江戸後期の武家屋敷の姿を残す貴重な建物「永島家住宅」を見て来た

気付いたらいつも見逃していたのが毎月第3土曜日の永島家住宅の庭園公開日。

今回、ようやく、6月20日の公開日に行くことができました。

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永島家住宅は川越城南大手門近くの侍町だった三久保町に残る江戸時代後期の武家屋敷。

埼玉県下の城下町は川越、行田(忍)、岩槻ですが、その遺構はほとんど残されていません。

関東県内でも現存事例はごく僅かで大変貴重なものとなっています。

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川越市のホームページにパンフレットがあります。

これを見ながらの記事を読むとより詳しく理解出来るのではと思います。

http://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/bunkakyoyo/oshirase/nagashimake.files/nagasimake-p.pdf

 

‖ 永島家は元は中級武士用の官舎

公開日にはシルバー人材センターのガイドが常駐して庭園内を案内してくれます。

こちらが1830〜1854年の地図で当時の藩主は松平守家でした。

赤枠が川越城を中心とした武家屋敷となります。

赤枠の下に位置する十字路が今の札の辻の交差点です。

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こちらが赤枠辺りを拡大したもの。

川越城の西側(図では下)に家老クラスの屋敷が、南側(図では右)が中級武士の屋敷。

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屋敷と行っても武士の持ち家ではなく、今で云う官舎にあたります。

そのため、住み人も次々と入れ替わっていますが、医者が多かったようです。

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こちらが現在の様子で、道路の左側に永島家の生け垣が見えます。

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‖ 永島家住宅の移り変わり

永島家住宅は増築を重ねていますが、当初の部屋が今も残っていることが分かります。 nagashima07

屋敷内にある模型を頭にイメージしながら記事をご覧下さい。

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‖ それでは庭園を巡ってみましょう

こちらは北門の正面にある玄関ですが、こちらは締め切ったままです。

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ですので、その左手にある土間からが見学順路となっています。

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建物内部の老朽化が激しいので、立ち入れるのは庭園と土間までです。

右側に神棚があることからここは台所だったのではないかとのこと。

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上がり口から屋敷の中の様子をみたところ。

この後、一通り見てとても住み易そうなお屋敷だという印象を受けました。

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外から見るとトタン葺きの屋根ですが、中からみると茅葺きであることがわかります。

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こちらはおそらく馬小屋だったと思われます。

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土間を通り抜けたところ。

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屋敷稲荷が設けられています。

川越藩はペリー来航時に藩兵を配置していて、武運長久を願ったお札が納められていました。

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左手に七曲がりの通りに面した門が見えてきました。

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この辺りには薬草が育てられていたのでは考えられるそうです。

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樹齢100年を越すサルスベリの木。

この他、立派なもみの木があったりと、木々も貴重なものとなっています。

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‖ 中は結構痛んでいました

最初に入った土間から見て反対側になります。

柱を基準にしてみるとかなり傾いていることが分かります。

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写真で見ると分かりづらいのですが、押し入れの扉もかなり歪んでいます。

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この板の間は、切腹の間と仰々しい名前が付けられています。

初期からある部屋ですが、その本当の用途は分からないとのこと。

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‖ 永島家とは?

永島家には平成17年まで永島氏が住んでいて、平成22年に川越市に土地と建物を寄贈しました。

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現在は住宅となっていますが、ここも元々は永島家の敷地だったそうです。

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ガイドさんが永島家の所有となり、そして寄贈されるまでの経緯を教えてくれました。

川越藩石原家の子息である石原久氏が永島氏に売却。

賀太郎の他界後には次男倉吉氏が家督を相続し、下男部屋と客間を賃貸。

平成17年に倉吉氏が他界したため協議の結果、平成18年に史跡となりました。

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こちらが永島賀太郎の紹介。石原家から買い取ったのは母親への孝行のためだそうです。

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永島家住宅を寄贈した賀太郎氏の3男の俊三郎氏。

現在は川崎に住んでおりで、IHIに務めていたエンジニアの方。

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‖ 客間には面白い仕掛けも!

赤い絨毯が敷かれているのが客間(座敷)になります。

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なんと、襖がどんでん返しが出来るようになっています。

忍者屋敷では見たことがありますが、とっさの時に対処出来るためでしょうか?

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一瞬時の鐘?と見間違えたのは、三越謹製の大名時計。

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こちらが下男部屋

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天井がないのは、夏の風通しと冬は土間の熱が回して温めるためだとか。

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反対側からみた下男部屋。少し分かりづらいですが右側に小さないろりがあります。

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下男部屋専用の台所。トイレも専用のものがあって部屋としては完全に独立しています。

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‖ カラタチの生け垣は武家屋敷の決まり

外の看板に武家屋敷はカラタチの木を生け垣に使うように決められていたとありました。

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このカラタチの生け垣もまた貴重なものだったのですね。

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庭園を回って気になったこちらの門にも回ってみました。

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ガイドさんによると、2人体制で割と絶え間なく見学に来る人がいるとのこと。

きちんと整備して今後、屋敷内も見学できるようになるといいですね。

毎月、第3土曜日には公開していますので、ぜひ、一度、見学してみて下さい。

WRITER NORI


INFORMATION

永島家住宅(旧武家屋敷)

【電話】049-224-6097(川越市教育委員会 文化財保護課)

【住所】川越市三久保町5番地3

【公開】毎月第3土曜日(特別公開日も有り)

【HP】http://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/bunkakyoyo/oshirase/nagashimake.html

川越市三久保町5番地3