベントなどなんとか協力をしようという意識をもっていただいているお店もあるのでとてもありがたいです。」

 

― これからのこの商店街の課題はなんでしょうか?

 

「ここだけではないと思いますが、やはり後継者、高齢化問題です。高齢になってお店に立てない、誰も継ぐ人がいないとなればお店を他に貸すしかなくなります。そこはどうにも歯止めがかけられません。できれば個人商店でもこだわりをもっているお店が入ってくれて川越商人として商売してくれるといいなとは思っています。ハード面(建物)に関しては町づくり規範というのがあります。ソフト面(サービス・商品展開)では「商人心得」といった規範をゆくゆくは作っていく必要があるのではないかなと思います。蔵の会(NPO法人川越蔵の会)の方とは共同で、昨年の夏から月に一度のペースで、今後の一番街をどういうふうにしていくか?といったことを話し合う会をスタートさせました。『一番街あきんどの会』という名称です。今後商人としてどうやって展開していくのか?観光商店街になるのか?地域密着を重視した商店街になるのか?といったことも意見交換しています。私は魅力のあるこだわりのあるお店の集合体というは守りたいと思います。観光地どこにいってもあるような商店街にはなりたくないですね。あとは、これは一商店街として何とかなる問題ではないんですが、交通問題はちょっと考えないといけない事です。商店街としてはお店の意見をとりまとめて市の方には上げています。せめて大型連休やイベントがあるようなときは規制した方がいいという意見は多いです。」

※ご参考:都市景観推進団体(川越町並み委員会)

通り

©KAWAGOE〼MEDIA

 

― お店はこれからどのようにしていきたいですか?

 

「いろんな展望はあるんです(笑)かつおぶしというのは看板にも入っているので、やはりそこにはこだわっていきたいです。今はうちではかつおぶし製造はしていないので、実際に削りたてを提供したいという思いはあります。(ねこまんま焼き)おにぎりは手作りですが、できればかつおぶしもここで削りたてのものを使いたいという思いはあります。店頭でも削りたてのものを袋につめて販売したいです。今は人員的な問題と機械がないので、なかなかできないんですが、やってみたいですね。おにぎりの焼ける香りもよいのですが、かつおぶしの削ったときの香りも楽しんでもらいたいです。削りたてのかつおぶしってこんなにやわらかくて美味しいよ!と、もっともっとアピールしていきたいです。」

 

看板

©KAWAGOE〼MEDIA

 

店頭ではいつも奥様と息がぴったり、二人三脚でねこまんま焼きおにぎりを焼いている姿が印象的です。

そこで、奥様へのひとこともいただきました。

 

「ちょうど卸業から小売業に転換するときに結婚したので苦労はかけましたね。お店の女将として色んなアイディアも出してくれるのでとても助かります。私一人だったらねこまんま焼きおにぎりはやっていなかったかもしれません。支えてくれるというより、お互いよき相棒、商売する同志といった感じです。」

夫婦

©KAWAGOE〼MEDIA

 

最後に気になることを質問してみました。

人生に「たら・れば」はありませんが、もしお店を継いでいなかったらどんなことをしたかったのでしょう?

 

「映画が好きなんです。特に洋画が好きなので英語を勉強して海外にわたって映画関係の仕事に携わりたいなというのは高校時代からの夢ではありました。役者ではなく、カメラマンとか現場のスタッフとして働いてみたかったです。ダイナミックな現場に憧れていましたね。」

 

スタッフとして洋画の世界に関わるのが夢だったいう落合さんですが、今は老舗店舗の店主として、人気商店街の理事長として主役級の活躍していますね!これからも川越一番街蔵の街を是非共に盛り上げていきましょう!

 

開店直後のお忙しい中、お時間をとっていただきありがとうございました。

 

インタビュアー・記事・写真:本間寿子


INFORMATION

かつおぶし 中市本店

【住所】川越市幸町5-2

【電話】049-222-0126

【営業】AM10:00~PM7:00

【定休】水曜日

※ねこまんま焼きおにぎり:定休日(水曜日)以外、毎日午後12:00より販売。

【HP】http://www.nakaichi-h.com/

【Twitter】https://twitter.com/nakaichi1867

 

川越市幸町5-2

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