昭和の街でカンパイ♪~佐藤かなこさん(「ワインスタンドPON!」店主)~

本川越駅から北側、一番街の蔵の街につづく通りは中央通りと呼ばれています。

この通り周辺はノスタルジーを感じさせる看板や建物が多く川越中央通り『昭和の街として商店街の方が一体となって街づくりを進めています。

ワインスタンドPON!

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その通りの仲町交差点ほど近くにワインスタンドPON!がオープンしたのは今年の5月28日。カウンターに5席の小さなお店ですが、心地よい空気が満ちているスペースです。店主の佐藤かなこさんは幼少期は川越で、小学生から高校生までの多感な時期は神戸で過ごしていました。学生時代からは国内、国外と多くの旅をして、各地のお酒やおいしいものを楽しんだそうです。ワインショップに就職したことがきっかけでワインの美味しさにどっぷりハマり、日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーの資格も取得。ワインのバイヤーやワインサプライヤーの営業事務としても活躍していました。(ワインスタンドPON!のサイトより一部抜粋)

そんなかなこさんが、ワインスタンドを開くことになったのはごく自然だったように感じたのですが、実際はどうだったのでしょう?

 

― ウェブサイトの「オープンのきっかけと自己紹介」を拝見しました。ワイン業界でバリバリお仕事されていたと思うのですが、2011年に会社を辞めてしばらくはワインのお仕事からも遠ざかっていたのですね?

 

「はい、2011年に退職したきっかけのひとつは、東北大震災でした。都内への交通機関がマヒして職場へ行くのでさえ困難になりました。そのときに働き方を考えたんです。」

 

― かなこさんと同じで、私もあの震災の後は私も色々考えました。都内に勤めていたのですが、このまま働き続けていいんだろうかって漠然とした思いがありました。お仕事を辞めてからはどうなさっていたんですか?

 

「初めの3か月くらいは職業訓練学校で貿易実務事務の勉強しながら、しばらくのんびりするのも悪くないなと思いながら仕事を探していました。でもそのうちだんだんと物足りなくなってきました。しかも収入がないことに負い目を感じ、自分に自信すらなくなってきました。」

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学校も終了し、資格も取得したものの結局はそれに関わる仕事ではなく「地元に関わる仕事に就きたい」という思いと、おいしい物が好きだったということもあり「ハム・ソーセージ工房 ミオカザロ」さんでアルバイトとして働きはじめました。しかし、一身上の都合で退職。その後たまたまふらりと買い物にはいった南通町にある洋服のセレクトショップで働くことになります。

そんなある日、ワインショップ時代の友達4人で海外旅行へ行こうという話がもちあがりました。

 

「そのときの私の上司と同僚、仕事関係で知り合った料理の先生という女性4人で飲んでいる席で、突如『バスク地方に行こう!』ということになり、決行!美食の街として名高いサンセバスチャンでは三ツ星レストランにも行きました。でも、一番楽しかったのは旧市街のバル巡りでした。さほど大きくない通りに小さなお店が何百とひしめいていていろんなおつまみ、お酒をちょっとづついただいて、一軒また一軒と飲み歩けるんです。地元の人も観光客の人もみんな一緒にワイワイしてるんですよ。そこでは『ここの店の一番のおすすめはエビのピンチョスだよ!』とかいろいろ話しかけてくるんです。知らない人同士でも自然とコミュニケーションを楽しんでいる、その光景がとっても印象深かったです。そのときはこんなふうに気軽に楽しく飲み歩きができる街が近くにあったらいいのに・・・という漠然とした思いが浮かびました。」

※スペイン、フランスにまたがる地域

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帰国後しばらくしてから、そんなかなこさんに大きな転機がおとずれます。

 

「働いていたお店からパートタイムではなく、フルタイムで働きませんか?と声をかけていただいたんです。とてもありがたかったんですが、そこであらためて私はこの洋服の仕事一生やりたいのだろうか?と自問自答することになりました。フルタイムで仕事をするなら、やはりワインの仕事をしたい。でも就職してまた都内に通勤するのは今の自分にとって難しいように思えました。ならば、旅先のバルで味わった大人が気軽に楽しめるワインのお店が川越にあったら、とぼんやり思い描いたことを自分でやってみちゃう?と思い立ち、即決!チャレンジしてダメならそれでいいんじゃない?って思いました。」

 

お店をやろう!と決心して、物件探しなどは半年くらいかけてゆっくりとすすめればいいと考えていたそうですが、ワインの神様は若干せっかちだったようです。希望に合う物件が間もなく見つかりとんとん拍子に開店までこぎつけました。

 

― オープンしてからはどんな感じですか?

 

「ありがたいことに地元の方に多く来ていただいている印象です。広告も開店ご案内も一切出しておらず、オープン1か月前から始めたフェイスブックのみ。誰も来ない日が続くんじゃないかな?って思っていたんですが、オープンから一週間もたたないのに何度も足を運んでくださる方もいました。来店してくださった方がフェイスブックにたくさん情報をあげてくださったようで、それを見た方で一度来てみたかった!というお客様も多くいらっしゃいます。あとは近隣の商店街の方々にたいへんお世話になっています。本当に皆さんのおかげです。」

 

― お店のオープン時間が13時からというのが、お酒を提供するお店としては早めの開店ですよね。どうしてだろうって思ったんですが、ワインスタンドPON!さんのフェイスブックページの記事を読んでなるほどと思いました。

 

「夜の外出がしにくい、家庭を切り盛りする主婦や小さなお子さんがいらっしゃる方も気分転換に外でワインを飲みたいときがあるんじゃないかな?と思ってるんです。ほっと息抜きしたい時に飲みたいものは、コーヒーではなく、一杯のビールやワインが気分だな、というときもあると思います。」

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― かなこさんにとって夜ではなく「昼に飲む」ってどんなことなのでしょうか?

 

「明るいうちから飲むのって私自身も非日常な気分が味わえて好きなんです。あとお昼から飲むこと自体をまだ良しとしない世間のイメージがあると思うのですが、それを払しょくしたいと思っているんです(笑)世の中いろんな時間帯で働いている人がいるので、お休みの日やリラックスしたいタイミングだって人それぞれなんじゃないかと思うんですよね。」

 

― 私も昼飲みは好きです。仕事を頑張ったときはなおさらで、緊張した気持ちをほぐしたり頭を切り替える意味でもほんの少しだけアルコールを飲んじゃいます。

もともとワインが好きだったのですか?

 

「お酒全般が好きですよ。でもやはりワインが一番好きです。ところでワインってどんなイメージですか?」

 

― うーん、そうですね。私のワインのイメージは、ワインだけというより、それに合うおいしい食事と組み合わせるものって感じです。

 

「あ、マリアージュですね!(飲み物と料理の組み合わせが良いこと。特に、ワインと料理の組み合わせについていう:デジタル大辞泉より)ワインだけでも楽しめますが、それにあわせるおつまみがぴったり合ったときはテンションがあがりますよね。当店のフードメニューには観光でいらした方に、地元川越のおいしいものを召し上がっていただきたいという思いから、お世話になっていたご縁もありミオカザロさんのソーセージやレバーパテもご用意しています。パンは川越にもたくさん美味しいところがありますが、今は同級生がやっている神戸のパン屋さんからとりよせています。」

 

― かなこさんはなぜワインにひかれたのでしょう?

 

「ワインほど面白いお酒はないと思っています。国、品種、ビンテージ、組み合わせは無限大。開けてみるまで分らない。そして二度と同じ味わいのものには出会えない一期一会のもの。そのときのお料理やシチュエーションによって印象がガラリと変わってしまうお酒はワインだけといっても過言ではないと思います。あとワインにはハッピーなイメージがありませんか?特にシュワシュワとしたシャンパンなどは目、耳、鼻、舌余韻まで楽しめる、私にとっては幸せなお酒の象徴のようなものなんです。」

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― 言われてみれば、悲しい席にはワインは似合わないかもしれない(笑)赤と白だし・・・

 

「カウンター越しに見ていても、ワインをきっかけにお話が広がることがあります。それぞれ一人でいらしていたはずなのに、いつの間にかカウンターに座っているみなさんが、仲良くお話しされている、そんな姿を見ているとなんだかいいな~って思っちゃいます。」

 

ワインの説明をしているのが聞こえるので、実際飲んだ方の感想が気になってついついその人に聞いてみたくなります。ワインの話だけでなく、お客さん同士日常の些細な話で盛り上がることもあります。それはバルで体験したコミュニケーションの楽しさを知っているかなこさん流のさりげない気配りもあるのではないかと思います。

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― お客さんはどんな方が多いですか?

 

「20代から80代までと幅広い層の方にいらしていただいています。地元の方8割、観光客が2割という感じです。ワイン好きの方々に共通する傾向として、旅行好き、食べることが好き、好奇心旺盛といった方が多い印象です。カウンターのみのお店のつくりゆえかお話好きな方が多いですね。意外だったのは、お酒を飲まないと言われている若者、とくに大学生が多いこと。そんなときは未来のワイン好きが一人でも増えてくだされば!といつも以上に張り切ってしまう自分がいます(笑)」

 

― オープンから半年あまりですが、これまでやってきて嬉しかったことはなんですか?

 

「周辺に住んでいる方に、フラッと寄れて、大人がワインを楽しめるこんなお店を待っていた!とおっしゃっていただけることです。飲食店は増えてきましたが、まだまだ少ないからなのでしょうか。飲みに行くところがなくなっちゃうと困るからつぶれないように頑張ってねー!と声をかけられます(笑)観光客の方には、こんなお店があったらヤバい!毎日寄ってまっすぐ家に帰れなくなっちゃうよ、なんて言われることが一番嬉しいです。あとは、母を始め、家族と一緒に働けるということです。こんな風にお店をやることがなかったら、きっとこんなことはなかったと思います。実は開業計画当初は一人で全部やるぞなどと大口をたたいていましたが、実際ふたをあけてみると家族の協力なしにはとてもじゃないけどここまで来られませんでした。私の性格を知りつくし、快く、時には文句も言いながらも助けてくれる、そんな家族に感謝です。」

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― 地元の方に喜ばれてますね!

 

「会社員をしているときは、地元にはほとんどかかわりがなく、知り合いもいませんでした。今は毎日が刺激的です。この場所でお店を開いていなかったら出会うことがなかったような方とお知り合いになれたり。そして先ほども言いましたが、商売が初めての新参者の私でも、暖かく見守ってくださり、ご指導してくださる商店街の皆様に本当に感謝しています。このお店を始めたことでようやく川越の一員になれたような気がしますね。」

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昭和のたたずまいが色濃くのこる街にできたワインスタンドPON!さんにフラッと立ち寄ってみてはいかがでしょう?

お店に入るときは一人で、出るときはそこで友達になった人と次のお店に飲み歩きに、なんてこともあるかもしれません♪

 

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※入荷したワイン達、カラフルなキッチン用品や珍しいレモンのオリーブオイル、手書きの文字や看板ニャンコも見ていて楽しい。

 

そしてバルの雰囲気を楽しみたいという方におしらせです。

小江戸川越ライトアップ2015「食と音と灯りの融合 Kawagoe REMIX(カワゴエリミックス)」の一環として川越街バルが10月30日金曜日から開催されます!もちろんワインスタンドPON!さんも参加されていますので、どうぞバルな気分をたくさん味わってみてください。詳しくは下記インフォメーションにておしらせしています。

 

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インタビューを終えて感慨深げにかなこさんが一言・・

 

「まさかお店を開くとは思ってもみませんでしたが、いまこうしてみると、自分が経験してきたことって無駄なことはひとつもないんだなって思います。すべてが今ここにつながっています。」

 

自分のやりたいこと決めて動き出すと、自分が何気なく選択してきたこと一つ一つが同じ方向を向いていたんだ!と気づくことがあります。

経験したことの多くは、今はなんの関連のないただの部品のように見えるかもしれません。よしやっちゃおう!と決めて行動を起こしたとき、その部品がカッチリとはまり自分の想像を超えた絵になるのかもしれないと思いました。

 

かなこさん、たくさんのおしゃべり楽しかったです!そして何度もお付き合いいただきありがとうございました♪

 

インタビュアー・記事・写真:本間 寿子


 INFORMATION

ワインスタンドPON!

【住所】川越市仲町5-7

【電話】049-224-2626

【営業】13:00-20:00

【定休】月曜日

【FB】https://www.facebook.com/winestandpon

【HP】http://kawagoe4.wix.com/winestandpon

☆ワインスタンドPON!さんで出されているパンはこちらの神戸のパン屋さんのものです。

place de pasto(プラス・ドゥ・パスト)

http://crea.bunshun.jp/articles/-/2779

川越市仲町5-7

☆ワインスタンドPON!さんがあるのはこんな通り♪

川越中央通り「昭和の街」ブログ

http://blog.livedoor.jp/shouwanomachi/